表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天翔雲流  作者: NOISE
深い森の中で
26/1794

名乗りと言ったら、やっぱこれだろう?

 戦いに赴く高揚感。

 アドレナリンが分泌され、恐怖と言った負の感情が、薄らいでいく……。

 しかし、本当の戦士と言うものは、この状態に呑まれず、冷静な判断が求められる。

 そう、俺は戦士だ。殺戮者では無い。

 これから行う事は、殺戮では無く、必要な物資を得る為の、軍事的手段に過ぎない。

 いや……。

 これは、ただ、狂気に呑まれんとする、自分への言い訳なのだろうか……。


 索敵では、赤い目印が、無数に点在している。

 十や二十では無いな、これ……。

 それでも俺は、一切の躊躇いも無く、ゴブリン達の居る広場へと、突き進んでいく。

 呼吸を整え、眼前を見据える。

 自然と四肢に力が入り、闘気が立ち昇る。

 いかん、いかん。体の力は抜いて、自然体で。

 相手はゴブリン……。

 いや、敵が誰であろうと、心に余裕を、そして、慢心せずに臨機応変に事に当たれ。

 ひと呼吸入れて、茂みから飛び出す。

「やあやあ、我こそは、近くば寄って目にもの見よ!人の子にして、人知を超えし者なり。我が名は、ジャショウ。戦いの意思有る者は、前に出よ!」

 きまった……。俺は、一人満足し、鼻で笑う。

『いや、ジャショウちゃん……。なんかダサかったから……。やあやあって何よ……』

 えっ!?だめ?

 名乗りと言ったら、やっぱこれだろう?

 戦初めの、両武将の一騎打ちの名乗り。

 俺、昔から憧れてたんだ。

 しかし、これがダサいとは……。

 あれか?決めポーズが、無かったからか?

 弓を構えて、一本足で立つとか……?

 ナビ子の突っ込みに、少し凹み、その場で膝を抱え、いじけて見せる。

 仕方が無いじゃないか。口上なんて、知らんし……。

 俺が居た時代、これが普通だし……。

 異世界転生のススメにも、あまり、名乗り口上を上げる人、居らんし……。

 じゃあ、やるなって……?

 ノリだよ、ノリ……。

 突然の事に、ゴブリン達は、呆気にとられ、呆けた顔で、こちらを窺う。

 おっ!?これはあれか?ゴブリンに転生した人とか居るん?

 ゴブリンからの、下剋上……。

 結構、面白い話多いよね。

 しかし、そんな願いもむなしく、一匹が我に返り、奇声を発する。

 それにならい、周りのゴブリン達も、剣や棍棒を持ち、一斉に立ち上がった。

 どうやら、ゴブリン達は、殺る気の様だ。

 俺は、気怠そうに立ち上がり、ゴブリンを見据える。

 先ほどまで、ゴブリン達が囲っていた焚火には、ユキザルの死体があった。

『あいつら、アタイの仲間を……』

 サクヤは、嫌悪で声を震わせ、ユキザルの死体を指さす。

 弱肉強食……。その言葉で済ます事は出来る。しかし、人と言う生き物は、ままならない。同族や、それに属した者の、死を見れば、怒りがこみ上げる。

 ユキザルの死体に目をやる。そこには、無数の傷跡があり、散々、弄んだことが窺える。

 怒りが頂点に達する。

「死にたいか!!」

〈威圧LV3習得〉

 脳内に、アナウンスが鳴り響く。そんなことは気にも留めず、ゴブリンににじり寄る。

 ゴブリン達は、俺の気迫に気圧され、後ずさりする。

 両手に創気で、刀を作る。

 跳躍。

 最初に、武器を取ったゴブリンめがけて、駆けあがる!

 武器を持ったが未だ、戦闘態勢をとれずにいるゴブリン達は、先ほどの威勢はどこへやら、顔を引きつらせ、縮こまっている。

 一閃。

 刀は、ゴブリンの胴を捉え、横一線に、切断する。

「ありがたく思えよ。俺は、嬲ったりしないからさ……。死した事にも気づかず、逝っちまえよ」

 静かな微笑を湛え、戦闘の幕が切って落とされた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ