攻勢……!
遠方に、砂塵が見える……。
俺は、リアカーを止め、目を見開き、前方を睨む。
「おいおい……。数百かと思ったら、ゆうに、千を超えているじゃないか……」
ゴーレムの大群……。
遠目で見ても、その巨体は、三mを超えている……。
それが、千……。
所々には、十m級も……。
その侵攻を、ユーロンの騎士に率いられた兵が、必死に防いでいる。
しかし、変だ……。
ゴーレムの動きが鈍い。
こんな物なのだろうか?
ゴーレムは、攻撃をしていると言うより、ただ、真っ直ぐと、前進しているだけ……。
「きっと、ユーロンの救世主様が、抑えていてくれているんです……」
エルが、ふらふらと立ち上がり、俺の疑問に答える様に呟く。
「救世主様が?」
「はい……。ゴーレム達からの攻撃は少なく、ただ、街へと帰ろうとするように、ゆっくりと前進するんです……。救世主様は、瘴気の取り込まれても尚、必死にあらがっているんだと思います……」
「そうか……」
黒玉も、そうだったな……。
森の中、ただ一人……。
俺は今一度、前方を睨む。
「サクヤ、リアカーを頼めるか?騎士達と合流し、シャル姉とサクヤは、怪我人の手当てだ!救世主様の、手を汚させるな!」
「分かったんよ!」
「任せて下さい!」
「エルとジャンヌは、ロンベル卿に報告!攻勢に出ると!」
「は、はい!」
「ジャショウは、どうされるのですか?」
首を傾げるジャンヌを見て、俺は笑う。
そして、
「ジャ、ジャショウ……。空を!」
口を開けて、驚くジャンヌ。
俺は、天高く舞い上がっていた。
前にも言っただろう?
空すら支配できるって……。
右手を、戦場へと向ける。
「放気……!」
光が、戦場を包み込む!
千体以上居たゴーレムが、一瞬で、土塊に変わる……。
残るは、前線のゴーレム……。
数的には、二百と言った処か……。
ユーロンの兵を、巻き添えにする訳にはいかないしな……。
ここからは、肉弾戦だ!
「俺は後ろに回り、挟撃する!」
下を見る。
ジャンヌが、目を輝かせ、
「ジャショウ!私も後で、空を飛んでみたいです!」
ブレない奴だ……。
俺は苦笑し、空を駆ける。
兵達の攻撃で、ゴーレムは破損するも、すぐに元に戻っている……。
俺の攻撃で崩れたゴーレムは……。
復活する兆しが無い!
完全に、破壊する必要があるのか?それとも……。
先ずは、優勢な右翼と合流する!
俺は、一気に降下し、ゴーレムの背後を取る。
ゴーレムは、戦局も、俺の存在も完全に無視して、前進している。
先ずは……。
「はっ!」
近くの、ゴーレムの腕を砕く!
予想通り、腕は回復し、ゆっくりと俺の方を向く……。
無機質な土塊ではあるが、何処かに弱点がある筈……。
心眼を通して、観察する。
錬気の流れも、魔力の流れも無い、完全な、土塊か……?
いや……。
左胸に、錬気の珠……。いや、師匠の奥義と一緒だ!
錬気に、魔力を覆った核!
これが、ゴーレムの心臓!
そうと分かれば、簡単だ!
俺は、ゴーレムの左胸を的確に、打ち砕いてゆく……。
打ち砕かれたゴーレムは、その機能を止め、崩れ去った。
俺は、流れる様に、ゴーレムの間を駆け抜ける!
ゴーレムは崩れ去り、ユーロンの騎士達と合流……。そこには、
「ジャショウ!」
アルフが先陣を切り、奮戦していた。
手にはクレイモアを持ち、ゴーレムの、石の体を粉砕している。
しかし、
「ジャショウ!こいつら、どうやって倒してるんだ!?」
「左胸だ!そこに核がある!」
俺の言葉に、アルフは、にやりと笑う。
「種明かしがされちまえば簡単だ!行くぜ!」
アルフが、クレイモアを掲げ、斬りかかる。
一閃!
ゴーレムが、土塊に変わる……。
「おい!野郎ども!三人一組、隊になって戦え!二人は腕を!残りの一人で、左胸を狙え!」
アルフの号令に、兵達が動く。
兵の多くは、ハルバード。もしくは、バトルアックスで戦っている。
ゴーレム対策だろう。打撃力の強い武器だ。
これなら、一般の兵でも対応が効く。
俺とアルフは、顔を見合わせて、にやりと笑う。
「援軍は、期待していなかったんだがな……。ジャショウ!次は、どうする?」
「中央には、黒玉が居るんだろう?良く抑えている。俺は、左翼に周る!」
右翼は、完全に、掌握した……。
アルフは良く攻め、包囲網を築いている。
もう、戦局は決した……。
ゴーレム達が奏でる地響きも、将兵達の叫び声も無い……。
砂塵の納まった大地に、兵達の歓声が沸き上がった。




