蒼天の先を描いて……。
『ジャショウちゃん?』
ナビ子の呼ぶ声に、我に返る。
「あ、あ……。俺……」
体を震わせ、しどろもどろに、言葉を振り絞る。
『記憶、少し戻ったのね……』
黄金色に広がる、田園……。
汗を拭い、笑いかける人々……。
そんな人々を、馬上で、手を振り、答える男性……。
止めどもなく流れる涙。
サクヤが心配そうに、俺の頭を撫でる。
『どうしたん?ジャショウ……。どっか痛いん?』
人とは、不思議な生き物だ……。
言い表せられない幸福に、胸が押しつぶされそうになり、涙が流れる。
人は、本当にうれしいと、涙するようだ。
「いいや……。今、幸せなんだよ……」
俺は、愛おしそうに、サクヤを抱きしめ、涙を拭う。
『……?幸せなん?』
『ああそうだよ……。沢山の人に愛され、幸福を知り、そして今、サクヤ達に出会えた』
『アタイも、幸せなんよ♪』
『私も~』
サクヤとナビ子は、ハニカミながら、笑いかけてくる。
ああ、愛おしい……。
燃え盛るゴブリンの死体は、天をも焦がす勢いで燃え盛る。
ゴブリンによって飾られた生首は、そんな炎に照らされ、鮮明に浮かび上がる。
そんな陰湿な空間とは裏腹に、幸福に包まれ、サクヤを抱きしめている。
ああ、幸福な半生であった……。
十二のガキが、半生とは、大仰な……。
色んな矛盾を感じながらも、温かな幸福が包む。
殺伐とした世界は、今の世界の事か、過去のものか……。
なんにしても、温かなやさしさに包まれている。
それだけで、十分か……。
久々に、まじまじと見上げた、蒼天……。
『どうしたの?』
ナビ子が、怪訝そうな声で、話しかける。
「なに……。世も泰平事も無しってね」
『何言ってんの。今、熱いバトルをした所でしょう?』
今見る蒼天。何時か何処かで見た蒼天。
お館様が、見て称えていた蒼天。
―邪聖よ。自由に生きよ!―
風が、言葉を運ぶ。
ああ、自由に生きるさ……。
脳裏に浮かぶ、三人の男達に、語り掛ける。
決意を固め、蒼天に拳を掲げた。
我は、水無月の一本矢!
鬼神・邪聖!
天地が続く限り、どこまでも、駆け抜けて行くさ!




