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天翔雲流  作者: NOISE
神魔王降臨、広がる世界……。
1711/1792

加速する時間

 ハキムが、狂人の如く、喚き散らす。

 あらゆる、負の感情を抱き、ハキムは、人間を止めた!

 ハキムは、生きながら、瘴気に魅入られたのだ。

 神魔王降臨……!

 瘴気が、ハキムの中へと、流れ込んでゆく。

 内外共に、多くの負の感情を抱えたハキムは、妖魔よりも、醜く浅ましい。

 そこに、瘴気が、敏感に、反応したのだ。

 偶然の産物……!

 醜き、狂気……!

 ハキムは、瘴気を受け入れ、醜悪な姿へと、変貌してゆく。

 人間が、生きながら、瘴気を取り込む。

 決して、あり得ぬ事。

 あり得ぬ事が、現実に、起こってしまった。

 今思えば、ハキムは、父を死に追いやり。多くの民を、苦しめて来た。恐らく、随分前から、魅入られてしまったのだろう。

 この世界の瘴気は、魔王然り、確固たる、意志を持っていたのだ。

 神の浄化から逃げる為、一つの、巨大な個へと、進化しようとしていたのか。

 そして、ハキムが、選ばれた。

 己が欲望の為に、肉親をも、道具として使う、浅ましき獣。

 この世界の瘴気が、ハキムの下へと、集まってゆく。

 ハキムは、醜悪な笑みを浮かべ、

「ははははは!!」

一閃!!

 ウルカスムの兵達が、蒸発する!!

「我が絶対!我が真理!愚か者達よ!神と成った私の、裁きを受けよ!!」

 ここまでか……!

 俺は、空間転移をし、ハキムの暴虐から、ウルカスムの者達を、間一髪で救う!

「やれやれ……。人間でありながら、瘴気に魅入られたか……?」

「貴様は……?」

「あ?俺は、アルマの、兄ちゃんだよ」

「貴様は!貴様が!!」

 ハキムであったモノが、怒りに、顔を歪ませ、瘴気の波動を放つ!!

 しかし、俺は、涼やかな顔で、その瘴気すらも、吸収し、

「ふん……。獣風情が、首を垂れろ!!」

「ぐぎゃっ!?」

 無数の刃が、ハキムを、ズタズタに、切り刻む!!

 瘴気が、ハキムの体を、再生させている。

 思ったより、厄介な、化け物だな……。

 ハキムは、肩で息をし、

「貴様が……。貴様がまた、我が野望の、邪魔をするのか!!」

 瘴気が、ハキムを、包み隠してゆく。

 薄れゆく幻影は、憎々し気に、

「我が、絶対なる王!必ず、この世界を、我が手中に、治めてやる……!」

「逃げたか……?」

 俺は、虚空を睨み、ハキムの気を探る。

 ここでは、瘴気に覆われ、気配が探れぬか……。

 やれやれ……。

 これで、敵が、明確に成ったが……。

 厄介な敵が、生まれたものだ……。



 ふむ……。

 厄介かと思っていたが、存外、ハキムが、魔王に成った事は、こちらの益と成ったか?

 いくら、力を持とうとも、無能は無能。

 そして、奴は、臆病だ。

 俺に打ちのめされ、前へと、出ようとはせぬ。

 それ処か、未だ、稚拙な用兵で、策略家気取りか?

 こちらとしては、妖魔達が狩りやすく、助かるがな……。

 他国の勇者達も、漸く、育ち始めている。

 大規模な北勢が、今、まさに、始まろうとしている。

 さて、ハキムよ。どう動く?

 ロスコマンと、アースガルドが前進し。それに続いて、東の国々が、攻勢に出た。

 用兵を知らぬ奴に、何が出来る?

 俺の出番は、もう、無いのかもしれぬな……。



 さあ、今年も、今日で終わりか……。

 俺達は、バスラー孤児院に招かれ、新年を迎える。

 目を擦り、一生懸命、起きていようとする、子供達。

 三歳のアミルも、俺に抱き着き。うつらうつらとしながら、健気に、頑張っているよ。

 ここは、平和で、変わらぬな……。

 俺は、アミルの頭を撫で、

「アミル……。少し寝るか?年が明ける前に、起こしてやるよ」

「いや!アミルも、起きている!」

「そうか……。それじゃあ、もう少し、頑張ろうか……?」

「うん!」

 シャフィカも、大丈夫そうだ。

 リアノンは、アルマとお喋りをして、元気に起きている。

 皆、成長したなぁ……。

 俺は、この世界に、随分と、長居をしてしまった。

 何時か、この子達と、別れる事に成ると思うと、少し寂しいな。

 俺は、一日一日を、大切にしよう。

 この子達の笑顔に見惚れ、俺は、静かに笑った……。


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