新たな、魔巣の脅威
「ジャショウ君、本当に!帰るんだね?本当に!帰ってしまうのだね?」
「はあ?約束の期日は、もう、過ぎましたから。ベルトラム達も、成長しましたし。今後は、ニッサ村を拠点とし、活動していきたいと思います」
「はぁ……。君に、エレズ君の野心が、一欠けらでもあれば、良かったと言うのに……。ソット君や、エミネちゃん達が、頑張ってくれているが……。また、アルゴスの治安維持に、苦労しそうだよ……」
「この一か月で、あらかた、妖魔の巣は、排除しておきましたから、こまめに、妖魔を駆除していけば、問題無いでしょう?」
「一度に、妖魔を、数百も倒せる者なんて、古今東西、どこを探しても、君達ぐらいだよ?国にとっては、大きな損失だ!」
「はあ?ソットやエミネ達も、もう少し、成長すれば、それぐらいの事は、出来るようになりますよ……。そんな事よりも、ニッサ村の方を、警戒した方が良い」
「はぁ……。何を、警戒すると言うのだい?ハラ婆さんも、まだ、健在だし。妖魔の心配も、無いと思うけど……」
「はぁ……。国が、その様な考えでは、取り返しのつかない事に成りますよ?私個人で、調べたのですが……。ニッサ村に近い隣国」
「隣国……?ああ、ザンギバールの事か。あの国とも、親しくしているが、何かあったかな?」
「はぁ……。あちらの国に向かう、行商人に、魔力の目を、追従させましたが……。あの国も、魔巣が、存在しますね?近々、大規模な、軍事行動が、予想されます。魔巣の側に、砦を築き、妖魔が、暴走した時の為に、人員を集め、壁を建設している様です。皮肉な事に、インスモーンの失策は、自分が、溢れだした妖魔を倒した事で、魔巣を、小さくする事に繋がり、成功したと、諸国は、思っている様です。それに続こうと、必死なのでしょう」
「ジャショウ君!その話は、本当かい?」
「まだ、予想の範囲は、超えていません!使者を送り、確認するべきかと……。我々も、万が一に備え、ニッサ村に、帰る必要があるのです」
ルキウス達が、青ざめる。
慌て、
「ロース!ザンギバールに、使者を送れ!ソルトは、ジャショウ君達の為に、至急、馬車を!それと、何時でも戦えるよう、騎士達にも、この情報を、伝えてくれ!!」
城内が、慌ただしくなる。
俺の横では、ベルトラム達が、不安そうな顔をしている。
俺は、努めて冷静に、
「少なくとも、まだ、大丈夫だ……。今のペースであれば、壁が出来るのに、二か月以上、かかる事だろう。それでも、最悪の事態を考え。急ぎ、帰り、ハラ婆さんと共に、村を守るぞ!」
「あ、ああ!しかし、そんな大事な事、もっと早くに、国王陛下に、伝えるべきだったんじゃないのか?」
「この情報を、手に入れたのは、昨夜だ。砦を造っていた事は、早い段階で、気付いていたが……。その時は、まだ、魔巣への攻撃とは、考えづらかった。インスモーンの事があり。魔巣を、警戒しているだけかもしれなかったからな。それに、これ位の情報は、国の方でも、掴んでいると、思っていたよ。ベルトラムの言う通り、国王陛下に、確認を取るべきだった。俺の失敗だ」
「いや、ジャショウは、悪くねえ。エレズの奴に、振り回されて、正直、それ処じゃ無かったからな」
「いや、失敗は失敗だ。自分一人で、何でも出来ると、思っちゃいないが……。インスモーンの影響を、もっと、考慮する必要があったんだ。ザンギバールも、勇者達の居ない国だと聞く。勇者が居ない劣等感を、もっと、配慮するべきだったんだ。また、多くの人が死ぬ」
「ジャショウよぉ。他人の過ちにまで、責任を感じていては、お前、壊れちまうぞ?それよりも、俺達は、やるべき事に、集中するべきだ!」
「ふふふ……。ベルトラムは、強くなったな……。君の言う通りだ。急ぎ、ニッサ村に戻り、俺達も、国境で、警戒するぞ!」
「ああ、任せておけ!ニッサ村の人達にも、俺達の成長を、見てもらおうぜ!」
「ああ、そうだな」
ベルトラムこそ、勇者に相応しいな。
ヤファとアデナも、力強く頷く。
さて……。
ここからは、時間との勝負だ!
俺達は、力を合わせ、必ず、ニッサ村を、守って見せるぞ……!




