暴走と崩壊
エネス地区が、暴走する……。
手綱は、貴族達の手から離れ、エネス地区と言う、巨大な市場は、暴走し。質の良い物が、安価で、生産されてしまう。
これでは、物の価値が、暴落してしまう。
由々しき事態だ。
今まで俺が、他地区と足並みを揃え、慎重に、調整していたものが……。
ヨセフの前で、彼等は、何を言った?
俺を非難し、他地区と、足並みを揃え、スターリーを発展させてゆく。
無能な彼等が、そのバランスを、崩してしまったのだ。
全てが、台無し。
ガッツ達に、悪気があった訳では無い。
ガッツ達が、無思慮だった訳では無い。
停滞するエネス地区を、彼等なりに、危機感を募らせ、あの、愚かな貴族達の下で、必死に、努力したのだろう。
先の見えない暗闇を、ガッツ達は、必死に、突き進んで来た。
されど、全体を見るべき領主達が、盲目であったが為に、周りを引き離し、突き進み過ぎてしまったのだ。
これでは、エネス地区だけ、大きくなり、他地区の発展の、妨げと成ってしまう。
ヨセフ達は、烈火の如く怒った。
エネス地区が、完全に、独立してしまう。
何度も言う、ガッツ達に、悪意は無い。
統治者達が、無能な為に、統治者達から、得られる情報が、著しく乏しかったのだ。
故に、ガッツ達は、エネス地区を守る為、必死に、最善を尽くしたのだ。
その事実は、ヨセフ達も、大いに、理解している。
故に、五人の男達は、多くの者達から、大いに、憎まれた。
それこそ、子供から、王である、ヨセフに至るまで、多くの者達に……。
本当に、頭が痛い……。
一度、物の価値が、下落すれば、そう簡単に、元に戻す事など、出来はしないぞ。
他の地区も、生産性と品質を上げて、それに対応させなくては為らない。
そして、少しずつ、物価を、調整してゆく。
今まで、積み上げてきたモノが、音を立てて、崩れ去ってゆく。
まだ、国内の問題として、対応できるが。
このままでは、他国も巻き込み、被害の拡大は、何処まで大きくなるか分からない。
故に、俺とヨシカは、方々を駆けまわる。
他地区を援助し、品質を維持した状態で、生産性の向上を図る。
先ずは、スターリー内の混乱を、鎮静させる。
あの、五人の男は、何処まで、愚かなのだ?
たった二か月で、何もかもが、滅茶苦茶。
まったく、お粗末な、治政だ。
物の品質が上がり、生産性の向上。それが、悪い訳では無い!
問題は、急すぎたのだ。
一国、一地区、されど、大市場である、エネス地区が、暴走すれば、数多の市場が、崩壊する。
俺が、領主であった頃は、他地区の生産能力を計算し、ガッツ達に、ブレーキを掛けさせていた。
産業化を進めていたが、俺が、他国との、顔役と成り、商品を、分散して売る事で、上手く、物の価値を、維持してきたのだ。
それを、奴等は……。
無配慮に、大量生産。物の価値を落とし。他国との繋がりが無く、国内だけで、エネス地区の商品を、循環させてしまったのだ。
それでも、行き場が無く、過剰生産された商品は、その価値を落とし、利益が薄くなる。それを補うために、更に生産。気付いた時には、在庫過多で、ガッツ達を、苦しめる事と成った。
最悪だ……。
何度も言うが、最悪だ。
奴等の目には、国内しか、映っていなかったと言う事か?
ガッツ達の話では、奴等は、反抗的で、俺の事業に、力を貸す、白翼商会、フリュクベリ商会を牽制し。独自で、他国への輸出を、検討していた。
自分達では、他国と、交渉も出来ないと言うのに。
その結果が、国内に、物が溢れ、物の価値が、暴落してしまったと言う。
今、男達は、ヨセフに呼び出されている。
さて、この状況、あの男達は、どう、落とし前を付けてくれるのだろうか……?




