始まる、街の建設
早朝……。
「ナタン殿。今日は、夜まで帰らず、ニッサの街の、土台を造ってくるつもりだ。済まないが、アルマの事を、頼んでも大丈夫か?」
「お任せ下さい!アルマ様の事は、この爺や、命に賭けて、お守りする所存です!」
「アルマも、ナタン殿の言う事を聞き、良い子で居るんだぞ?」
「はい!ジャショウお兄ちゃん♪」
アルマの笑顔に、俺も、笑顔で返し、優しく、頭を撫でる。
さて、頑張るとしようか……!
俺は、家を後にし、ウーナの下へ行く。
ガキが一人で、街を作ると言う。
ウーナは、俺に騙され。それを、村人達の拒絶と、考えてしまったのかもしれぬ。
憔悴しきった顔で、俺に、頭を下げる。
「申し訳ありません……。私の理想が、妄言の様なものだと、自分でも、分かっております。それでも、実現しなくては、成らない事なのです!今一度、村人達と話し合い、出来る範囲で、実現出来るよう、努力したいと思います」
「あのなぁ……」
仕方の無い事だが……。
もう少し、俺を、信頼して、頑張ろうと思わないのだろうか?
俺は、俯く、ウーナの頭を撫で、
「せめて、一日でも、頑張ってみないか?別に、村人達は、ウーナ様の事を、見限った訳では無いぞ?取り敢えず、他人に頼る前に、自分達で、出来る事を、やろうじゃ無いか」
「は、はあ……」
俺は、ウーナの手を引き、歩き出す。
護衛達も、慌てて、その後に続く。
村から、五百m位、離れた場所。
まあ、ここ等辺で、大丈夫だろう。
樹木が生い茂り、南に目を向ければ、石場が存在する。
俺は、ふぅっと、息を吐く。
錬気が溢れ、俺の体から、無数の影が、現存される。
まあ、簡単に言えば、分身の術の様なものだ。
ただ、各々が、実体を持つ。
その数、優に千体を超える!
驚く、ウーナ達。
俺は、首を傾げ、
「で、領主様、どの様な街をご所望で?五K×五K位の、大きさで良いか?ここ等一帯を、整地したいのだが……」
「えっ!?あっ!は、はい!その位の大きさもあれば、十分、余裕があると思います!」
「そうか……」
俺は、優しく笑い、優雅に、手を振るう!
斬!!
一帯の木々が、音を立てて、倒れてゆく。
そして、それを合図に、影達が、動き出す。
倒れた木々を、木材に変える影。
雑草の様に、切株を、引き抜いてゆく影。
岩を砕き、整地してゆく影。
石切り場へと向かい、石材を用意する影。
全て、俺が、操っているのだが、まだまだ、現存出来そうだな。
初めて使う技故に、一か月の猶予を貰ったが、これなら、一週間もあれば、余裕で、城壁など、完成できる。
半日も掛からず、広大な土地が、見事に整地された。
木材も石材も、創気で、簡単に、加工してしまう。
ただ呆然と、見ているだけのウーナ達。
再び、俺は、首を傾げ、
「さて、土台は、準備出来た。領主様、このまま、城壁も、俺が、創ってしまっても良いのだろうか?」
「は、はい!お任せします!!」
「うむ」
やれやれ……。
感動するのは良いが、全部、俺任せか。
まあ、投石機や、魔法を考慮して、壁は厚くし、等間隔で、円形の塔を建てるか。
弓が打てる様に、小窓を創り、城門は、木で大丈夫だよな?
ザンギバールとの、国境沿いだ。
早々、戦争も、起こらないだろう。
俺は、影達の作った材料を、念力で、空中に浮かし、脳内の、設計図通り、一気に、仕上げる!
「万物は、在るべき場所に!」
万物複製の法は、使ってないよぉ。
ちょっと、念力で、ズルしただけだ。
セーフだろう?セーフ!
とは言え、実はちょっと、万物複製どころか、万物創造を、使ってしまったのだが……。
鎖とか、細かな部品とか、一から作っていたら、時間がかかるからなぁ……。
まあ、別に良いでしょう?
それにしても……。
何が、一週間だ?
三時には、完成してしまったぞ。
俺は、クキクキと、首を鳴らし、
「まあ、こんなもんで、大丈夫でしょう?サービスで、外堀も、創ってしまいましたが。別に良いですよね?領主様が、良いと言って下されば、東の大河から、水を、流し込んでしまいますが?」
「へ?あっ!あの?へ?」
こいつ等、何を、テンパっているのだ?
俺は、眉間に、しわを寄せ、
「外堀は、埋めてしまいますか?その場合は、門の方も、跳ね橋式にしたので、多少、直す必要がありますが」
若干、苛立つ俺。
ウーナは、慌てて、
「だ、大丈夫です!全て、お任せします!それより……」
上目遣いで、俺を窺うウーナ。
今度は、何だ?
まったく……。
面倒事は、御免だぞ……。




