ビックボアの解体
単調な戦闘であった……。
リョウカ曰く、醜いパワープレーで、お粗末な仕事……。だそうだ。
余計なお世話だ!
そんなリョウカと言えば、まだ姿を現さぬ美少女?を探し、鼻息荒く、辺りを駆け回っている。
あれじゃあ怖くて、出てこれねえよ……。
俺は、半ば呆れながらも、そんなリョウカを横目に、ビックボアの、下処理を行っている。
保護対象?知らない子ですね。
しかし、ビックボアを木に吊し上げようと思ったが、サクヤは置いてきてしまった。
サクヤが居たなら、プラント・バインドで、吊り上げてもらおうと思ったんだが……。
仕方が無い……。
全ては、想定の範囲外だ。
俺は、創気で縄を創る。
プラント・バインドとは違い、触れるとこ全てに、ダメージが行ってしまう。
ビックボアの後ろ脚は、創気の縄が食い込み、血が滴り落ちている。
まあ、多少の傷は仕方がない……。
先ほど斬った頸動脈から血は流れ、良い具合に、血抜きが始まっている。
運動中の、心拍数の上がった状態での頚動脈切断。心臓の活動により、血は噴水の様に噴出する。
これが、死体相手だとそうはいかない。
心肺の停止により、血流が止まり、血抜きの手間が掛かる。
死体を吊り下げ、重力に任せて、血を流し出す。
まあ、何が言いたいかと言うと、生きている間に、出血をさせれば、心臓というポンプがある程度、血抜きをしてくれるって言うことだ。
そう、全て計算通り。
なにが、パワープレイだ……。こちとら、その後の処理も考えて、的確に攻撃を与えているんだ。
浅はかなり、リョウカ。
まあ、毛皮は諦めるがな……。
けれど、まあ、なるべく油脂は、毛皮に残らないように剥ぎ取ってゆこう。
なめす事は出来ないが、毛皮が腐る前に町に行くことが出来たら、或いは、売ることが出来るかもしれない。
まあ、何にしてもまずは、血抜きと、内臓取りだ。
体長から言って、400kは有ろう。
このままでは、運ぶのも一苦労だ。
内臓を傷つけないよう慎重に腹を切り、肛門を切りとる。排泄物で汚れないように、硬貨の入っていた袋を被せて対処する事にしよう。
ここまでは、問題無いな……。
けど、問題はここからだ。
内臓を取り出すのだが、受け皿となる物が無い。
肝臓や心臓は、珍味なんだがなぁ。
ここは、諦めて……。
「ぬああああ!ジャショウ!我が姫君が、一向に現れようとしない」
リョウカの叫び声に驚き、縄を作っていた創気に、大量の錬気を流し込んでしまう。
ドサッ
「うおっ!?」
ビックボアの足は切断され、その体躯は重力に任せて大地に落ちた。
ぬあああ……。
もう少しで、内臓を取り出せたのに。
零れ落ちかけた内臓は、その体躯に押しつぶされ、ひちゃけてしまう。
地下落ちとは言え、綺麗に洗えば、心臓も肝臓も食べれたはずだ!
それなに。それなのに……!
心臓は破裂し、血が飛び散ってしまう。せめてもの救いは、腸から、糞尿があふれ出なかった事だ。
せっかくの肉が、糞に塗れては、たまったものではない。
「リョウカ!!」
俺は怒りに任せ、リョウカの後頭部に、延髄蹴りをかます。
「ぐはっ!」
リョウカは、前のめりに倒れ込み、その場で痙攣している。
これぐらいで済んで、ありがたく思え!
しかし、どうしたものか……。
胴体に、縄を括り付けるか?見栄えはどうであれ、今は血抜きの途中だ。肉の鮮度にかかわる。
俺としては、姫君など、どうでも良い。
今、目の前にある動物性タンパク質にこそ、絶対の関心があるんだ
「おい!リョウカ……。お前、プラント・バインドは使えるか……?」
実に、実に不愉快だが、ここは、リョウカに頼むしかない。
未だ、前のめりになり、いじけているリョウカのケツを蹴り飛ばす。
「ふぎゃ!お主、我の扱い、酷くは無いか?」
「別に、普通だ……」
俺はそっぽを向き、苦虫を噛み潰したような顔で、答える。
こいつにだけは、弱みを見せたくは無かった。
「ん~~~?そんな事言いて、良いのかな~?我は、プラント・バインド使えるのになあ」
くっ……。これだ。
こいつのにやけた顔が、俺の怒りに火をつける……。
「だったら、お前の言う、麗しの姫君。見つけてやらんぞ?」
これは、駆け引きだ……。そう駆け引き。こいつに足元を見られ……。
「ははあ。ジャショウ様。どうか、麗しの姫君を……」
あっ。はい……。
こいつに、駆け引きなんて必要無かった。
俺は一人、ムキになって、駆け引きなどと言っていた事に、若干の気恥ずかしさと脱力感を覚え、ため息をつく。
「あ~。ハイハイ……。お前は、ビックボアを吊るしてろ」
嬉々として、ビックボアを吊るす、リョウカ……。
俺は気怠そうに、索敵にかかっている麗しの姫君?の方へと、歩みを進めた。




