表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天翔雲流  作者: NOISE
森に潜むおかしな面々
38/1794

シナリオブレーカー

 人は、過ちを繰り返す……。

 されど、その経験の中で、成長するのが、人と言う生き物だ……。

 傷つき、倒れ、さりとて、再び起き上がる。

 失敗する事が、敗北では無い。

 敗れる事が、終わりだと言う事ではない。

 立ち止まり、空を見上げる。

 呼吸を整え、後ろを振り返る。

 生きて、前に進む事こそ、人の道なのであろう……。



ズズーン!!

 何をしたかって……?

 ただ、放気を放っただけなんよ……。

 しかし、次の瞬間、辺り一面、焦土と化した。

 大地はえぐれ、木々は錬気に飲まれ、跡すら残らなかった訳なんだが……。

「えっ!?」

 俺は、ただただ、両手を見やり、呆然とするばかりだ。

『えっ!?じゃ無いわよ!馬鹿なの?何やってるの!!』

 ナビ子が、血相を変えて、怒り出す。

 普段、怒らない子が怒ると、迫力が違う。

「お、おう……。すまん」

『まったく、気を付けてよね?神域の錬気は、普通の錬気の、十倍以上の質量があるんだから』

 うん、解った……。

 これは、異常だ……。

 何だか、全てを吹っ飛ばして、一気にレベルが上がった様な気にさえなる。

 しかしこれは……。どうせなら、魔王との戦闘で、ピンチになって、覚醒するとかの方がかっこいいのでは……?

 中二心をくすぐるシチュエーションを思い浮かべ、口角が緩む。

『ジャショウちゃん、ジャショウちゃん?』

 薄ら笑みを浮かべ、にやつく俺に、ナビ子が怪訝そうに声をかける。

『ジャショウは、お年頃なんよ……』

 サクヤは、やれやれと言った風に、首を横に振り、ため息をつく。

 いいじゃん。俺だって、傾いた生き方に憧れても……。

 て言うか、早い段階で、力が進化する方が問題じゃん……。

 シナリオブレイカーじゃん。

『なあ、話が、ペラペラだぞ?もっと、順を追ってだなあ……』

『ジャショウちゃん。それ以上はいけない……。現実は、小説より奇なものよ』

 力が無くて、苦労するなら分かる……。

 しかし、力が有り過ぎて苦労するとか、話的につまんないだろう……。

 ある年齢になって、母親に起こされ、王様に会って、ヒノキの棒と、100G を渡され、旅に出る。

 最初は、青いプヨプヨしたモンスターを狩って、レベルを上げて、鋼の剣を買う。

 いつしか、名前負けしていた、勇者と言う称号に負けない位強くなって……。

 俺は、そんな冒険を夢見ているんだ。

 人生、イージーモードとか、中二心はくすぐられるが、なんか違う……。

『あまい。あまいわ!たかだか、神域レベルに片足突っ込んだ程度で、人生イージーモードって……。甚だ可笑しくって、へそで茶が湧かせるわ!』

 ナビ子の、どや顔が目に浮かぶ。

 確かに、戦った敵と言ったら、ゴブリンぐらいだ。結論を出すのも、早計過ぎるか?

『さあ、勇者よ。この森を抜け、我が領域に辿り着くが良い!ふんす!』

 なおも続く、ナビ子の大演説。

 ちょっとした大魔王気分なんだろう。普段のおちゃらけた口調を忘れ、鼻息荒く、歌う様に演説を繰り広げる。

 て言うか、この子、『ふんす!』とか、言ってるよ……。

『あ~。違う意味で、ナビ子の処へ逝きそうだよ……。腹減った……』

 俺は、その場にへたり込む。

 自分の異常さなど、最早、どうでも良い……。

『お腹減ってるんよね?獣はとれんけど、魚を獲ってくれる所なら、あるんよ』

『えっ!?』

 不意に、サクヤが、俺の頭を撫で、子供をさとす様に言い出した。

 けど、獲るじゃなく、獲ってくれる?

 言葉の趣旨が理解できないが、今はそんなことどうでも良い。

 魚でも十分だ!

 久々に、果物以外が食える。俺は嬉々とした思いに駆られ、サクヤを抱きしめる。

「是非、連れて行ってくれ!」

 感情が高ぶり、内包されていた錬気が、一気に解き放たれる。

 遠くにいた鳥が、さらに遠くへ、羽ばたく音が、森に木霊した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ