理想
「ジャショウ!山の上に、大きな家が建った!」
「ん?セナ、よく分かったな♪あれは、悪者が、この街に入って来ない為の、お家だよ」
「悪者、退治するの?」
「そう!やっつけちゃうんだ♪」
「凄いねぇ♪」
セナは、俺に抱っこされながら、山の上の砦を、嬉しそうに見上げる。
ヨルムが、カラカラと笑いながら、俺の横に来て、
「また、凄い物を、創ったのう。ここから見ただけでも、難攻不落の、砦じゃな。本当に、スターリーと、戦争する気じゃ、あるまいな?」
「はぁ……。そんな、面倒臭い事を、する筈が無いでしょう?スターリーを追われた、元貴族達が、鬱陶しいのですよ。マルスさん達も、苦労している様です。いい加減、諦めて欲しいのですが……」
「まあ、それが分からぬから、ヨセフの奴に、追い出されたのだろう。お前や、お前の周りに、集まる者達が、飛びぬけているだけじゃ。それも、理解出来ない程の才能で。ヨセフには、苦労させてしまったな。主だった家臣は、儂と一緒に、隠居してしまったからな」
「まあ、漸く、重い腰を、上げた様ですけどね。このままじゃ、スターリーは、停滞……。いや、退化してしまいますから」
「なかなか、身を引くと言うのも、難しい事だのう。ヨセフには、もう少し、経験を積ませてやるべきだった。なまじっか、聡明だったが故に、任せてしまったが……。あれは、理想が強すぎる。それに、人を、疑うと言う事を知らない。まさか、愚かな貴族を庇って、お主や、ガッツ達を、追い出してしまうとはのう……。漸く、目を覚ました様だが、今更、慌てた所で、どうにもなるまい。我が子ながら、実に情けない!今日まで、国を守り、世界を守って来た英雄を、切り捨ててしまうとは!儂等は、お主の、味方じゃよ。万が一……」
「親父、そこまでだよ……。俺は、どんな事が有っても、ガッツ達、民を守るが。ヨセフ達とも、戦うつもりは無い!その為に、兵を鍛え、防御を固めているんだ。戦争する為じゃ無い!戦争を防ぐためにな……。この立場に立った以上、綺麗事だけじゃ、どうにもならない事がる。少なくとも、親父だけには、その事を、理解していて欲しい。俺にも、理想がある!けど、その為には。ガッツ達の、笑顔を守る為には、泥を被る必要があるんだ。俺は、それを、決して、躊躇わない!俺の理想の為に!ガッツ達の、笑顔の為に!何時か、ヨセフにも、この思いを、理解してもらいたいな……」
「済まないのう。我が息子よ!あ奴は、綺麗に、育て過ぎてしまった……。清濁併せ持ち、それでも、純然と輝くお主に、あ奴は、無意識に、劣等感を抱いているのだろう。お主こそ、王の器であるな」
「ははは……。俺は、王などでは、ありませんよ……。今も昔も、無様に踊る道化。客を笑わせ、無様に踊る。素顔も見せぬまま、幕が下りれば、忘れられる……。ただ、それが良い。俺は、それぐらい、あっさりした生き方が、性に合っていますよ」
「ははは!ヨセフ同様、お主も、自分が、分かっていない様じゃ!お主こそ、千年もの先まで、人々に、語り継がれる、英雄よ!」
「はぁ……。それは、面倒臭いな」
「ははは!その無欲が、ヨセフの心を、惑わすんじゃよ」
やれやれ……。
人の理想は、数知れず……。
なかなか、自分の思うようには、成れないものなのだなぁ……。




