ギリギリの一線……!
やれやれ……。
だから、短絡で、お頭の弱い奴は、嫌いなんだ……。
ヨセフの視察を見計らい、私兵を、スターリーの街から出し。ヨセフの帰還に合わせて、兵を率いて、エネスの街に、宣戦布告した者達……。
前王、ヨルムも、居ると言うのに……。
貴族の数は、三名か……。
総戦力、約三千……。
自分達の、受け入れを求め、口上を述べている。
話に為らぬな……。
俺は、一の門の後ろに、兵を控えさせ、魔導砲の照準を、愚かな軍隊に、向けさせる。
四門の魔導砲は、大気中の霊力を集め、強大な魔力に、変換してゆく。
俺は、静かに笑い、
「放て!!」
エメル師匠の、エレメンタルブラストを、彷彿とさせる、巨大なレーザー砲!
大地をえぐり、たった一撃で、半数以上の兵を、蒸発させる!
混乱する敵陣に、空中から、飛竜部隊が、爆弾を、投下してゆく。
空中からの爆撃で、敵兵は、成す術無く、ミンチに成ってゆく。
これじゃあ、訓練にも成らないな。
飛竜部隊は、空中で旋回し。一の門から、精鋭歩兵が、一気に、敵に襲い掛かる!
最早、戦いなどでは無い!
虐殺だ!
一兵残らず殺され、俺の下には、三つの首が、届けられた。
愚かな奴等だ。
俺は、興味無く、首を投げ捨て、
「そのゴミは、スターリーの街に送り、ヨセフ国王陛下に、報告してくれ。今回の様に、力技で来ると言うなら、我等は、容赦しないと」
「はっ!その様に、伝えてまいります!」
「やれやれ……。ヨセフも、相当、怒るだろうなぁ……。ヨセフの留守を狙い、兵を動かし、この様な、暴挙に出るとは……。ヨルムの親父にも、一筆したためてもらおう」
所詮、この程度……。
ヨセフの奴も、これからは、徹底するだろう。
愚かな貴族は、罷免するだけでは無く。兵も、取り上げるべきだ。
無駄な血を、流し過ぎたな……。
これが続けば、エネスの街と、スターリーの街に、大きな溝が生まれる。
この兵達にも、家族が居ただろう。
この様な戦い、憎しみだけしか生まない。
最悪、同じ国内だと言うのに、スターリーの街とは、貿易を、中断する必要も、出てくるかもしれぬな……。
案の定、ヨセフは、大激怒。
漸く、エネスの街と、建設的に、話し始めた矢先に。
その上、勝手に、兵を動かし、戦争を始めようとした。
そして、その街には、前王ヨルムが。
とてもじゃ無いが、今まで通りの裁きで、許す事は出来ない。
ヨセフもまた、兵を動かし、愚かな貴族達の館を包囲。
その家族も、容赦なく、処罰した。
その後、罷免された貴族は、兵を持つ事を、固く禁じ。強制的に、兵を取り上げた様だ。
そして、大幅な、減俸……。
貴族達は、生活もままならず、悲鳴を上げている。
それでも、ヨセフの怒りは、冷め止まず、
「今回の事件で、兵と言う形で、巻き込まれた民を悼む。今回の主犯は、あの三人の貴族にあり、今後、貴族の暴走に、巻き込まれない様に、民達に、警告する!王命無き戦に、正義は無い!それを知りながら、愚かな貴族に従う者にも、今後は、一切の慈悲も与えぬ!」
「「「はっ!!」」」
やれやれ……。
ヨセフは、相変わらず、詰めが甘い。
俺は、イヴの映し出す映像を、ヨルムとフィールと、眉をひそめながら見ている。
ヨルムは、深々と、ため息をつき、
「相変わらず、あ奴は、人に甘すぎる!あ奴の美点である優しさは、既に、凶器だ。愚かな貴族を罷免して、漸く、目を覚ましたと思ったが……。力を与えたまま、放置していたとは。全てが、後手、後手。王としては、失格だな。儂も手紙で、強く抗議したよ。儂等の警告を、ちゃんと聞いていたのかと!スターリーの街の問題は、スターリーの街で、解決せよと!これでも、分からぬと言うなら、王の座を、誰かに、明け渡すべきじゃ」
ヨルムは憤り、吐き捨てる様に、ヨセフを非難する。
フィールも、悲しそうな顔で、
「あの子の優しさは、私達の、誇りでした。しかし、今は、愚かだとしか、言いようがありません。三千の命の重さ……。この代償を、あの子は、償う事が出来るのでしょうか?これは、もう、優しさでは無く、ただの甘えです。エネスに甘え。ジャショウ、貴方に甘え。これでは、小さな子供と、変わらないでは無いですか……」
やれやれ……。
ヨセフよ……。
両親を悲しませ、お前は、何をやっているのだ?
視察、視察と、エネスの街に目を奪われ。自分のお膝元が、おろそか過ぎる。
今回の一件で、スターリーの街は、しばらく、荒れるだろう。
ギリギリのところで、ヨセフが、今回の事件は、貴族達の責任だと、発表し。矛先が、エネスの街から逸れたが……。
次に、同じ様な事が起これば、場合によっては、スターリーの街と、エネスの街は、同じ国同士なのに、戦争に成るぞ……?




