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天翔雲流  作者: NOISE
問われる、勇者の在り方
1685/1794

憎しみ……!

 俺は、たった一度の戦闘で、公約通り、アースガルドの戦局を、一変させた。

 俺は、残照に照らされ、戦いの名残に浸る。

 久々に、少し遊べたか……?

 戦いの後の、高揚感と切なさは、何時も、何とも言えぬ、気持ちにさせられる。

 命のやり取りに、慣れる事は出来ぬか……。

 俺は、遠方を睨み、多くの命が、狩られてゆくのを、黙って悟る。

 人の命とは、脆いモノだ……。

 しかし、今はまだ、俺が、戦うべき時では無い!

 まだ、この周辺の国々にも、曲がりなりにも、勇者が存在する。

 出しゃばる必要は、無いか……。

 俺は、シセルに、一礼し、

「私の、アルカディアの、援軍としての役目は、終わりました……。アルカディアは、他国を侵略する気も、また逆に、臣従する気もございません。約束通り、去らせて頂きます」

「そうですか……。ジャショウ様のご助力、感謝致します。お礼の一つでもと、思いますが……。今の私達には、何も、返す事が出来ません。どうか、ルキウス様達に、よろしくお伝え下さい」

「はっ!」

 俺は、今一度、シセルの頭を下げ、去ろうとする。

 しかし……!

「待ちたまえ!国は違えど、勇者を自称する貴様が、民達を見捨て、逃げ帰ると言うのか!!」

 鬱陶しい奴だ……。

 俺は、ぎろりと、アースガルドの将を睨む。

 捨て駒に使われた、勇者達の怒りを乗せて、

「見苦しい奴等だ……!南の国々が、危機にさらされていた時、貴様達が、何をした?勇者達を、道具の様に使い、牙を奪い、妖魔達の生贄に捧げ、今度は、他国の勇者まで、生贄に捧げようと言うのか?貴様等こそ、身の程を、わきまえよ!!」

 俺は、気焔を高ぶらせ、将の頬を、容赦なくひっぱたく!

 将は、怒りに震え、俺の方を睨もうとするが、俺の顔を見た瞬間、

「ひっ!?」

 その顔が、恐怖に歪む!

 俺は、この地に来た時、多くを背負っていた。

 剣の握り方も、碌に知らず、死んでいった、勇者達の魂が、俺の後ろに、ずらっと並ぶ。

 憎悪、憎しみ、嫌悪……。

 勇者達は、怒りの形相で、俺と共に、将達を睨んでいた。

 俺は、アースガルドの、将達に背を向け、

「生涯、忘れぬ事だな……!貴様達の所業は、万死に値する!神の救いを、政治の駒にし、殺してしまったのだから……」

 この言葉が、彼等の心を、深くえぐり、それ以上、何も、言う事は無かった……。

 俺は、冷笑を浮かべ、

「時間を作ってやったんだ……。生き残った勇者達を、必死に、育てるのだな……」

 それで、事態が、解決すれば良いが……。

 恐らく俺は、再び、この地に、立たなくては為らないのだろうな……。


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