ああ、姦しい姦しい
アーロンは、荒れに荒れまくっていた……。
俺達に、敵わないどころか、同郷の、アポロニア達にも、太刀打ち出来ない。
今、家臣達が、必死に宥めている様だ。
メイド達は、アーロンを恐れ、俺達の部屋に避難。
て言うか、俺の部屋か……。
「ジャショウ様!お飲み物は、如何致しましょうか?」
「ん?ああ、コーヒーを、淹れてくれるかな?申し訳ないね」
「いえ!何でも、仰せ下さい!」
「ジャショウ様!クッキーなど、如何でしょうか?」
「あ、ああ。折角だから、頂戴しようかな?」
「私が焼いたんですよ♪渾身のできです♪」
「ははは……。うん!美味しい。聖フィナゴールのメイドは、レベルが高いな」
「勇者様に、そう言って頂けると、心の励みと成ります♪」
はぁ……。
早く、エミネ達、俺の部屋に来てくれぇ……。
俺は、複雑な顔で、エミネ達の来訪を、心待ちにする。
そんな、俺の表情を見て、
「ジャショウ様!お加減が、よろしくないのですか?」
メイド達の質問……。
うん……。
メイド十名以上に囲まれ、俺に、どんな顔をしろと言うのだ?
俺は、何時もの、道化スマイルで、
「ははは……。俺は、平民の出だからね。君達みたいな、美人に囲まれ、どうして良いのか、分からないのだよ……。実際、勇者の真理も、持っていないし……」
また、やってしまった……。
俺が、美人と評価した事で、メイド達は、華の様な笑顔で、飛び跳ねて喜ぶ。
「ジャショウ様は、どっしり、構えていれば良いのです!私達だって、元は、平民の出です!気軽に接してくれれば、私達も、嬉しいなぁ♪なんて♪」
ああ、キャー、キャー、五月蝿い……。
良い子達なんだけどね……。
そうこうしている内に、エミネ達が、やって来た様だ。
扉を開け、
「何よ!?この状況!」
「ジャショウさん!メイド達に囲まれて、どうしたのですか?」
「さ、さあ?俺にも、良く分からん。何故か、俺の、身の回りの世話を、率先して、やってくれるのだ……。ヤスミンも来た様だが、これは、どう言う事なのだ?」
ヤスミンは、他のメイド達を見て、苦笑をこぼす。
「あの、皆さん。ジャショウ様達の、身の回りの世話は、私の仕事なのですが……。と言うか、皆さん、アーロン様の、お世話をしなくて、よろしいのですか?」
「ちょっと、ヤスミン!あなただけ、ずるいのよ!」
「アーロンなら、今、暴れて、手が付けられないの!騎士達に、取り押さえられて、国王陛下の、お怒りを受けている所よ!」
「それで、私達は、国王陛下に、しばらくの間は、アーロンに代わり、ジャショウ様の、お世話をしろと、仰せつかったの♪」
「良いわよねぇ、ジャショウ様♪カッコいいし、優しいし♪元は、私達と同じ、平民の出で、勇者の真理も持っていないから、謙虚で、努力家だし♪」
「その上、とても強くて、民達の間では、アルカディアの勇者なのに、人気があるんですよ♪」
「は、はあ……」
ああ、本当、姦しい、姦しい……。
俺達は、このメイド達に囲まれながら、反省会を始める。
エミネとアポロニアが、俺を睨んでいるが、俺の所為じゃ無いぞ!
全部、アーロンと、リシャードの所為だ。
アイコンタクトで、そう伝える。
二人は、静かに、
「「後で、説教ですね……」」
何故、そうなる?
ああ、やっぱり、ラナ姉達を思い出す。
俺は、引き攣った顔で、首を垂れた……。




