閑話 武神が抱く、淡い恋心……。
武神ウエル……。
戦いの神にして、六神の三女。
生前は、圧倒的な武を持ち、悪神を封印し、神の玉座に辿りつきし者……。
策略も無く、ただ、眼前に立ちはだかる敵を屠って、その偉業を成し遂げる。
生粋の、バトルジャンキー……。
しかし、今現在……。
バトル漫画、オタク……。
あらゆる戦闘漫画を読み漁り、物によっては、ミスター〇っ子の様な異色の物すら読む始末……。
これ以上言及すると、著作権がやばい……。
まあ、何が言いたいかと言えば、今の彼女の戦場は、コ〇ケや秋葉が主だと言う事だ。
そんな彼女も例にもれず、漫画は、常に三つ買っていることだ。
布教用、愛読用、そして保存用……。
彼女は、自分が愛読する漫画を、自分の天使のみならず、妹達にも強要する。
一回、上の姉達に布教しようとしたが、やんわりと躱されてしまった。
彼女は、武神……。
年功序列には、厳しいのだ。
上を敬い、下をかわいがる。
理想的な、姉御肌……。のはず。
しかし、妹達にとって、興味のない漫画を押し付けられるのは……。
それだけなら良い……。
バトル漫画を読めば、その技を……。
そして何より恐ろしいのは、料理系漫画を読んだ時だ……。
彼女は、その……。
味覚が壊滅的に……。
そんな彼女の惨劇を防ぐため、妹達は、考えた。
そうだ!私達が、作る側にまわろう。
ウエルを、審査員にして、私達が、うまい料理を作る。
ウエルは、酒と、つまみがあれば、大人しくなってくれるはずだ。
そんな、妹達の謀略を知る事無く、ここ数年、料理対決と言う名の宴は、平穏に行われていた。
しかもウエルは、五百年前に邪聖に会って以来、度々、母、エステカの処に入り浸っている。
何が言いたいかと言うと、漫画の起源は、鳥獣戯画が初めとして、バトル漫画が生まれたのは、ここ数十年……。
料理バトルも、ここ最近だ。言うほど、被害は甚大では無いと言う事だ。
しかし、それを差し引いても、ウエルの作った料理は、インパクトが強く、妹達や、天使達の間では、タブーとされることになった。
さて、ウエルの料理スキルについて、語るのはこの位にしよう。
問題は、ここ数年、ウエルのエステカの宮殿への来訪の多さについて語ろう。
五百年前、邪聖を見て、ウエルは変わった。
エステカの宮殿に来ては、我が儘を言い、エステカを困らせる。
エステカも、ほっとけば良いものを、その我が儘に一々対応していた。
しかし、ウエルの目的は……。
最早、言うまでもない。邪聖だ……。
エステカが目を離した隙に、邪聖に自分好みの知識を植え付ける。その繰り返し……。
そう、自分好みの男にするために……。
そして今、彼女が植え付ける知識は、もっぱら、漫画の知識のみ……。
彼女は、三冊の本の他に、邪聖専用の本すら買っている……。
察しの良い者は、気付くだろう……。
今の邪聖のスキルは、偏った、バトルスキルと料理スキルで、大半を占めている。
幸いな事に、錬気と言う、特殊な能力にすんなりと対応できたのは、この知識のおかげだった……。
ウエルは、笑う……。
今、正に、自分の良き理解者を得た事に。
しかし、同時に悲しみもある。それは、彼が自分の天使では無い事に……。
五百年……。
ただただ、自分の愛した男を、自分色に染めるため、自らの布教を捨ててまで行ったことは……。
神々の遊戯……。
儚い恋……。
戦いしか知らない彼女が持った、淡い夢。
彼女の想いが、何を成すのか。それは、神すら知る事の出来ない小さな歪み……。




