訓練の成果
最後の一週間……。
アーロンを除き、皆、万全の態勢で、実戦に臨んだ。
緊張する、アポロニアとアリエル。
俺は、二人の背中を叩く。
「今日までの、訓練を思い出し、落ち着いて、戦いなさい!大丈夫♪二人なら、やれる筈さ」
「「は、はい!」」
先ずは、ゴブリン!
俺やソット達が、軽々と、倒して見せる。
アポロニア達も、落ち着き、危なげない戦いで、ゴブリンを倒す。
アーロンも、これ位は、大丈夫だろう。
皆、危なげなく、勝利を収める。
ここで、調子に乗ってしまうのが、アーロンの、悪い癖だ。
鼻息荒く、
「一番多く倒したのは、この俺だ!訓練の成果が、ハッキリと、出てしまったな!」
俺達を、挑発する。
しかし、誰も、動じる者は居ない。
落ち着き、周囲を警戒する。
アーロンはイラつき、
「びくびくしやがって!妖魔なんかに、ビビってんじゃねえよ!真面目に、訓練してこなかった証拠だ!俺は、もっと奥に、行かせてもらうぜ!」
ああ、本当、エレズを思い出す……。
森の奥には、魔巣は無いが、瘴気の巣があるのに……。
しばらくして、アーロンの、悲鳴が木霊する!
やれやれ……。
巣を、突いてしまったか……。
俺は、警戒態勢を取り、
「ここからが、本番だ!気焔を立ち昇らせろ!!」
溢れ返る、妖魔の軍勢!
ソットとエミネが、俺に続き、次々と、倒してゆく。
アポロニアとアリエルもまた、必死に、奮戦する!
俺は、冷静に、
「アポロニア!アリエル!落ち着いて、戦いなさい!今の君達なら、オーガとて、容易く倒せる筈だ!敵をよく見て、対処しろ!!」
「「はい!!」」
良し良し!
訓練としては、丁度良い!
森の奥から、咆哮が上がる!
赤い、巨大なドラゴンが、アーロンを咥え、木々をなぎ倒し、その存在を、露わにする!
瘴気の巣の、魔獣か……!
俺は、落ち着き、
「アポロニア!アリエル!やれるな?」
二人は、緊張した顔で、大きく頷く。
ドラゴンは、アーロンを投げ飛ばし、新たな獲物に、襲い掛かる!!
アポロニアとアリエルは、左右に分かれ、ドラゴンを、翻弄する!
ドラゴンのブレスを躱し、アリエルが飛翔!
そのまま、上空から、急降下し、ドラゴンの、首元を貫く!
それと同時に、アポロニアが、ドラゴンの両目を、華麗に潰す!!
勝負あったな……。
ドラゴンは、最後の咆哮を上げ、大地に沈んだ。
二人は、肩で息をしながら、俺の下までやって来て……!
パチンッ!
ハイタッチをする!
追従してきた、騎士達が、歓声を上げる。
たった、二週間で、ここまで育ったか!
俺は、二人の頭を、くしゃくしゃに、撫でまわす。
「すげえじゃん!大金星だ!」
「ふふふ。ジャショウさん達が、後ろに控えてくれていたから、安心して、戦えました♪」
「やっぱり、ソルトさんの訓練は、本物なんだなぁ!」
俺達五人は、肩を叩き合い、喜び合う。
ふむ……。
この調子なら、聖フィナゴールの勇者達も、アルカディアと肩を並べ、他国も守れる戦士に、成れるだろうなぁ……。
アーロンを除いて……。




