勇者反乱!広がる混沌
俺の役目は、あくまで、見届ける者。
世界は未だ、驚異の中にある。
妖魔は跋扈し、民達は喘ぎ、もがき苦しむ。
逸早く、アルカディアを筆頭に、南部の国々は、妖魔の脅威を排除した。
それに伴い、南部連盟を結成。
各国、助け合い、復興に努める。
これに焦ったのが、その他の国々だ。
温存していた、勇者達を駆り出し、妖魔達に、対抗しようとする。
しかし、まあ、最初の頃の、聖フィナゴールと一緒だ。
勇者と言う真理を持ちながら、戦いを知らない者達。
次々と、妖魔に殺されてゆく。
辛うじて、機能しているのは、アースガルド位か……。
勇者達が死に、将が死に、兵達が死んでゆく。
何カ国かは、既に、崩壊し、多くの妖魔が、近隣の国々を、更に、襲うと言う状況。
今まで、勇者達を、育てて来なかった結果だ。
南部を除き、これで漸く、勇者と言うカードが、政治的価値を失い、皮肉にも、正常に、機能する様に成った。
夢から覚めた彼等は、戦場に投げ込まれ、戦い、戦い、淘汰され。自らの宿命を呪い、生き残った者は、漸く、それなりの戦士に、成ったと言う処か。
それでも、瘴気の巣を潰すのが、精一杯と、言ったところだ。
混沌は続く……。
民達は、平和を望み、南に、逃れてゆく。
均衡が崩れ、世界が、大きく揺れる。
やれやれ……。
多くの命が消えた……。
人は、どれだけの血を流せば、目覚めるのだろうなぁ……?
アースガルドより先、勇者を殺し、暴走していた北部が、完全に、崩壊した……。
多くの瘴気が、北部を覆い、幾つもの魔巣が、呼び寄せられる様に集まり。地上に、一つの、巨大な地獄が生まれる。
東部と西部は、アースガルドを中心に、その地獄を広げない様、国境を、完全封鎖した。
しかし、皮肉にも、北部に、地獄が生まれた事で、瘴気が、そちらへと流れてゆく。
これにより、仮初の平和が、東部と西部にも、訪れたと言う。
しかし、予断出来ない状況だ。
瘴気は、数多の妖魔を生み、何時、爆発するとも知れぬ爆弾の様に、その存在感が、西部と東部に住む者達に、恐怖を植え付ける。
もう、なりふり構っていられない。
東部、西部共に、生き残った、勇者パーティーを集め、討伐部隊を、結成する。
瘴気の巣を、一つでも多く。
妖魔を、一匹でも多く。
兎に角、この悪夢から、必死に逃れようと、使えぬ駒を、生贄に捧げる。
それが、最悪な結果を、もたらす事に成るとも知らずに……。
勇者達の反乱……!
地獄を前にして、勇者達は、凶行に及んだ。
妖魔に背を向け、失われた筈の牙を、人類へと向ける!
腐っても、神に認められた勇者達……。
腐っても、この地獄の中で、生き延びた勇者達……。
瞬く間に、多くの兵が殺され、見事、勇者達は、この地獄から、逃走する事に成功する。
何もかもが、お粗末なのだ。
総数にして、二十三組の、勇者パーティー……。
総勢、九十二人……。
たった、それだけの少年少女に、己が運命を託すのは、愚かな行為と言える。
しかし、愚か者は、彼等だけでは無い!
逃走した、勇者達も、そうだ。
己が国に、逃げ帰り、必死の抵抗を、試みる。
ある者は、村を占拠し。また、ある者は、山に逃げ込み、賊と化す。
未だに、自分達の置かれている状況が分からず、王城へと、逃げ帰り、王に、助けを求めた者達も、多くいた……。
これにより、勇者達の価値が、完全に、失われる事と成る。
神の加護を見失い、人々は、もがき苦しむ……。
地獄が、ゆっくりと、近づいて来る……。




