崩壊
ウルカスムの内乱……。
ハキムの暴挙で、内政は、混乱状態。外交も、四方を敵に囲まれ、困窮している。
滅びるのも、時間の問題か……?
民達は、ハキムを追い落とし。再び、インスモーンの統治を、切望している。
最早、国として、成り立っていないのだ。
奴に、最早、逃げ場は無い!
俺も、アルマ達の為に、容赦はしない。
それでも、窮鼠猫を噛む。
故に、獅子は、兎を狩るにも、全力を尽くすのだ。
その言葉にのっとり、俺は、ハキムの動きに、細心の注意を払う。
言うて、今の奴に、やれる事など、限られてくるが……。
俺の〝目〟に映るハキムは、日々、酒に溺れ、やり場の無い怒りを、家臣達に、ぶつけている。
そんな家臣達も、ハキムに対して、見切りをつけてしまった様だ。
レジスタンスと、内通している。
それでも、この国が、辛うじて成り立っているのは、妖魔達の脅威からだ。
多くの者達は、日々、妖魔達の猛攻に怯え、必死に対抗している。
そのお陰で、ハキムの首の皮一枚残して、辛うじて、玉座に座る事が出来ている。
しかし!
最早、時間の問題か……。
多くの民は、インスモーンの。シャミラの統治を、強く望んでいる!
哀れな道化に、最後の審判を……!
ハキムを旗印に、妖魔に対し、一大攻勢に出るつもりだ。
その真意は……!
さて、どうなる事かな……?
ハキムは、逃げる事を、許されなかったか……。
父を、そそのかし。妹を、道具の様に使おうとした。
奴は、策略家を気どり、何時も、誰かの影で、ほくそ笑んでいた。
奴の玉座は、仮初の物……。
奴が、何を企み、何を求めていたのか?
結局のところ、誰にも分からない。
ハキムは、戦場に立たされ、家臣達に、一振りの剣を、手渡される。
家臣達は、今までの圧政に、怒りを募らせ、それを、発散するかのように、醜悪な笑みを浮かべ、妖魔達を指さす。
そして、
「国王陛下……!我が国は、あなた様の愚行で、最早、退路はございません!あなた様が、先陣を切り、この難局を、打開して下さい!それが出来ぬと言うのであれば、私達も、民達も、あなた様を、最早、王とは、認める事は無いでしょう!さあ!この剣を持って、妖魔達を、討ち払って頂きたい!!」
「なっ!?貴様等、何を!?」
ハキムは、無理やり、剣を握らされる。
兵達が、せせら笑う。
ハキムは狼狽し、
「だ、誰か!私の味方は、居ないのか!?」
騎士達が、一斉に、剣を、ハキムに向ける!
「さあ!我等に、道を、示して下さい!!」
「なっ!?」
騎士達もまた、既に、ハキムを見限っていた。
ハキムは、怯え、震え、剣を落とす。
周りは、敵ばかり……。
膝をつき、呆然と、
「こんなの、嘘だ……」
誰も許さない……。
誰も助けない……。
ハキムは、落とした剣を、再び握らされる。
「さあ、どうされますか?我等も、鬼ではありませぬ。王位を退くと言われるのでしたら、命だけは、補償いたしましょう。その剣を捨てて、我等に、跪きますか……?」
「き、貴様等!!それが、王への態度か!?父の愚行で、滅びたこの国を!今一度、復活させたのは、この私だぞ!!」
「ふっ……。何を、ぬけぬけと!先王をそそのかし、この国を、滅ぼしたのは、あなたの所業だろう?貴様が一人で騒いで、滅茶苦茶にしているだけでは無いか!!」
家臣達を初め、兵に至るまで、憤怒の顔で、ハキムを睨む!
ハキムは、怒りに震え、真っ赤な顔で、剣を、大地に突き刺し、周りの人間を見回す。
血走った目で、
「私を引きずり下ろし、為らば、この国は、どうすると言うのだ!?貴様等が、この対局を、どう!乗り越え、ウルカスムを、導くと言うのだ!?」
「簡単な事です。今一度、シャミラ様に頭を下げ、インスモーンに、併合させてもらうのです」
「き、貴様等!国を!ウルカスムを、インスモーンに、売ると言うのか!?」
「売る……?ウルカスムを、ここまで、荒廃させたのは、あなたの所業ではありませんか!!我等は、あるべき姿に、戻すだけです!!」
「貴様等!貴様等!貴様等!貴様等ぁ!!」
ハキムは、半狂乱で、喚き続ける。
これは……!
嫌な気配がする!
もしかすると、最悪な事態が、起こるかもしれぬ。
俺も、魔力の目で、傍観している事は、出来ぬかもしれぬな……。




