全てが今更
念の為に、ヨセフの家臣達には、監視を付けた。
あれだけ、脅してやったが、半分も、理解しているとは思えない。
会食を済ませ、早々に、部屋に、押し込めてやった。
それで、漸く、ヨセフも、笑顔を見せる。
「済まなかったね、ジャショウ君。彼等が、援助を断ったジャショウ君は、意地を張っているのだと言って。視察をして、こちらから、歩み寄ってやれば良いと、妄言を、吐き続けるからねぇ。これで、彼等の、当てが外れたと言う事か。それに、幾ら、馬鹿な彼等でも、自分達に向けられた敵意に、気付いた筈だよ」
「だと、良いですが……。エネスの街の人口は、未だに、衰える事無く、増え続けております。悪いが、貴族の御守までは、やってられませんよ?万が一、我が街に来たとしても、脅しでは無く、命の保証は、出来ません」
「やはり、無理な話かい?」
「何を、今更……。エネス地区であった頃からの、彼等の暴挙。そして、この街が生まれる経緯。何を曲げれば、貴族の受け入れなど、罷り通ると、お思いですか?」
「ははは……。やはり、どう曲げても、無理な話か……」
ヨセフは、深々と、ため息をつき、酒を煽る。
丁度、そこに、
「ジャショウ!パアパ来た!」
小さな、お客様の様だ。
セナが、ヨルムとフィールと、手を繋ぎ、部屋へと入って来る。
驚くヨセフ。
「セナ!それに、父上と母上!」
セナは、ヨルム達の手から離れ、ヨセフの胸に。
ヨルムとフィールは、ニコニコ笑う。
ヨルムは、意地悪く、
「ヨセフよ。最近の貴族達は、いい仕事をしてくれるではないか」
「父上……。その様な皮肉を……。笑い事では、ありませんよ」
「ふん。お前は、甘すぎるのだ!少しは、ジャショウ達の、苦労を考えろ!これ以上、迷惑を、掛ける気が無いのなら、貴族達に、干渉させない事が、一番じゃよ」
「はぁ……。耳が痛いなぁ……」
久々に、ヨルムに怒られ、ヨセフは、消沈してしまったか。
再び、セナを抱きかかえながら、注いだばかりの酒を、一気に飲み干した。
ヨセフは、盛大なため息をつき、
「参っちゃったなぁ……。これから、あの者達を従えて、どうしたら良いんだ?スターリーは……」
知らんがな。
俺は、ヨルム達と、顔を見合わせ、肩をすくめる。
今更、俺達に、愚痴を零しても、どうにも成らないだろうに……。




