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天翔雲流  作者: NOISE
深い森の中で
30/1837

幸福に包まれて……。

 思い出とは、実に曖昧なものだ。

 苦しみは、色濃く。美しい記憶は、色鮮やかに残る。

 美しく彩られた記憶は、人を蝕み。時に、人の進退を停滞させる。

 憎しみは、心を歪め、文字通り、人を殺す事となる。

 思い出とは残酷で、儚いものだと思いながらも、それに縋るのが、人の業なのだろう。



『そっか……。やっぱ、少し話さないとね』

 しんみりとした面持ちで、語り始めるナビ子……。

 集めたゴブリンの死体に、火を灯す。

 炎は、ゆっくりと燃え広がり、肉の焼かれる嫌な臭いがする。

『ジャショウちゃんが、こっちに来たのは、西暦1500年頃。でも今は、20××年』

『20××年?それじゃあ、俺は500年間どうしていたんだ?』

 俺は、小首を傾げ、ナビ子に話に耳を傾ける。

『ジャショウちゃんは、500年間、眠っていたのよ。ただ、その間も、異世界転生のススメは、更新されていたのね……』

 500年眠っていた……?

 異世界転生の話では、そんなラグは、聞いたことが無い。

『なぜに?』

 俺は、不思議に思い、ナビ子に聞き返す。

『ジャショウちゃんの居た世界と、この世界は、世界の構築体系が、違いすぎるのよ』

『そっか……』

『あら、物分かりが良いのね?』

『ん~。なんかこんなやり取りしたような気がする』

『記憶は失われていても、魂は記録しているのね……』

 ナビ子は、妙に納得し、うんうんと頷いている。

 まあ、理解した訳では無いが、何故か、妙に納得した。

 別に、話を蒸し返すのが、メンドクサイ訳では無い……。

 本当だぞ?

 まあ、何にしても、今言える事は、構造の違う物に、異物は、本来入り込めないと言う事だ。

 それは、精密であれば、あるほど……。

『俺以外も、転生した人いるん?』

『いるわよ♪私、今言う歴女だもん。ジャショウちゃんのいた時代に、すごく魅せられたから……』

『さらったのか?』

 弾んだ声で、語りだすナビ子に、眉を顰め、問いただす。

『失礼ねえ。さらったりなんかしないわよ。ジャショウちゃんのいた所は、異彩を放つ人達が多くいたの……。だけど神の手を離れた世界では、強すぎる光。強い光は、他人を。ううん、自分すらも傷つけてしまう』

 鬼子……。

 不意に、俺の頭をよぎる。

 恐れ、下げすむ人々の目。

 呪いの言葉を投げかける、人々……。

 嫌悪で、身を震わせる。

 まるで、暗闇の中を歩くような、不安。

 しかし、暗闇の先に、光明が見える。

 初老の男性の笑顔……。

 ゆっくりと俺に、手を差し伸べる。

「お館様……?」

 一滴の涙が、頬を伝う。

 眼前に広がる世界……。

 笑いあう人々。

 優しく強い手で、俺の背を叩く男達。

 俺に、手を振る女達。

〈HP→23000〉

〈錬気→342200〉

〈筋力→3660〉

〈体力→3100〉

〈器用→1620〉

〈頑強→2400〉

〈敏捷→3120〉

〈反応→3350〉

〈精神→2200〉

〈気配察知→6〉

〈武術の心得→7〉

〈限界突破→4〉

〈格闘→10〉

〈威圧→6〉

 暖かな記憶に、心が締め付けられる。

 記憶をたどる最中、身体が軽くなっていくのが感じられた。

 暖かな光……。

 目を覆いたくなる様な光り。

 幸福とは何か……?

 誰かが言う。幸福とは、過去を振り返って、初めて知る事の出来るものだと。

 幸福の中にいる人間は本当に、幸福に気付く事が出来ないのだろうか……?

 今、俺は幸せだ……。

 過去の幸福を、失って得たモノの大きさ……。

 俺は今、押しつぶされそうな幸福に抱かれて、幸福を知った……。


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