閑話 エネスの輝き
「し、失礼致します!ボグ男爵、横領が発覚!ヨセフ国王陛下の怒りを買い、失脚いたしました!」
「またか……。ボグもボグだが、最近の、ヨセフ国王陛下は、暗部を使い、徹底的に、貴族達を、間引いている。エネス地区と言う、財源を失ったが。ただ、一地区の事だぞ?まだ、国に、余裕はある筈だ。こうまでして、古くから仕えていた忠臣を、排除していれば、それこそ、国が成り立たなくなる!」
男は、吐き捨てる様に、ヨセフへの不満を、言葉に出す。
しかし、この男の言葉は、愚か者の、言葉であろう。
貴族達は、どこか、ヨセフを侮り、多少の横暴は、苦言のみで、許されると思っていた。
しかし、最近のヨセフは、一切の容赦が無い。
この男の名は、サバル……。
もう、何代かにわたって、スターリーに、忠誠を誓っていた者の、一人だ。
しかし、今と成っては、この男も、堕落した者の、一人にすぎない。
サバルは、恐れているのだ。
彼もまた、ジャショウを疎み。エネスの民を、追放した者の、一人であったからだ。
その上、エネスの民への援助を、ヨセフに対して讒言し、白紙にさせた。
エネスへの、後ろめたさと、底知れぬ恐怖で、サバルは、身震いをする。
「何とかしなくては……。くそっ!エネスには、最早、干渉出来ない。何とか、あの男を、排除出来れば……。ジャショウ・シルフィール。あいつは、我等を、滅ぼすつもりか?」
「如何致しましょうか……?サバル様」
「分かっている!」
サバルは、半ば叫ぶように、部下を、怒鳴り飛ばす。
憎々し気に、窓の外を見て、
「金が無ければ、作れば良い。おい!ロフク!ヨセフ国王陛下に、謁見を求めよ!」
「は?はっ!し、しかし、何を、進言されるのですか?」
「決まっておろう!スターリー再興の為に、エネスの商品には、税金を課す!」
「そ、それは、成りません!これ以上、エネスの街に……!ジャショウ様に、関わるのは、止めて方がよろしいかと……」
「うるさい!もう、後に引けるか!!」
もう、後の無い現状に、サバルと言う男は、追い詰められ、狂っていたのかもしれない。
そんな讒言を、ヨセフが。アルブレッド達、他の貴族達すら、認める事は無いだろう。
エネスと言う、支柱を失い、スターリーの街は、少しずつ、壊れてゆく……。
こうして、また一人、哀れな貴族が、その罪を暴かれ、破滅に向かう。
スターリー、変革の時。
ヨセフの改革が、人を傷つけてゆく。
何を成し、何を残すか……?
エネスの輝きだけが、人を惑わし、人を照らしだす……。




