始まる、崩壊の序曲
「おお!ジャショウよ!仕事の合間に、セナ達の面倒を見てくれて、祖父として、感謝するぞ!お主は、王としても、親としても、立派に育ったのう」
「ははは!私は、変わらず、ぼんくらですよ。セナ達には、多くを経験してもらいたく、思いましてね。人と接し、助け合う大切さを、学んでもらいたいと、思っております」
「そうかそうか……。ヨセフは、行儀は良いが、汚れる事を、やって来なかったからのう。儂は、親として、失格じゃ」
「ははは!親父!それは、違うんじゃ無いか?ヨシカやヨーレス。不肖な息子だが、俺も、親父を慕っている!孫だって、セナを始め、センカ達は、親父達の事を、敬愛しているんだぞ?その思いに、ただ一人の愚行で、目を背けるのかよ?」
「そうか……。そうじゃのう!儂は、何と、浅はかであったか!お主達に、愛されていると思うと、儂は、何でも出来ると、錯覚してしまうのう!」
後ろで、フィールも、涙を拭い、優しく笑う。
優しい両親達だ……。
ヨセフの愚行に、怒り、悲しみ……。
心を、痛め続けていたか。
俺は、優しく笑い、
「守りますよ……。貴方達の事も、セナ達の事も!だから、笑っていて下さい!後は、信じて待ちましょう。ヨーレス達が、スターリーを、解放するその日を!」
ヨーレスよ……。
身勝手だが、スターリーの未来を、君に託すぞ。
ヨセフの手から、スターリーを解放してくれ。
あの、玉座に座った、白き悪魔……。
決して、自ら、手を下さない。
憂いて、嘆いて、人に悟らせ、他人に、手を下させる。
決して、自分は、穢れない。
白を纏い、血の玉座に座る、あの暴君よ!
奴を倒すのは、俺の仕事じゃ無い。
いや、俺が、倒すべきでは無いのだ。
俺が倒せば、スターリーは、自力で立つ事が出来ぬ。
俺が倒せば、スターリーは、崩壊する。
だから、ヨーレスよ。後を託すぞ。
純白の悪魔が、血で染まるのも、そう遠い、未来では無いな……。
「ローバよ。君の息子の死は、不幸な事故であった。反抗的な者が多く、我が家臣達は、ヒステリックに成っていたのだ。私の意見を聞かず、勝手に、ローフを殺してしまった!彼等も、忠臣だ。どうか、許してやって欲しい」
第二回、南北対話……。
ヨセフは、ローバを呼び、下らん戯言を、恥ずかし気も無く、披露する。
ローバは、怒りの形相で、ヨセフを睨む。
聞いていた多くの者が、ヨセフには、未来が無いと、悟ったであろう。
ローバは、蔑んだ目で、ヨセフを睨み、
「言いたい事は、それだけですか……?貴方を、王と仰いでいた頃の、私を思い出すと、羞恥心で、気が狂いそうになる!これ以上、貴方の戯言を、聞く気には成れない!我が、第二の故郷、エネスへと、帰らせて頂きます」
「ま、待ちたまえ!部下の過ちを、王である私が、代わりに、謝っているのだぞ!君は、何とも、思わないのか?」
「何も思わない……?」
ローバは振り向き、般若の形相に変わる。
流石に、狂ったヨセフでも、その怒りを、察したのだろう。息を呑み、震える足で、一歩後ろへと、後ずさる。
それでも、構わず、一歩、また一歩と、ローバは、力強い足取りで、ヨセフに、にじり寄ってゆく。
ヨセフの家臣が、慌て、間に入る。
ローバは、力任せに、その家臣を、なぎ倒し、
「ふん!ジャショウ様に頂いた力で、貴方を殺す事は、容易な事だ!しかし、私は、そうはしない!貴様とは、違うからな!さっさと、ヨーレス様に、その地位を、譲る事だ。南スターリーに、未来は無いぞ!」
ローバは、それだけ言うと、ヨセフに背を向け、歩き去って行く。
ヨセフは、怒りと恐怖に震え、
「そ、それが、王に対する態度か!!裏切り者の分際で!私が、寛大にも、罪を不問とした事を、分かっているのか!!本来であれば、この場で、斬り捨ててやるところだったのだぞ!!」
ヨセフの戯言にも、ローバは一切相手にせず、振り向く事も無かった。
ヨセフに、ローバを、斬れる筈が無い。
物理的にも、状況的にも。
南スターリーは、賢臣が殺され、無能の力で、統治されている。
既に、追い詰められているのだ。
ヨセフは、北スターリーの人材を、強く欲している。
ヨセフは、愚かだが、馬鹿では無い。そして、人を見る目もある。
故に、ローバ達を、必要としているのだ。
南スターリーは、多くの血を、流し過ぎた。
今の人材では、修復できぬほど、荒廃している。
ヨセフ・スターリー!
壊れたモノは、国だけだと思うな!
人々の信頼も、賢臣達の忠誠も、全て、お前が、壊したのだ!
ヨセフ・スターリー!
最早、南スターリーの、崩壊は、止める事など、出来はしないぞ……。




