時間の長さだけが……。
戦いの後の高揚感……。
戦いの前の高揚感……。
俺はどうやら戦闘狂らしい……。
弱者を嬲るのは、趣味じゃ無いが。どうせなら、強い奴と戦いたいし。
拳を交える数に高揚し、奪った命の重さに、エクスタシーを感じる……。
自分で言うのもなんだが、腐ってやがる。
そんな事を考え、自嘲する。
『待って。ゴブリンは、右耳が討伐部位よ』
一人陶酔していた俺は、ナビ子の言葉に、我に返り、ゴブリンの死体に目を向けた。
右耳と言っても、そんなものを集めて、懐に入れるのは抵抗が……。
『とらんとダメか?』
創気で小型のナイフを作り、死体から右耳を削ぎ落とす。それを、人差し指と親指でつまみ、まじまじと、眺めるが……。
正直、あんまり、良い感じはしない。
死体を弄ぶようで、気分の良いものでは無い。
でも、まあ、戦場で首級を上げるは、戦の常か……。
「これは、食えそうもない……」
サクヤは首を横に振り、ナビ子は、深いため息をついた。
しかし、見方によれば、軽く揚げて、塩を振れば、コリコリとして、案外いけるんでは無いだろうか……?
「しかし困った……。食い物以外を、懐には入れたくない」
死体の一部。しかも生物を、他の食材と一緒に保管するのは……。
困り顔で悩んでいると、サクヤが顔を覗き込み、頭を撫でてくる。
『ジャショウ。困ってるん?』
俺は苦笑し、頷く。
「耳を懐に入れるのはな……」
『アタイ、何とか出来るかも!』
「サクヤが?」
サクヤは頷き、両手を掲げる。
『プラント・バインド!』
サクヤの掛け声と共に、植物の蔦が、大地から延びる。
蔦は1mほど伸び、その場に経たる。
『ほんまは、もっと太うて、敵に絡みつく魔法なんよ♪』
「おお!」
俺は感激し、伸びた蔦を刈り取る。
ついに、魔法と言うやつを見た。
錬気とは違って、これはこれで、かっこいいではないか。
俺だって、お年頃だ。中二心をくすぐるものはウエルカムだ!
『それに耳を通して、首から掛ければ良いんよ』
サクヤは照れ臭そうに笑い、頭を撫でる事を要求してくる。
俺は、サクヤの頭を撫で、笑いかける。
「ありがとう」
嬉しそうに笑うサクヤを見て、心がほっこりとする。
この殺伐とした世界で、サクヤは俺の癒しだ。
いつしか、サクヤは、俺の心の支えになっていたんだと思い、笑みが零れる。
時間の長さだけが、信頼の重さになるわけじゃ無い。
心の繋がりは、きっとそんな簡単なものじゃ無いんだと思い、サクヤを優しく撫でながら、静かに笑った。




