精霊の盟約……。
俺は、無心でスコップを作っている。
これで何本目だ?
創気で、木々を伐採し、削って作る。これの繰り返し……。
道具なんて無い。全て、創気で賄っている。
本来、道具を作るのにも道具が必要だ。そう考えると、創気は便利で、勝手が効く。
そのお陰もあって、このスコップを作る作業で、器用度が、1620から1710になり、創気がLV4まで上昇した。
その間、お昼寝から目を覚ました小人魚達は、湖を広げ始めている。
てっきり、単純に、外面を掘り起こすものだと思ったが、実際は、水源を広げ、水に侵食し柔らかくなった土を、両手で掬い取るという単純作業だ。
ならば、俺が造るスコップも、構造に工夫をこらそう。狭い湖の中でもストレスなく使用できるよう、柄は短く、刃を大きくする。
そう言えば、掘った土はどうしているのだろう?
ああ。単純に、外に投げてるんですね。
何とも非効率でお粗末な突貫工事だ。
だからと言って、どうする事も出来ないんですが。人魚だから……。
人魚に足があれば、猫車でも作って、外に運べるんだがな……。
まあ、そこまでやってやる義理は無い。
でも、まあ、それを踏まえて考えると、すくった土を、遠くへ飛ばすためにも、柄の長いものも造ってやるか。
「ジャショウ!このスコップ、手が痛くないよ~♪」
「早く、私の分も~」
小人魚は、通常運転。
スコップと言う、彼女達にとって真新しい玩具は、彼女達の作業能率を上げている様だ。
サシャ曰く、作業スピードが3倍以上速くなったとか。
まあ、喜んでくれて何より。
て言うか、魔法で大地を削っていけば良いのでは……?
随分、原始的な方法をとっている。
「駄目ですよ?魔法で、パパっと解決なんて」
おっふ……。
また、目が笑っていない……。
「なんで?」
「効率はいいですが、あくまで、自然に広げていきませんと……。供給される、水量を超えてしまいますから」
手で、削っている時点で、自然では無いのでは……?
「自然ですよ……?私達、半精霊のすることですから。まあ、このスコップと言うのを使う事に関しては、ギリギリ許容範囲内と言った処ですね」
まるで、心を見透かした様に回答が返ってくる。
まあ確かに、水量が足りなければ、干上がってしまうか……。
「姉上様~。向こうの水源引いてくるねえ」
「こっちも、水脈に穴開ける~」
小人魚達は、慌ただしく、動き回っている。
結局、水源増やすのか……。
気が付けば、足元まで水が侵食し始めている。
「おいおい」
「あらあら、普段あんまり作業しない子達なのに、ジャショウさん達が着て、張り切ってるみたい。三倍って言ったけど、それ以上ね」
普段どんな作業をしているんだ?
このペースなら、数週間で湖までいかなくとも、それなりの広さになるだろう。
「なあ……。普段、どんな作業ペースでやっているんだ?」
「普段ですか?精霊って気まぐれですから、気が向いた子が、数かきする程度ですかねえ」
そりゃまた、気の遠くなる事で……。
突然、水面が泡立ったかと思うと、大きな水柱が立ち上る。
「水源掘った~」
「水源割った~」
小人魚は精霊化し、青白い半透明な姿で、水柱の周りを飛び回る。
水柱は霧散し、大きな虹を描く。
水面は、一気に広がり、周りの木々を飲み込んで行った。
「あらあら。魔法は使わないと言いましたけど、これは少し、手を加える様ですかねえ」
そう言えば、最初の頃は、オドオドしていたはずのサシャは、何処か大人びて、妖艶な色気を醸し出している。
「我はウンディーネに連なる血脈。遥か盟約に伴い、土の精霊ノームよ、その力、我らが繁栄の助けとなれ」
凛とした声が、響き渡る。
大地が震え、湖が一回り、二回りと、大地が陥没し、広がっていく。
「おいおい……」
「風の精霊シルフ、大地の精霊ノームは、この精霊の楽園計画に、賛同しているんです♪」
だったら、最初からこうしていれば良いんじゃないの……?
どう考えても、無駄が多い……。
サシャには、サシャのこだわりがあるようだが、どうにも理解が出来ない。
「最初の盟約で、私達人魚が、精霊達に代行して、湖の拡張をする事にしているんです」
「なんで?」
「結局、自然破壊ですから……。本来精霊は、ただそこにある存在ですから、手を出すのは、人の月周りで、年に一回のみ。これは、その一回と言う処です」
「なんだか、ややこしいな」
「はい……。純粋な精霊達には、霊力の循環を任せいています」
短時間で、湖は倍の広さに変わった。
この子達、有能なんだが、何と言うか、気が多い……。
今も既に、立ち上った水柱と虹に気を取られ、遊び始めている。
一人が遊び始めれば、もう全員がそっちに気を取られてしまう。
今日の作業は、ここまで。と言った処か。
無邪気に笑う、小人魚。それをただただ、温かな瞳で見つめるサシャに、目を奪われていた。
なんか俺……。
最近サシャに、見惚れてばっかりだな……。




