いざいかん!食の桃源郷へ!
食とは、生命の根源であり、生きると言う事の業である……。
命を繋ぐために、命を奪う。
一つの生命が生きるのに、どれほどの生命が奪われるのだろう……。
生きると言う事は、なんと業の深い所業なのであろうか……。
だからこそ、命を慈しみ、刃を振るう。
生きると言う事は、そう言う事だ……。
「なあ……。サクヤ、まだ~?」
『もう少しなんよ』
ゴブリンの集落を離れ、早、一刻が過ぎようとしている。
また、このまま話が進まないのではと、一末の不安を感じる。
そもそも、年端のいかない少年が、子ザルを肩に乗せ、前述のとおり、不審者丸出しの格好で、妖魔や獣の跋扈する森を、彷徨っている。これってどうなのよ……?
母を訪ねて〇千里?
他の冒険者が見たら……。
馬鹿は……。保護しようとするし、少し知恵の周る奴なら、警戒するだろう。
どっちにしても、面倒な話だ。
保護されれば、楽だって?
冗談じゃない、テンプレ通りなら、施設に送られる。神様祈って、他のガキとわいわい暮らすなんて、自由を謳歌しようとしている俺にとっては、たまったものでは無い……。最悪、奴隷として売られる可能性だってある。
どんな世も、世知辛いものだ……。
まあ、奴隷にしようとしたら、逆にぶちのめしてやるが……。
つまらない偽善を押し付けられたら、メンドクサイ。
『ジャショウ~。もうすぐ着くんよ』
つまらない事を考えていると、突然、サクヤの声がかかる。
『ん?ああ……』
『また、変なこと考えていたん?』
最近、サクヤもナビ子に感化され、言う様になった……。
お父さん、悲しい!
って。まだ二日しか経っていないのだが。
『いんや……。処で、ここらって、世界樹の側だよな?戻ってきたん?』
何だか俺は、サクヤの口癖が、うつってしまったような……。
俺って、影響されやすい性格なのかな?
まあ、いいや……。それより、前方には、どっしりとそびえ立つ、世界樹が見える。
どうやら、ゴブリンの集落とは、真逆の方向なのだろう。
世界樹の霊脈にあてがわれ、自生する植物が、ひと際大きくなっているのが分かる。
『この茂みを抜けると、湖なんよ♪』
木々が開けて、光が広がる。
ついに手に入る、動物性タンパク質!
釣り竿は無い。けれど、無いなら無いで、泳いで取れば良い。
魚だ。魚!
果物も美味しい……。
しかし、やはり物足りぬ。
俺は、肉を所望する。
肩で、風を切りながら、湖へと近づいていく。
今の俺を止められる奴は、そうは居ない。
最初からクライマックスだ。
虹色に輝く闘気が、天へと上る。
『って、ジャショウちゃん。何一人で盛り上がってるの?魚獲るだけだよねえ?』
『毛が逆立って、ピリピリするんよ……』
ナビ子とサクヤに、咎められ、我に返る。
ふう……。落ち着け俺。魚は、逃げたりしない。
いや逃げるだろうが、湖から出たりはしないだろう。
ここからは、俺のターンだ。
最早、何人たりとも、ドローはさせない。
Be cool Be cool
湖は、目の前だ……。
視界が広がる。
太陽の光に照らされ、水面が光り輝いているのが分かる。
俺は、ついに辿り着いたんだ!
食の、桃源郷に!




