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天翔雲流  作者: NOISE
問われる、勇者の在り方
1674/1794

ジョーカー

「ソ、ソルト様方!もう、お帰りに成られるのですか?」

「当たり前だ!命を狙われ、その上、その事件の責任を、我が国の勇者に、背負わせようなどと!この国の人間は、信用出来ん!!」

「お、お待ち下さい!その愚か者も、直ぐに解任します!このような形で、アルカディアの勇者達を、帰したと民達が知れば、国の威信にかかわります!誠心誠意、謝罪をさせて頂きます!だから、どうか、もうしばらくの間は!」

「知らん!貴様等の、都合であろう?」

 最悪な形での、訣別だ。

 家臣達は、涙を流し、必死に、非礼を詫びる。

 ソルトは、この様に、感情的に成る男じゃ無いのだが……。

 エレズの一件を、引きずっているな。

 アーロンの愚行は、エレズに、よく似ている。

 勇者と言う地位に、執着し。その割には、碌な努力をしない。

 この二人は、よく似ているのだ。

 俺達は、聖フィナゴールを、後にする。

 結局、アポロニア達にも、あの一件以来、会う事が、出来なかったな……。

 聖フィナゴールを抜け、ザンギバールに入る。

 ザンギバールから、騎士の一団が。

 俺達に敬礼し、

「カリス王女の命令で、ここより先は、我々が、護衛いたします!」

「済まないな。気を使わせてしまったか?カリス様の、ご厚意に甘えよう」

「「「はっ!」」」

 無いとは思うが、俺を暗殺すると言う、筋書きもある。

 俺を殺し、アーロンの暴走を、虚偽を交えて、正当化するのだ。

 まあ、それをやった時点で、他国から、完全に、聖フィナゴールは、見放されるがな……。

 まあ、そこまで馬鹿で無いと、思いたいのだが……。

 正直、信用成らない輩が、多く存在する。

 リシャードによって、あの国は、成り立っている様なものだ。

 気を付けなければ、あの国も、早々に、瓦解するぞ。

 それじゃ無くとも、ザンギバールでの一件で、諸国の信用を、失いつつあると言うのに……。

 今後、勇者の在り方が、問われる事と成ろう。

 やれやれ……。

 リシャードも、今頃、頭を抱え、ため息をついているだろうなぁ……。



 あれから、一か月が過ぎた……。

 聖フィナゴールは、名誉回復の為、必死に、方々を駆けまわっている。

 勿論、アルカディアにも、謝罪の使者が、何度も訪れた。

 しかし、噂と言うモノは、尾を引き、生まれ変わろうとする、聖フィナゴールの、足を引っ張る。

 何より、アーロンと言う勇者が、邪魔に成って来たのだ。

 前にも話したが、アーロンと言う存在は、外交カードとして、役にも立たない。

 それどころか、聖フィナゴールの、勇者の質を、著しく、下げている。

 言うなれば、ババ抜きの、ジョーカーの様な存在だ。

 これを活かすには、相当な、覚悟と努力が、必要に成って来る。

 そして、聖フィナゴールは、最悪な使い方で、このカードの価値を、見出そうとした。

 未だ、地獄の、キンブリアへの援軍……!

 そこに、アーロンを、勇者として、派遣したのだ。

 当然、リシャードは、猛反対した。

 しかし、二人の貴族が、自分達の首と引き換えに、この最悪な策を、実行させた。

 一人は、ザンギバールへの、援軍を止めた貴族……。

 もう一人は、俺に、罪を被せ様とした貴族……!

 この二人は、既に、聖フィナゴールで、アーロン同様、居場所が無い。

 決死の覚悟で、アーロンと共に、戦場へと向かった。

 決死……!

 死を覚悟して、望んだ、キンブリア援軍は、アーロンの逃走により、貴族とその私兵は、悉く、妖魔に殺され、無残な死体が、聖フィナゴールに戻され、混乱に、拍車がかかる事と成ってしまった。

 それから、数週間後……。

 アーロンは、彼の実家に、匿われている所を発見され、再び、牢へと、戻される事と成る。

 敵前逃亡……。

 これにより、奴は、勇者の地位を、剝奪される事と成った。

 エレズ、アーロン……。

 二人の勇者が、多くの命を、奪う事と成った。

 故に、全世界が、勇者と言う存在に、疑問符を付ける。

 勇者は、神聖で、特別な存在……。

 人々は、盲目的に、そう、信じ込まされていた。

 本来であれば、誰よりも、前に立ち、多くの妖魔と、戦わなくては為らない存在。

 しかし、何もしていない勇者を、崇める事で、勇者達から、牙を奪ったのだ。

 本来であれば、数多の戦場を、駆け抜けて、誰よりも強く、輝く筈だった。

 それだけの、素質を秘めて、生まれて来た。

 しかし、現状……。

 勇者を持つ、多くの国は、そのカードの力に酔いしれ、失う事を恐れた。

 それが、本物の勇者を生む、妨げと成ってしまったのだ。

 何故、この時代、多くの勇者が生まれたか……?

 人々は、その真意を、漸く理解した。

 神は人に、非情な希望を、託したのだ。

 戦い、淘汰され、最後に立っていた勇者こそが、誠の勇者……!

 人々は、〝真理〟に踊らされ、真理を見誤った。

 正に、喜劇と言えよう。

 神々の真意を知り、人々は、腑抜けた勇者に絶望し、膝をつく……。

 まだまだ、平和は、訪れそうも無いな……。


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