俺は、強者か?はたまた弱者なのだろうか?
行動は迅速に、思考は慎重に……。
孫氏の兵法にも記されている、風林火山陰雷。
限られた情報を生かし、如何に敵に対抗しうるかだ。
敵と言っても、軍や個を言うだけではない。今は、生存競争。即ち、衣食住を指し、次の一手を、決める手段である。
このまま、森で生活するか。はたまた、人に混じりて、生活を充実させるか……。
今を生きるために、食を確保し、先を見据えて、金を貯える。
それには、ナビ子の言を推察し、まずは手始めに、ゴブリンを急襲する。
自らの力も、試したいしな……。
「サクヤ、しっかり掴まってな」
今やるべきことは、風のごとき速さで移動し、林のように静かに、目標に近づく……。
方針は決まった。俺は肩にしっかり掴まるサクヤを確認し、世界樹から一気に飛び降りる。
高さは、50m程あったが、問題ない。
音も無く着地すると、一直線に走り出す。
必死に掴まるサクヤに、手を添えてやり、速度を上げる。
走る最中、索敵をかける。辺りは、灰色の世界になり、赤と青の情報が、飛び込んでくる。
続いて、気配察知。全周目がある様に、周りの世界を感じる事が出来た。
情報が、脳内を駆け巡る。理解するのではなく、感じ取るように努めて、情報を処理していく。
未だ、生物の気配は感じられない。
立ち上る煙が、裸眼でも確認できるようになった。
走る速度を落とし、足音を殺す。
不意に、気配察知に、何かが引っかかる。
LV3だから、300m以内……。
気を張り巡らせる。反応は2つ。三時の方向。
ゆっくりと距離を詰めていく。
草を分け出でて進むと、二足歩行の人影が、目に映る。
息を殺し凝視する。
人影は、体長130㎝程、薄汚れた皮鎧を身に纏い、こん棒を持っている。肌は、緑色をしていた。
「ビンゴ!」
小声でつぶやき、ガッツポーズをする。
『ジャショウちゃん。鑑定、鑑定!』
俺以外には聞こえないはずなのに、ナビ子も声を押し殺して囁く。
ナビ子の言われるまま、ゴブリンと一定の距離を保ち、鑑定を行う。
ゴブリン
体長:120~140㎝
HP:80
MP:50
錬気:50
筋力:80 体力:120
器用:70 頑強:80
敏捷:90 反応:110
知力:70 精神:60
幸運:90
オーソドックスなゴブリン。知力は、人間の子供並みで、簡単な道具なら使う事が出来る。
鑑定がLV3になったお蔭か、一気に鑑定内容も詳しくなった。
『あいつら、倒すん?』
サクヤは、不安げに囁きかけてくる。
「ああ。サクヤ怖い?」
『あいつらなぁ、アタイらの仲間、獲って食うんよ』
サクヤは身を振るえさせ、首に抱き着いてくる。
「しっかり、掴まっているんだよ?」
優しく囁きかける。
サクヤは小さく頷き、首にまわした手に、力を入れる。
俺は、ひと呼吸入れ、眼前のゴブリンを睨む。
今、始まる生存競争……。
強者が、弱者を蹂躙し、命を繋ぐ。
俺は、強者か?はたまた弱者なのだろうか?
高揚する心を抑え、拳を握った。




