賢王なるか?暴君と成るや?
「お~い、セナ!迎えに来たぞ」
「ジャショウ!」
ここは、スターリー王城。
今日は、毎年恒例の、新年会を、エネスの街の我が城で、行う事と成ったので、主だった者達を、迎えに来たのだ。
セナは、大はしゃぎで、俺に抱き着いて来る。
俺は、セナと抱き留め、ヨセフの方を向く。
少し、痩せたか?
それに、眼光も、鋭くなった。
らしく無いなぁ……。
らしく無い。
俺は、ため息をつき、
「ヨセフよ……。ここが、踏ん張り時だぞ?」
「ああ、ジャショウ君……。分かっているよ。漸く、私にも、必要の無い人間が、見えて来たんだ」
「必要の無い、人間か……」
ヨセフの、言葉らしく無いな。
常に、人を慈しむ、ヨセフの口から、出た言葉だと思えない。
横で、ヨシカとヨーレスが、複雑な顔をしている。
この、ヨセフの心境の変化が、今までの殻を破り、天高く飛翔するか、それとも……。
ここが、正念場だぞ、ヨセフ!
暴君と成るか?
賢王と成るか?
ヨセフだけじゃ無い。
今こそ、スターリー、変革の時。
不浄を廃し。愚かな貴族を、淘汰する。
その過程に、憎しみは、必要無い。
ヨセフよ……。
その瞳に宿る、憎しみを、無くせとは言わない。飼いならせ。
清濁、併せ持ち、誠の王に成るのだ。
袂を分かち、違う道を、歩み始めた俺には、君にかける、言葉は無い。
ただ、願うだけだ。
ヨセフよ、誠の王に成れ。
君は、俺では無いのだ。
切り捨てる事しか、出来なかった俺とは。
貴族を、飼いならし。
貴族を、上手く、利用しろ。
君なら出来る。
人を信じ、人を愛した君なら。
少なくとも一人……。
俺だけは、信じているからな……。
新年会は、我が城で……。
ここなら、馬鹿な貴族も、押し入って、来ないだろう。
そもそも、エネスの街に、辿り着く事が出来ない。
毎年恒例の、大馬鹿騒ぎ!
去年の年末は、エネスの街の立ち上げで、何処の国にも、顔を出す事が、出来なかったからな。
どの国の王族達も、俺を、酒の席に招き、嫌味を言う。
アルテイシアに至っては、俺の耳をつねり、先程から、ねちねちと、小言を言って来る。
景虎の方は、重治と兼続に、近況報告を、聞いている所だ。
皆、この街の情報を知りたく、必死に成っている。
それもそうだろう。
僅か、数か月で、突如として、巨大な街が、世界の盤図に、現れたのだから。
その内容も、他の街。いや、他の国々と比べても、半世紀以上、進んだ文明を、有している。
モダンな建造物が、街に建ち並び。それを、彩る様に、魔法装置が、ふんだんに、使われている。
ロブス、監修の下、五階建て以上の、高層ビルが、立ち並び。ネイルの灯が、今までの研究を、惜しげも無く、披露し。自動階段。エスカレーターや。自動昇降機。エレベーターを、それ等の建物に、設置してゆく。
道には、等間隔で、魔法の街灯が、設置されている。
エネスの街の、近未来的な内装は、見る人々を、魅了する。
アルテイシアは、余程、この街が気に入ったのか。ギリセアのアリネも、大規模な、改築工事を、俺にやれと、五月蝿いのなんのって……。
当然、今の俺には、そんな余裕は無い!
丁重に、お断る!
また、癇癪を起す、アルテイシア。
俺の体を、激しく揺らし、
「あんた、少しは、私の国でも、働きなさいよ!」
「はぁ……。お前の我が儘で、エステール学園の、生徒をやっているだろう?各国での、騎士としての仕事も有るし、勘弁してくれよ」
「何言ってんのよ!この街だって、半年もかからずに、ここまで、完成させたのでしょう?これは、命令よ!アリネも、こんな街に、発展させなさい!!」
「ああ、五月蝿い……。この街だって、別に、俺一人で、創り上げた訳じゃ無い!仲間達が、頑張ったからだ!家の技術者達を、舐めるんじゃねえ!」
「だったら、エネスの街は、全員、ギリセアに、移住して来なさい!!」
「無茶を言うな……」
アルテイシアの我が儘に、他の王族達が、目を光らせる。
景虎は、神妙な顔で、
「うむ。為らば、エネスの街は、倭国に移住するのが、良いだろう!」
「いやいや、ハルスの国に!」
「ジャショウ様!私と結婚し、千年王国を創りましょう!」
「カ国も、ジャショウ様を、受け入れる準備が出来ております!」
「ジャショウよ!ミネは、ジャショウ達と、もっと側で、一緒に居たいぞ!」
「ムストゥーンの民達も、ジャショウ様が、仲間と共に、移住して下されば、大きな支えと成ります!どうか、ムストゥーンへ!」
ああ……。
七大国が、スターリーの悪手に乗じて、俺達を、取り込もうとしている。
ヨセフ達が、慌てた様子で、景虎達を、宥めている。
やれやれ……。
ヨセフがまた、荒れるだろうなぁ……。




