居場所など無いのだよ……!
視察の日……。
俺は、城の展望台から、街を指さし、淡々と、街の発展を、報告してゆく。
丁度その時、
「失礼します。兄上、御無沙汰しております」
「おお!ヨシカか!随分、活き活きとしながら、働いている様だね?」
「ええ、ここでの仕事は、やりがいが、有りますから……。民一人に至るまで、皆、勤勉で、聡明。日を追う毎に、エネスの街は、進化してゆきます。お取込み中、失礼ですが。ジャショウ君に、報告を」
「ああ、私達の事は気にせず、話すと良いよ」
「はっ!」
ヨシカは、ヨセフに一礼し、俺の横に立つ。
北を指さし、
「ジャショウ君。北部の、区画整備が、終了しました。しかし、現状の、人口増加を考えますと、予てよりの、計画を前倒しにし。可能な限り、土地を、広げてしまうのが、得策でしょう。それから、漁業組合の方々が、人工的な、浮島を創り。そこを起点に、海産物の養殖に、着手し始めた様です。既に、卵の孵化。稚魚の飼育は、順調に、進んでいるとの事です。来年以降が、楽しみですね」
「そうか……。北側の拡張は、白翼商会を交えて、一度、話し合う事としよう。しかし、国王陛下の言う通り、ヨシカは、随分と、張り切っているじゃ無いか」
「ははは!重治殿と、兼続殿が来て、うかうかしていると、私の仕事が、無くなってしまいますよ。それに、彼等は、私を含めて、皆の、良い刺激と成っています。民達も、よく慕っていますし。ジャショウ君の周りには、賢人が、多く集まる!この調子で行けば、一年と掛からずに、私達の計画の半分は、完遂する事と成るでしょう」
「ん!まあ、また、突拍子も無い案が、浮かび上がるかもしれないがな」
「望むところです!」
「「ははははは!」」
ヨシカも、白い歯を見せ、笑う様に成った。
ヨセフは、恨めしそうな顔で、
「ジャショウ君達……。まだ、この街は、半分も、完成していないと言うの?既に、スターリーの街より、随分と、大きい様だが」
「兄上……。今更でしょう?ジャショウ君が、独立したと聞きつけ。多くの人々が、この街に、集結し始めております。現状で、既に、二十万を超え。多くの者達は、自らの持てる技を、この街で、磨き。商人達は、各国から集まり、商いが、新たな商いを生み。大きな市場と、化しています。漁業と共に、農業も、畜産も、順調!受け皿は大きく、まだまだ、人を、養う事が出来ます!兄上達も、視察だか知りませんが、こんな所で、油を売っていないで、早急に、スターリーの街を、立て直すべきかと」
ヨシカは、捲し立てる様に言い、家臣達を、一瞥し、目を背ける。
ヨセフは、再び、深々と、ため息をついた……。
やれやれ……。
これで、漸く、分かっただろう?
お前達に、居場所など無い!
さっさと戻って、スターリーの街を、どうにかするのだな……。




