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天翔雲流  作者: NOISE
降りかかる火の粉
1788/1793

純白

 再び、スターリーの街から、多くの民が、エネスの街に逃れて来た。

 今回の事件で、ほどほど、貴族に、愛想を尽かせたのだろう。

 一応は、マルスさん達衛兵に、厳重な、警備と審査を、行ってもらっているが……。

 万が一にも、今回の事件の遺族が、復讐を企て、紛れ込まぬ様に。

 取り敢えず、今のところは、問題無さそうだ。

 しかし、立ち直ったスターリーが、再び、傾き始めている。

 民達とて、馬鹿では無い!

 考える頭がある。

 突き動かされる、心がある。

 一度、疑念が生まれれば。理想とする世界が在るとすれば。そこへと、逃げてゆくだろう。

 そこが、エネスの街だ。

 そして、エネスの街に来て、確信する。

 こここそが、理想郷……!

 一人の民が謳えば、百の民が、その後に続く。

 最早、しばらくの間は、歯止めが効かぬだろう。

 アルブレッドから、今の、スターリーの惨状を嘆く、手紙が届いた。

 ヨセフは、自分の弱さを恥じ。鬼へと変わったと言う。

 罷免で済ませていた貴族を、追い詰め。少しでも、反抗すれば、誅殺する。

 スターリーの街では、本当の、粛清の嵐が、吹き荒れているとの事。

 アルブレッドも、嫌気がさし。早く、エネスの街で、余生を暮らしたいと。

 遂に、スターリーの街も、限界を迎えた様だ。

 王族の、霊廟を守る、アルブレッドですら、根を上げているのだから。

 この、粛清が終わった後、スターリーには、何が残るか……?

 三千人の命の対価に、何人、何十人、何百人の、貴族とその家族が、殺される事と成るか……?

 民達を、踏み止まらせ。民達に、納得してもらうには、多くの血が必要だ。

 最早、形だけの粛清では無く。身を切り、骨を断ち、その血を流さぬ事には、生まれ変わる事は出来ない!

 スターリーの、混迷は、まだまだ、続くだろう。

 その間も、エネスの街は、大きく発展する。

 そして、人々は、届かぬ光に、身を焦がす事と成ろう……。

 全ては、ヨセフの悪手だ。

 前にも言ったが、スターリーの街が、多くを望めば、必ず、破綻する。

 ヨセフも、アルブレッドを始めとする、賢臣達も、それは、よく理解していた。

 しかし、ヨセフの甘さよ……。

 それが、理解出来ず、罷免された、佞臣達の力を、奪う事はしなかった。

 過去の栄光を、慈しみ。今の愚者に、恩情を与えてしまった……。

 これは、優しさでも無く。甘さを超えて、愚かな行為だ。

 今頃、ヨセフは、自らの愚かさに気付き、悶え、苦しんでいるだろう。

 また、最後の一歩で、踏み外してしまった。

 この血の粛清が、スターリーの未来を、繋ぎ止めてくれれば良いが……。

 望まなくとも、俺は、人々の、希望と成ってしまう。

 ヨセフよ……。

 今は、自らの愚かさを恥じ、悶え苦しめ。

 悶え苦しみ、乗り越えろ。

 三千の命の重さは、計り知れぬぞ。

 俺もまた、何千、何万、何億の血を浴び、今の地位に居る。

 お前は、一滴の血が目立つほど、綺麗過ぎたのだよ。

 王の玉座は、決して、美しくない。

 血まみれた、不浄の椅子よ……。

 ヨセフよ……。

 その椅子に座る、覚悟を見せよ……。


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