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天翔雲流  作者: NOISE
降りかかる火の粉
1790/1865

届かぬ背を追い……。

 はぁ……。

 思った以上に、ヨセフの奴は、心が、追い詰められている様だ。

 セナとルビア。それとお姫様ズが、エネスの街に、避難して来た。

 ヨセフの奴は、ヨーレスと共に軍を動かし、大規模な、貴族狩りを決行した。

 皮肉な事に、この大粛清が、鬱憤を貯めた、スターリーの民達の、支持を集めている。

 三日間の、血の、大粛清……!

 罷免されていた、貴族達も、馬鹿だった。

 私兵の解隊を拒み。減俸された事を不満に思い、一部結託し、謀反を、企てたのだ。

 しかし、腐っても、大国スターリー。

 ヨセフの情報網は、そんな企みを、見逃す筈が無かった。

 何食わぬ顔で、剣を忍ばせ、謁見の間に入って来た貴族を捕縛。その後は、凄惨なモノであったと聞く。

 情報を集めていた、モヤミも、眉をひそめて、報告している。

 スターリーの街の城門は、固く閉ざされ。捕縛された貴族は、最も残酷な手で、拷問されて、殺された。

 そして、そこから、芋づる式に、反乱者を特定。ヨセフは、自ら剣を取り、命乞いする者も容赦なく、殺して行ったと言う。

 十を超える貴族が、この事件に関わり、一族もろとも、殺されたと言う話だ。

 死体は、広場に並べられ、民達は、嬉々として、その死体に、石を投げつけたと聞く。

 見せしめとしては、残酷過ぎる、所業に思える。

 しかし、ヨセフは、そうせざる、おえなかった……。

 全ては、今までの、ヨセフの優しさを、当然と思い、増長した、貴族達に、問題がある。

 王に、剣を向け、脅そうとした……。

 ヨセフらしからぬが、当然の報いだ。

 何度も、更生するチャンスを与えられた。

 何度も、引き返す、チャンスがあった。

 しかし、奴等は、ヨセフを侮り、家族の命まで、奪われる結果を選んだ。

 これは、奴等の選んだ、選択の答えだ。

 誰も、同情しない。

 誰も、ヨセフを、非難しない。

 それでも、やりきれないモノが有る。

 ヨセフに、そうさせてしまったのは、俺達の所為だ。

 純白が、赤へと変わり、黒へと変わる。

 ヨセフは、鮮血を浴びたまま、玉座に座る。

 大切なモノを捨てでも、守って来た者達の裏切り……。

 ヨセフの怒りは、如何程のものか?

 ああ、ヨセフ……。

 強くあれ……!

 己が怒りに、吞まれてしまえば、人に戻れぬぞ……。

 ああ、ヨセフ……。

 その、心の闇を、飼いならしてこそ、誠の王に成るのだ。

 早く、王に成れ!

 ヨセフ!

 今は、涙を流し、その血を拭え!

 スターリーに、新王が、誕生するか?

 薄情だが、俺は、エネスの街から、静観させてもらうぞ……。



 裏切りと陰謀……。

 前王、ヨルムとて、仲間であった者達の、多くの屍を超えて、スターリーの玉座を、守り通したのだ。

 サルスフォードに始まり、人間至上主義者、ラクシャ信者。その他、多くの裏切りに会い、それを、乗り越えて来た。

 ヨセフ……。

 君は、それ等に目を背け、今まで、逃げて来たのだ。

 絵本の様に、現実は、美しくない……。

 君の玉座を狙う者は、多く居る。

 君は、戦わなくては、成らないのだ。

 君が、再び、顔を上げ、その玉座で、純然と輝くのであれば、俺は、君の為に、一振りの剣と成ろう。

 血にまみれた俺は、そんな事しか、してやれぬからな……。

 久々に、御館様の背を、思い出した。

 あの方も、一人、多くの者達の前に立ち、大きな裏切りに、立ち向かった。

 死してなお、人々を、守ろうとした。

 未だ、届かない、御館様の背。

 俺は、無意識に、手を伸ばす。

 しかし、決して届かぬ……。

 一筋の涙が、頬を伝い。ふっと、我に返る。

 下を見れば、悲しそうな顔の、セナの姿が。

 セナは、俺の足に抱き着き、

「ジャショウ、泣いてるの?ポンポン痛い?」

「セナ様……」

 ヨセフ譲りの、優しい子だ。

 俺は、腰を屈め、セナを、優しく抱きしめる。

「セナ……。強く成りなさい。お爺様や、お父様の様に、悪者に負けない、強い、王に成って下さい」

「うん!セナ、強い王様なる!ジャショウみたいに、悪者退治する!」

「ははは!その意気です!さあ、センカ達が、セナの事を、探している様です。一緒に、参りましょう」

 俺は、セナを抱き上げ、歩き出す。

 ヨセフもまた、泣いているのだろうか?

 無性に、ヨセフの笑顔が、懐かしい。

 また、何時か、笑い合い。二人で、杯を交わす事が、出来れば良いな……。


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