表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天翔雲流  作者: NOISE
深い森の中で
31/1791

蒼天の先を描いて……。

『ジャショウちゃん?』

 ナビ子の呼ぶ声に、我に返る。

「あ、あ……。俺……」

 体を震わせ、しどろもどろに、言葉を振り絞る。

『記憶、少し戻ったのね……』

 黄金色に広がる、田園……。

 汗を拭い、笑いかける人々……。

 そんな人々を、馬上で、手を振り、答える男性……。

 止めどもなく流れる涙。

 サクヤが心配そうに、俺の頭を撫でる。

『どうしたん?ジャショウ……。どっか痛いん?』

 人とは、不思議な生き物だ……。

 言い表せられない幸福に、胸が押しつぶされそうになり、涙が流れる。

 人は、本当にうれしいと、涙するようだ。

「いいや……。今、幸せなんだよ……」

 俺は、愛おしそうに、サクヤを抱きしめ、涙を拭う。

『……?幸せなん?』

『ああそうだよ……。沢山の人に愛され、幸福を知り、そして今、サクヤ達に出会えた』

『アタイも、幸せなんよ♪』

『私も~』

 サクヤとナビ子は、ハニカミながら、笑いかけてくる。

 ああ、愛おしい……。

 燃え盛るゴブリンの死体は、天をも焦がす勢いで燃え盛る。

 ゴブリンによって飾られた生首は、そんな炎に照らされ、鮮明に浮かび上がる。

 そんな陰湿な空間とは裏腹に、幸福に包まれ、サクヤを抱きしめている。

 ああ、幸福な半生であった……。

 十二のガキが、半生とは、大仰な……。

 色んな矛盾を感じながらも、温かな幸福が包む。

 殺伐とした世界は、今の世界の事か、過去のものか……。

 なんにしても、温かなやさしさに包まれている。

 それだけで、十分か……。

 久々に、まじまじと見上げた、蒼天……。

『どうしたの?』

 ナビ子が、怪訝そうな声で、話しかける。

「なに……。世も泰平事も無しってね」

『何言ってんの。今、熱いバトルをした所でしょう?』

 今見る蒼天。何時か何処かで見た蒼天。

 お館様が、見て称えていた蒼天。

―邪聖よ。自由に生きよ!―

 風が、言葉を運ぶ。

 ああ、自由に生きるさ……。

 脳裏に浮かぶ、三人の男達に、語り掛ける。

 決意を固め、蒼天に拳を掲げた。

 我は、水無月の一本矢!

 鬼神・邪聖!

 天地が続く限り、どこまでも、駆け抜けて行くさ!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ