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天翔雲流  作者: NOISE
不死鳥の如く
1835/1865

始まる、崩壊の序曲

「おお!ジャショウよ!仕事の合間に、セナ達の面倒を見てくれて、祖父として、感謝するぞ!お主は、王としても、親としても、立派に育ったのう」

「ははは!私は、変わらず、ぼんくらですよ。セナ達には、多くを経験してもらいたく、思いましてね。人と接し、助け合う大切さを、学んでもらいたいと、思っております」

「そうかそうか……。ヨセフは、行儀は良いが、汚れる事を、やって来なかったからのう。儂は、親として、失格じゃ」

「ははは!親父!それは、違うんじゃ無いか?ヨシカやヨーレス。不肖な息子だが、俺も、親父を慕っている!孫だって、セナを始め、センカ達は、親父達の事を、敬愛しているんだぞ?その思いに、ただ一人の愚行で、目を背けるのかよ?」

「そうか……。そうじゃのう!儂は、何と、浅はかであったか!お主達に、愛されていると思うと、儂は、何でも出来ると、錯覚してしまうのう!」

 後ろで、フィールも、涙を拭い、優しく笑う。

 優しい両親達だ……。

 ヨセフの愚行に、怒り、悲しみ……。

 心を、痛め続けていたか。

 俺は、優しく笑い、

「守りますよ……。貴方達の事も、セナ達の事も!だから、笑っていて下さい!後は、信じて待ちましょう。ヨーレス達が、スターリーを、解放するその日を!」

 ヨーレスよ……。

 身勝手だが、スターリーの未来を、君に託すぞ。

 ヨセフの手から、スターリーを解放してくれ。

 あの、玉座に座った、白き悪魔……。

 決して、自ら、手を下さない。

 憂いて、嘆いて、人に悟らせ、他人に、手を下させる。

 決して、自分は、穢れない。

 白を纏い、血の玉座に座る、あの暴君よ!

 奴を倒すのは、俺の仕事じゃ無い。

 いや、俺が、倒すべきでは無いのだ。

 俺が倒せば、スターリーは、自力で立つ事が出来ぬ。

 俺が倒せば、スターリーは、崩壊する。

 だから、ヨーレスよ。後を託すぞ。

 純白の悪魔が、血で染まるのも、そう遠い、未来では無いな……。



「ローバよ。君の息子の死は、不幸な事故であった。反抗的な者が多く、我が家臣達は、ヒステリックに成っていたのだ。私の意見を聞かず、勝手に、ローフを殺してしまった!彼等も、忠臣だ。どうか、許してやって欲しい」

 第二回、南北対話……。

 ヨセフは、ローバを呼び、下らん戯言を、恥ずかし気も無く、披露する。

 ローバは、怒りの形相で、ヨセフを睨む。

 聞いていた多くの者が、ヨセフには、未来が無いと、悟ったであろう。

 ローバは、蔑んだ目で、ヨセフを睨み、

「言いたい事は、それだけですか……?貴方を、王と仰いでいた頃の、私を思い出すと、羞恥心で、気が狂いそうになる!これ以上、貴方の戯言を、聞く気には成れない!我が、第二の故郷、エネスへと、帰らせて頂きます」

「ま、待ちたまえ!部下の過ちを、王である私が、代わりに、謝っているのだぞ!君は、何とも、思わないのか?」

「何も思わない……?」

 ローバは振り向き、般若の形相に変わる。

 流石に、狂ったヨセフでも、その怒りを、察したのだろう。息を呑み、震える足で、一歩後ろへと、後ずさる。

 それでも、構わず、一歩、また一歩と、ローバは、力強い足取りで、ヨセフに、にじり寄ってゆく。

 ヨセフの家臣が、慌て、間に入る。

 ローバは、力任せに、その家臣を、なぎ倒し、

「ふん!ジャショウ様に頂いた力で、貴方を殺す事は、容易な事だ!しかし、私は、そうはしない!貴様とは、違うからな!さっさと、ヨーレス様に、その地位を、譲る事だ。南スターリーに、未来は無いぞ!」

 ローバは、それだけ言うと、ヨセフに背を向け、歩き去って行く。

 ヨセフは、怒りと恐怖に震え、

「そ、それが、王に対する態度か!!裏切り者の分際で!私が、寛大にも、罪を不問とした事を、分かっているのか!!本来であれば、この場で、斬り捨ててやるところだったのだぞ!!」

 ヨセフの戯言にも、ローバは一切相手にせず、振り向く事も無かった。

 ヨセフに、ローバを、斬れる筈が無い。

 物理的にも、状況的にも。

 南スターリーは、賢臣が殺され、無能の力で、統治されている。

 既に、追い詰められているのだ。

 ヨセフは、北スターリーの人材を、強く欲している。

 ヨセフは、愚かだが、馬鹿では無い。そして、人を見る目もある。

 故に、ローバ達を、必要としているのだ。

 南スターリーは、多くの血を、流し過ぎた。

 今の人材では、修復できぬほど、荒廃している。

 ヨセフ・スターリー!

 壊れたモノは、国だけだと思うな!

 人々の信頼も、賢臣達の忠誠も、全て、お前が、壊したのだ!

 ヨセフ・スターリー!

 最早、南スターリーの、崩壊は、止める事など、出来はしないぞ……。


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