神々の事情……。
どこまでも続く蒼天……。
どこまでも蒼く、眩しい空だ。
それが導くは、栄光か?無常な死か?
いや……。
蒼天に、答えなど無い。
ただ、そこに悠然と有り。人々を包むだけだ……。
何もありゃしないんだ……。
今の俺の、この、手の中の様に……。
だから、自由なんだ……。
『ナル。おつ、おつ!』
『なんだよ、それ?』
人が感傷に浸っているのに、ナビ子は、急に茶化してきた。
こいつは、何がしたいんだ?
記憶の断片が見せる幸福に、少しは、酔いしれても良いだろうが……。
『え~。ナルシスト、お疲れって意味で……』
『誰が、ナルシストだ!』
感傷に浸っているが、酔いしれてはいない。
こつく頭があれば、こついてやる処だ……。
『だって、隙あらば、シリアスにきめようとするじゃない、ジャショウちゃん』
別に、そんなつもりはない。
少しムッとして、頬を膨らませる。
『酔いしれているでしょう?』
『はいはい。ナルですよ、ナル!』
『ジャショウ。かっこいいんよ?』
サクヤのフォローに、感極まって、思いっきりハグをする。
「サクヤは、可愛いなあ!」
『ちょっと、苦しいんよ』
『ねえ。私は?私は?』
『ナビ子は、知らん』
俺は、意地悪く笑い、そっぽを向く。
『む~~~~』
頬を膨らませ、恨めしそうな眼をする、少女の顔が脳裏に浮かぶ。
俺は、好きな子をからかう、悪戯っ子の様な笑みを浮かべ、仕返しとばかりに、ナビ子をからかう。
『二人とも仲良くするんよ』
サクヤは、不安そうな顔をし、仲裁に入る。
オロオロするサクヤを見て、俺はため息を一つつき、頬を掻く。
『あ~その、なんだ……。ナビ子も可愛いぞ?』
俺は少し照れながら、ナビ子に囁く。
その瞬間、ナビ子の顔に、笑顔が戻る。
『え、えっと、別に可愛いって言われて、うれしい訳じゃ無いんだからね!』
ツンデレ頂きました。
ごっつぁんです。
まあ、普段、ツンツンしてる訳では、無いんだが……。
『ナビ子……。キャラブレてるぞ?』
目の前にいないナビ子を見る様に、ジト目になって、虚空を見上げる。
て言うか、ナビ子、いつもキャラブレブレ……。
『良いじゃない。私だって、キャラを立てて、存在感を出したいのよ!』
今でも、十分キャラが立っているし……。
ナビ子の言い分に、苦笑する。
『ナビ子は十分、存在感あるよ』
『えっ?やっぱり~。私ってば、やっぱり至高神なだけあるわよね~』
ナビ子の、何気ない一言に、耳を疑う。
『は?ナビ子、至高神なの?』
『そだよ~。言ったじゃない。私、世界神って。世界神よ。世・界・神!世界神って言ったら、至高神に決まってるじゃない♪』
ナビ子は、得意げに言うが、若干疑わしいんだが……。
そもそも至高神が、こんな処で、油売ってて良いですか?
と言うか、こんな俗世間に塗れた神で、大丈夫なのか……?
『ナビ子、お前……。こんな処で、遊んでて良いのか?』
俺は、一筋の汗が流れる……。
神に、依存した世界……。
神が、管理を放棄している世界……。
『え、なにが~?』
ナビ子の、調子外れな、問いが返ってくる。
俺は米神を抑え、苦悶する。
『何がって……。良いの?世界管理しなくて……』
『平気よ~。だって私には、頼れる子供達が、六人もいるもの♪』
子持ち……。
色々と、新事実が発覚し、衝撃が走る。
見た目は、七、八才。しかしその実態は、六児の母……。
『え?何、何なの……?』
俺が出す微妙な空気に反応し、ナビ子が不振がる。
『いや、ナビ子……。人妻ならぬ、神妻?』
『ナビ子姉ちゃん。旦那さんほったらかしは、あかんよ?』
熟年離婚のはやる昨今、神様も、冷え切った家庭を築いているとは……。
俺とサクヤは、顔を見合わせ、哀れんだ目で、ため息をつく。
『え?いやいや。私未婚よ?旦那とかいないから』
『え?それは……。シングルマザー?やることやって、結婚はしてもらって無いの?』
俺はさらに引き、後退る……。
神様の結婚事情、どろどろしすぎ……。
『違うから!私、未通!神様、そう言うの、無いから!』
ナビ子の必死さが、逆に引く……。
何か、昭和のアイドルの様だ……。
私、永遠の〇〇歳!とか、言いだしそう。
私、アイドルだから、トイレ行きません!とか?
『子供達は、私の神力を分け与えた、人神よ』
『じんしん?』
『そ、人神。この世界で、徳を積んだ人間の中から、特に優秀な者に、私の神力を分け与えて、神に転生した者達よ♪』
人神……。俺に近い存在か?
人から転じた神か……。しかし、ナビ子の方が、人間臭い気がする……。
『でも、みんな元人間と言うだけあって、戦闘狂や、拝金主義や、異様に美意識の高い子とか、一癖も二癖もあるのよねえ……』
全言撤回……。
そんな奴らに、世界任せて大丈夫か?
「ナビ子……。そんな奴らに任せて、世界は大丈夫か……?」
俺は、うっかり思っている事が、口から洩れる。
『え?大丈夫よ♪神様なんて、みんな気まぐれなんだから。ただちょっとねえ……』
何が大丈夫なんだ?
話を聞いていて、大丈夫な処が、まったくもって見当たらない。
しかも、言葉を濁すナビ子……。
『ただ、何だ?』
『うん……。なんか最近、魔王を名乗る者が続出しているのよ。しかも、この世界に、外の世界から大量に、魂が流れ込んできているの』
うん。全然、大丈夫じゃ無い……。
魔王て何?しかも、一人じゃ無いの……?
なんか、ちょっとした世紀末状態に、苦笑する。
『魂が、流れ込んでるって?』
『うん。ジャショウちゃんみたいな、転生者』
『500年前に、そんなに、人をさらってきたの?』
『さらうって……。失礼ねえ。何度も言うけど、誘って来たのよ』
うん。どっちでもいい……。
さらってきたんでも、誘って来たんでも、どっちでもいい。
『どうもその転生者達、正規のルートで来た人達じゃ無いみたいなのよ……。魂の浄化が、しっかり行われてないの』
駄目だ……。色々と駄目だ……。
そんな情報、知りたくない。
『魂の浄化、出来て無いんじゃ、マナの供給、うまく行かないんじゃ無いの?』
『う~ん。ここ数百年で、こちらの世界も、随分成長したから……』
大丈夫なら良い……。
もう、良い……。
これ以上は、突っ込みたくない。この話はもう、お終い!
まだ見ぬ冒険はウエルカムだが、厄介ごとはNGだ!
俺の乾いた笑い声が、風に乗って木霊する。
さあ、次は何をしようか?
俺は、遠くを見詰め、一つため息をつき、ゆっくりと、青い空へと目を向けた。




