初エンカウント!
いきなり、100kはまずかったか?
若干、ふらつきながらも、重りに慣れていく。
……。
よし、成れた!
高々100K。
四肢合計で、400K。
どうと言う事も無い!
ゴブリンは、未だ気付いていない。
俺は、足音を消して、一気に駆け寄る。
ゴブリンは気付かず、バックアタック成功。
一匹目のゴブリンの、首を飛ばす。
勢いあまって、上空で、ゴブリンの頭が飛散した。
案外、容易く行った……。
しかし、二匹目はこちらに気付き、とっさにかがんで転げる様に距離を取った。
『ジャショウちゃん。重りを取って!』
ナビ子が叫ぶ。
しかし俺は、重りを取らず、対峙する。
まあ、このぐらい余裕でしょう。
試したい事もあるしな……。
「伸びろ!」
俺は、刃をゴブリンに向け、創気で出来た刃に、気を流す。
刃は一瞬、膨れ上がる様に光り輝き、刃が伸びる!
ザシュ!
刃は、ゴブリンの喉を貫き、後ろの木にも突き刺さる。
「ごぷ……」
ゴブリンは、声にならない悲鳴を漏らし、そのまま崩れ落ちた。
すかさず、索敵をかける。
ゴブリンは、赤く点滅して、しばらくしたのち、色を失った。
『倒したん?』
サクヤは、不安そうに、こちらを窺う。
俺は残心を解かず、死体に近づく。
ふっ……。
俺に慢心の二文字は、無いのだ!
『パンパカパ~ン♪初勝利おめでとう♪』
ナビ子のファンファーレに、毒気が抜かれる。
折角、かっこよく決めてたのに……。
ナビ子は、どうも、ゲーム感覚でいる様に思える。
リアルを生きている、俺達とは、少し感覚がずれている様な……。
しかし、まあ、今回はうまく行った。
苦笑しながら、死体をまさぐる。
死体はまだ生暖かく、気分の良いものではない。
腰に巻いた縄に、麻の子袋が付いている。
俺は、細心の注意を払い、袋を取り上げる。
袋の中には、銀色の硬貨が一枚、入っていた。
『ナビ子。これか?』
俺はそう言うと、硬貨を手に取ってみる。
『ああそれ……。小銀貨ね』
『小銀貨?』
銀貨を、太陽にかざす。銀貨は太陽の光を反射させ、きらきらと輝いた。
『硬貨は、何種類かあるんだ?』
硬貨を指で弾く。硬貨は天高く舞い、それをサクヤが、両手でキャッチする。
「ナイスキャッチ!」
サクヤは嬉しそうに、両手に持った硬貨を、袋にしまう。
『ジャショウちゃん。良い?』
ナビ子に声をかけられ、我に返る。
『悪い、悪い。硬貨の事だったな……』
自分で聞いておいて、話を脱線させてしまった。
苦笑し、頭を掻く。
『硬貨は、七種類あるわ。小銅貨、銅貨、小銀貨、銀貨、金貨、大金貨、白金貨ね。この世界の通貨単位は、エル。
小銅貨・・1エル
銅貨・・・10エル
小銀貨・・100エル
銀貨・・・1000エル
金貨・・・10000エル
大金貨・・100000エル
白金貨・・1000000エル
単純でしょ?』
俺は頷き、再び袋の中の硬貨を確認する。
小銀貨が、一枚……。100エルだと言う事だ。
『ナビ子。これって多いの?』
『夜店で、何か買ったらお終いね』
うんざりして、その場に突っ伏す。命を二つ狩って、これだけかと思うと、嫌になる。
……。
二つ?
そう言えば、まだ一匹しか、確認していなかったことを思い出し、もう一つの、首無し死体に目をやる。
死体の腰には、やはり無造作に、袋が下げてある。
俺はおもむろに袋を取り上げ、中を見る。
中には、金色の硬貨が一枚入っていた。
『おっ!当たりじゃない♪それ金貨よ』
『と言う事は、こいつの方が、各上だったのかな?』
『どうだろう……。こいつら、硬貨の価値、解ってないから……。持ってた数、同数だから、同格なんじゃない?』
ナビ子の言葉に、顔を引きつらせる。必ずしも、強い奴を倒したからと言って、大金を得るとは限らない。
TVゲームの様にはいかないか……。
まとまった金を手に入れるには、それなりに、狩っていかなくてはならなそうだ……。
いちいち、雑魚を狩るのは面倒だが、これも修行と割り切っていくしかない。
硬貨を一つにまとめ、立ち上がる。
「じゃあ、本番と行こうか?」
俺は肩に乗る、サクヤの頬を撫で、前方で揺らめく煙に目をやった。




