実力主義
年末の、大会議……。
やはり、ヨセフの言う通り、スターリーの街は、死んでしまったのか?
活気に満ちた、エネス地区の跡地は、人は疎らで、閑散としている。
結局、エネス地区の住人は、全員、俺と共に、スターリーの街を見限り、移住したからな……。
貴族の顔ぶれも、随分と変わった。
いや、変わったと言うより、随分と、減ってしまった様だ。
会議室の、張り詰めた空気が、今のスターリーの現状を、よく物語っている。
アルブレッドも、疲れ切った顔で、俺の下へと、やって来る。
深々と、ため息をつき、
「ジャショウ殿。スターリーの街は、もう駄目だ。我等は、どうするべきかな……?」
「アルブレッド殿。ご無沙汰しております。アルブレッド殿が、その様な、弱音を吐くとは、相当、スターリーの街は、苦しい状況にあるようですね?しかし、ローブ地区は、アルブレッド殿の治政で、民達が、踏みとどまっております。そう、悲観せず、視野を広くして、考えましょう。エネスの街と、長距離便で、繋ぐのです。その他、ツアー旅行など考え、他の街への、観光旅行などに、手を伸ばしたら如何でしょう?」
「うむ……。旅行か……」
「ええ、旅行会社を、立ち上げるのです。一度に、多くの客を集め、観光させれば、宿代とかも、交渉次第で、安くする事も出来ましょう」
「成程、成程!面白い考えだ!やはり、エネス地区と、ジャショウ殿を追い出したのは、国王陛下には悪いが、失策であったな!まったく……。このままでは、スターリーの街は、どうなる事やら」
「ははは!そこは、アルブレッド殿達が、頑張るしか無いとしか、私の口からは、言う事が出来ませんね」
「はぁ……。ジャショウ殿にとっては、既に、他人事か……。まあ、仕方が無いがのう。追い出される形で、スターリーの街から、去る事と成りましたからな。我等の諫言も、あの愚か者達の讒言に、かき消されてしまいましたからな。最も、今、窮地に立たされているのは、その、愚かな貴族達だが……」
「その様ですね。随分、貴族達も、減った様に思える。ウルヴア学園も、就職難だと、聞いております。私の所にも、求めても居ないのに、御子息を勧める、推薦状が、ひっきりなしに届いていますよ」
「ふん!まったく、恥も外聞も無い、連中だな!しかし、ヨセフ国王陛下も、これで、漸く、目を覚ましてくれるだろう。愚か者達は、悉く、切られている!戦無き世も、また、実力主義か。弱者は、淘汰される、定めよ」
俺とアルブレッドは、顔を見合わせ、肩をすくめる。
さて、会議が始まる……。
下らない茶番に、付き合うとするか。
俺は、下らぬ讒言は、全て、聞き流す。
どれだけの貴族が、潰れる事と成るだろうな……?




