やれやれ、甘えん坊な王女様だ……。
「ジャショウ殿!飲んでおられるか?」
「アタウルフ殿……。私は、若輩者故に、お酒は少しと、言っているでしょう?」
「なにを!ジャショウ殿は、古今無双の、豪傑ぞ!酒を嗜むのも、大事な事ですぞ!」
「はぁ……」
俺は、アタウルフに肩を組まれ。あっちに行っては、愛想笑いを浮かべ。こっちに行っては、頭を下げる。
ソルトは、ため息をつき、
「アタウルフ殿!ジャショウ殿を、可愛がってくれるのは良いが。ジャショウ殿は、我が国の、勇者ですぞ」
「ソルト殿。そう、固い事を言うな!そもそも、ジャショウ殿は、勇者の真理を、持っておらぬのだろう?そうだと言うのに、あの武威!辺境の村で、腐らせておくのは、勿体無い!我が国であれば、大切に育てるぞ?ジャショウ殿!我が国に、仕官したらどうだ?」
「ははは……。私は、あの村の民を、守ると決めたのです。申し訳ありませんが、今は、どの国にも、仕えるつもりはありません」
「勿体無いのう。ジャショウ殿は、知勇武、全てを備え、誠、立派な、戦士だと言うのに」
「アタウルフ殿!ジャショウ殿は、勇者の真理を、持っていなくとも、我が国の勇者です!勧誘も、程々に……」
やかましい、おっさん達だ……。
俺は、おっさん達から逃れて、バルコニーに。
そこには、カリスが、立っていた。
月夜を見上げる、少女の姿に、一瞬、ドキッとする。
カリスもまた、俺に気づく。
優しげに笑い、
「ジャショウ様……。ジャショウ様のお陰で、父の無念を、晴らす事が出来ました」
「んあ?俺は、大した事は、やっていないよ。アタウルフ殿や、多くの兵達が頑張ったから、この国は、再び、立ち上がる事が出来たんだ。良い家臣達を持ったな。そして、カリス王女、あなたも、よく頑張った!称賛に値する!」
「ふふふ……。二人だけの時は、カリスと呼んで下さい。ジャショウ様……。貴方に褒められると、私は、胸の辺りが熱くなり、何でも出来る様な気に、成ってしまいます。貴方は、凄い方なのですね……」
「はあ?俺には、よく分かりません。俺より、カリスの言葉の方が、多くの者に、勇気を与えるでしょう?」
「ふふふ……。そう言ってくれますか?そんな私を、勇気づけてくれるのは、やはり、ジャショウ様ですよ♪」
「はあ……?」
カリスは笑い、俺に寄り添う。
「今しばらく、このままで……」
やれやれ……。
甘えん坊な、お姫様だ……。
俺達二人は、空を見上げ、月に照らされながら、静かに笑った……。




