舞い戻った、現実
「パアパ、お帰り♪」
「お兄ちゃん……」
ツクヨとセンカが、俺の下へと駆け寄り、抱き着いて来る。
二人とも、いつも通り、元気だなぁ。
二人は、アルマの存在に気づき、
「センカだよ♪よろしくね!」
「ツクヨ……。お友達に成ろう?」
アルマは、戸惑いながらも、嬉しそうに、
「う、うん♪私はアルマ。アルマ・シルフィール!よろしくね♪」
アルナも駆けつけて来て、四人仲良く、遊び始める。
センカとアルナが、何かを思い出したように、俺の下まで、駆け寄って、
「パアパ!アルマちゃんにも、仲良しの服を買って!」
「仲良しの、髪飾りも!」
「ははは。分かった、分かった」
俺は、子供達を連れて、ガルガト呉服店へ。
ご要望通り、仲良しの服と、何着かの、普段着を、アルマに買ってやる。
そのまま、ケナ国へ。
今度は、ミネを交えて、子供達が、大はしゃぎ。
俺は、アーファとナタンと共に、そんな光景を、温かく見守る。
アルマも、よく笑う様に成った。
一緒の洋服を着て、一緒の髪飾りを付けて、幸せそうに、笑っている。
ふっと、ローセファールを思い出す。
今回は、別れの一つも、する事が出来なかったな……。
ルキウス達は、元気にやっているかな?
俺は、幻に手を伸ばし、儚く笑う。
消えゆく残影に、思いをはせて……。
何時か、輪廻の先で、また、交わう事が出来れば良いな……。
さて、現実と、御対面だ。
三年以上、あっちの世界に居たんだ。
状況整理をしよう。
輪を乱す、馬鹿な貴族は消えた。
各地区、手を取り合い、外国との貿易を見据え、産業革命に力を入れている。
そして、それが軌道に乗り、農業にも、力を入れている。
我がエネス地区も、例に漏れず、他地区と足並みを揃え、農業を、推奨すると。
全体の流れは、こんな感じか?
ここで、もう一押し。と、言いたいところだが、ラグーン殿の、ソドムがある。上手く、折り合いを付けなくては。
俺は、一通りの書類に目を通し、ふぅっと息を吐く。
これで、恐らく、問題無かろう。
漸く、全てが、軌道に乗った。
長い様で、あっと言う間の、出来事だった。
エローラから始まり、多くの仲間を得て、漸く、エネス地区を。スターリーを、比類なき大国へと、押し上げる事に成功した。
後は、後身に託し、静かに、消えゆく定めか……。
多くを望めば、全てを失う。
まあ、許して、貰えないのだが……。
今日も、ヨシカがやって来て、
「ジャショウ君……。何を、悟った顔をしているのですか?言っておきますけど、引退など、許しませんよ?」
「もう、十分、スターリーは、大きくなっただろう?」
「まだまだ、先は続きます!きびきび働きなさい!」
「ふへぇ……」
やれやれ……。
俺の自由は、この現世では、手に入らないのだろうか……?
馬車馬の如く働く俺……。
エローラとアルサに加わり、ナタンもまた、俺の翼と成りて、政の一端を担う。
流石、一国の姫君の、教育係だけの事はある。
エネス地区の情勢を、よく理解し、上手く、立ち回ってくれるな。
活き活きと、働いてくれる。
しかし、まあ、他の者達も、良く働いてくれる。
今の状況を、苦痛に思っているのは、俺だけなのだろうか?
いや、恐らく、俺だけなのだろう……。
新しく、我が陣営に入った若人達も、エルとメアリーが、良く面倒見てくれている。
身分に囚われる事無く、皆笑い、変わりゆくスターリーを、牽引してくれている。
俺が、取り残されてしまいそうだよ。
エローラが、俺の背を叩き、
「ジャショウ君!ぼさっとしない!」
「お、おう……」
「直ぐに、ライス地区の、視察に向かいますよ!」
「あ、ああ……。農業復興の為、大地に、祝福を与えれば良いのだな?」
「それだけじゃありません!あの地区には、ガラス産業を、受け持ってもらいます!工場の視察も、行う事と成ります!」
「はぁ……。俺が、他地区の面倒まで、見なくては為らないのか?」
「当たり前でしょう!さあ、きびきび、働きましょう!」
「はぁ……」
やれやれ……。
地獄だな……。
誰でも良いから、俺の代わりを、務めてくれないだろうか……?




