誠の王
「ジャショウ王!此度の戦にて、多大な援助、誠に感謝する!」
「ははは!ヨーレス王よ。私達は、大した事を、やってはいないよ。スターリー再統一、おめでとうございます。ヨセフは、多くの税を課し、民達を苦しめていたと思ったが。実際は、民達を、必死に守っていたようですね?最後の一線で、民達から、ヨセフの、恩赦を求める声が、上がっている様だ。ヨーレス王は、その声に、お応えに成るのだろう?」
「ああ……。許せねえ事は、多々あるが。兄貴は……。本当の兄貴は、結局最後まで、血で汚れる事無く、スターリーから、悪臣を、廃してくれたよ。元の、ジャショウ王の屋敷に、幽閉する事とする。ったく、ムカつく話だよ!他人に、手を汚させて、自分は、のうのうと、楽隠居だもんなぁ……。愚かだと思ったが、やっぱり、兄貴には、敵わねえよ」
ヨーレスは、悪態を垂れているが、何だか、嬉しそうだ。
一度は、失望した兄が、スターリーの為に、悪者を演じていた事を知り、口にはしないが、嬉しかったのだろう。
あいつは、俺同様、最後まで、信念を貫いた。
不器用な男だよ……。
最後まで、誰も見捨てず、見事に、悪臣を、廃する事に成功した。
まったく……。
ローフの様な、忠臣を殺した事は、許せる事では無いが……。
あいつは、よくやった。
後世で、奴は、何と呼ばれる?
愚王か?暴君か?それとも、賢王と呼ばれるか?
大回りに成ってしまったが、これで、スターリーは、スタート地点に立てる。
ここからは、ヨーレス達の、手腕の見せ所だ。
荒廃したスターリー……。
今の人員で、何処まで、立ち直す事が出来るだろうか……?
「ジャショウまたね!セナ、優しくて強い、王様に成るよ!」
セナとルビアが、スターリーへと、戻って行く。
俺は、この幼き王の、未来を案じ、強く抱きしめる。
強く抱きしめ、
「ええ……。立派な王に、成って下さい。私は、遠方より、セナの成長を、何時でも、見守っています。どうか、立派な王に」
「うん!」
セナは、俺の言葉に頷き、力強く、抱きしめ返して来る。
優しく、強い王に……!
ヨセフには、叶わなかった、誠の王に成り、スターリーを、再び、大国へと押し上げてくれ。
セナは、この難行に、一人で、立ち向かわなくては為らない。
それでも、ヨセフが、愚王の汚名を着てまで、佞臣を排除した。
一人と言ったが、ヨーレス達も、後ろに控えている。
何も恐れず、立ち向かってくれ。
セナ……。
俺にも、ヨセフにも成れなかった、誠の王に、君が成るのだ。
スターリーの未来を、託したぞ。
セナ達を乗せた船が、エネスの港から、離れてゆく。
ああ……。
セナ……。
立派な王に……。
戦いから、逃げ続けたヨセフに。
戦い続け、血に塗れた俺……。
お前は、俺達の様に成るな。
セナの未来を……。
スターリーの未来を願い、俺は、センカ達と共に、力一杯、手を振った……。
「セナ様は、行かれてしまいましたね」
「ん?ああ、行ってしまったな……。しかし、大丈夫だろう。ルビアも居るし。エローラ、君の父も、セナの下で、教育を続けると言っていたからな。セナ達は、大丈夫だ」
「はい。私も、心配しておりません。セナ様であれば、立派な王に成るでしょう」
「ああ、セナは大丈夫だ。俺とヨセフと言う、対極の過ちを犯した、愚かな王を、二人も見ているからな。聡明なあの子なら、過ちを、繰り返すまい」
ふっ……。
俺も歳か……。
過去を悔いて、くどくなった。
ヨセフを追い詰めてしまったのは、この俺だ。
俺もまた、王失格だ。
あの時……。
パン!!
悔やむ俺の頭に、激痛が走る。
「つぅ~。急に何だ!?エローラ」
「何時も、言っているでしょう!シャキッとしなさい!!ジャショウ君は、王失格ではありません!そんな事を考えるなら、エネス国の発展の為に、頭を悩ませ為さい!しっかりしなさい!!」
また、エローラに、叱られてしまった。
エローラは、真っ赤な顔で、書類の山を、俺の机に乗せる。
俺は、苦笑し、
「ははは……。じゃあ、今日も一日、頑張りますか」
「そうです!しっかりしなさい!!」
やれやれ……。
エローラ達は、俺の事を、誠の王と、信じてやまないが……。
後の世では、俺は、何と呼ばれているのかな……?
暴君か……?
それとも、ヨセフ同様、愚王か……?
まあ、のちの世の事など、知った事では無いか……。




