お目付け役……。
大物が、二組、エネスの街に、移住して来た……。
一つは、ブティック・ラクシャの、マリアさん達。
ライム達に護衛され、エネスの街に、本拠を構える事と成った。
もう一つは……。
「ジャショウさん!」
「ジャショウ、フィルス達も、今日から、ここで暮らす……」
優香の居た村、イール村……。
イミルとフィルスの故郷だ。
フリュクベリ商会の手伝いもあり、村人総出で、移住して来た。
先ず、祖先の墓を、集合墓地に移し。イール村の住民の為に、家と、織物を作る工場を、用意する。
マリアさんは、ガルガトさんの助けもあり、ラクシャブランドの、工場の立ち上げ。
イール村も、俺の娘達の助けもあり、織物工場を立ち上げ、多くの人を雇い、生産体制を確立した。
エネスの街に、巨大ブランドが、二つ、仲間に加わったと言う事だ。
ラクシャブランドに、イール織物。
ガルガトさんや、俺の娘達と、切磋琢磨し、良い仕事をしてくれる。
そして……。
「ジャショウ♪お姉ちゃん達も、今日から、この街で、冒険者をするから♪」
「うむ。キリカさんが、子羊の嘶き亭で、働かないかと、言ってくれた」
「うむ。我、ジャショウ達の、助けと成る」
「うむ!わっちも、ここで、頑張るぞ♪」
「アイリーも、頑張る♪」
ああ……。
トラブルメーカーが、また、揃ってしまった……。
メロとキララは、再会を喜び、アイリーも連れて、我が城へと、行ってしまった……。
こいつ等の部屋も、用意してやらなくては為らないのか……。
ライムは、当たり前の様に……。
リーフとキョウカは、遠慮しながらも、やはり、当たり前の様に、城へと入って行ってしまった。
キッカが喜び、ライム達を、案内している。
俺は、ネムを呼び、
「済まないが、新たな家族だ。本当に済まないが、部屋を、五つ用意してくれ」
「畏まりました。元気の良い家族が、増えましたね」
「ああ、騒がしくなるぞ……」
俺は、目眩を覚え、天井を見上げる。
やれやれ……。
また、騒がしくなるぞ……。
また、ヨセフに呼ばれた……。
その影には、貴族が居るな。
俺は、ヨシカを連れて、王城へ。
謁見の間に通され、臣下の礼をとる。
最早、形式だけなのだが……。
ヨセフが、入場し、頭を上げる。
「ジャショウ君、また、忙しい時に呼び出して、申し訳ないね」
「いえ。本日は、どの様な、御用件で?」
「うん、実はね……」
ヨセフが、困った顔で、口籠ると、一人の貴族が、
「ジャショウ・シルフィール!貴殿に、忠誠を証明する為、人質を要求……」
スパン!!
「あ?なんか言ったか……?」
俺は、怒りの形相で、首の無くなった貴族を睨む!
人質の要求……?
謁見の間が、騒然となる!
貴族が一人、何の躊躇いも無く、殺されたのだ。
俺は、一人一人の、貴族を、値踏みする様に見ながら、最後に、ヨセフを睨む。
ヨセフは、苦笑を零し、貴族の首を、横に、蹴り捨てる。
肩をすくめ、
「ジャショウ君、せっかち過ぎだよ。しかし、この男も、私の横に置くには、愚かな男であったね。勿論、君が、人質を、差し出すなんて思っても居ないよ。そんな、要求をすれば、スターリーは、滅ぼされる。ゴミ一つの首で済んで、本当に、良かったよ」
「こ、国王陛下!?」
貴族達は、ヨセフの冷笑に恐怖し、息をのむ。
しかし、ヨセフは、笑ったまま、
「ほら。断られるのは、分かっていた事だろう?本題は、これから……。発言を許すよ。ジャショウ君も、短気を起こさず、最後まで、聞いてやってくれ」
「はあ……。まあ、別に良いでしょう。聞くだけなら、ただですから」
誰も、助けてくれない……。
俺の、逆鱗に触れれば、一瞬で、殺される。
そして、それは、黙認される。
貴族達は、必死に言葉を選び、
「と、当然、我等が追い出したのだ。人質など、要求しない!あの男が、我等の言葉を無視し、勝手に言った事だ!本当だ!我等からの要求は、エネスの街が、反旗を翻さない様に、信用出来る者を、エネスの街に、受け入れてもらいたいのだ!」
「あ?貴族は、要らないと、言っているだろう?それに、その者達の、命は、保証出来ないぞ?」
「そ、そこを何とか!」
「まあ、一応聞くが、何名だ?」
「二、二十名程……」
「阿呆か?一人でも邪魔なのに、二十名も、預かれるか……。まあ、取り敢えず、聞くが……。そいつ等の、衣食住と給料は、どうするつもりだ?」
「そ、それは……。ジャ、ジャショウ様の麾下に加わるのだ。そちらが、出すのが、筋と言うモノであろう。それで、謀反の兆し無しと、保証されるのだ、安い物だろう?」
「下らん!俺達は、帰る!」
俺とヨシカは、鼻で笑い、ゆっくりと立ち上がる。
貴族達は、慌て、引き留め様とするが、
「あははは!君達は、本当に、無能だねぇ。そんな要求、今更、通る筈が無いだろう?」
ヨセフが笑う。
そして、ため息をつき、
「ジャショウ君……。この者達の、腹積もりは、気に入らないが……。言っている事は、正直、同意出来る。君達に、謀反の兆しは無いが、保証が欲しい。故に、三名の、シルフィール家への、入籍を、認めて欲しい」
「三名……?」
さて、三名とは、いったい誰だ?
ヨセフが、自信を持って、推薦する者達だ。悪い奴等では、無いと思うが……。
謁見の間の外に、見知った気配が、確認出来る。
成程な……。
厄介だが、断れない人物達だ。
ヨセフは、俺の顔を見て、にっこり笑う。
それと共に、謁見の間に、三人の人物が、入場する。
「ジャショウよ!儂等じゃ!文句は、あるまいな?」
「ヨルム様、フィール様、それにアヤメ……」
「ジャショウ君、済まないね……。父上達が、自分達を、あっちに行かせろって、五月蝿くって……。前国王陛下と王妃が、お目付け役であれば、誰も、文句は言えないだろう?アヤメちゃんは、一応、護衛と言う事で」
「はぁ……。分かりました……。この三名なら、問題無いでしょう。三人共、よろしいのですね?」
ヨルム達は、にっこり笑う。
ついでに、
「何だ?その汚いモノは!謁見の間から、さっさと片付けろ!」
「はっ!」
ヨルムは、貴族の死体を指さし、兵士達に、片付けさせる。
そして、ニコニコ笑い、
「さあ、早く、エネスの街に行くぞ!」
「ふふふ……。今日中に、エネスの街で、家具を、注文しなくちゃ♪アヤメちゃんの分も、私達が、買ってあげますからね♪」
「み、御心のままに!」
やれやれ……。
また、エネスの街は、お祭り騒ぎになるぞ……。




