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天翔雲流  作者: NOISE
混沌の中で咲く、一輪の花
1607/1794

ただの少年……。

「エレズよ……。牢獄の中で、少しは、頭が冷えたか……?」

 ルキウスが、静かに問いかける……。

 エレズは、俯いたまま、何も答えない。

「自分の罪と、向き合える様に成ったか……?」

 再び、問いかける……。

 エレズは、ゆっくりと、面を上げる。

 憎悪、憤怒、あらゆる、負の感情……!

 ベルトラムは、俺の横で、寂しく笑う。

「ははは……。あいつは、あいつのままか……」

 俺は、ベルトラムの肩を、強く握る。

 ベルトラムの優しさも、分からない程に、堕ちていたか……?

 エレズは、全ての憎悪を乗せて、呪詛を吐く。

 聞く者全てが、嫌悪感を露わにする。

 エレズは、狂人の様に笑い……。

 いや、既に、狂人なのだろう。

 目を見開き、一同を見回し、最後に、俺を睨む。

「まやかしの勇者に騙され……。今日、この国は、偉大な勇者を、失う事と成る……!お前等、全員、地獄行きだ!!」

 狂っているな……。

 エレズは、頭を、大理石に叩き付ける!

 血を流し、

「世間では、僕の血が、青いと言うが……!どうだ?赤かろう?お前達の幻想は、全て、まやかしだ!!この国を、本当に救いたいと思うのであれば、再び、僕を、勇者として祀り上げるしかない!分かっているのかなぁ?僕は、神に認められた、勇者なんだよぉ?」

 誰もが、目を背けた……。

 たった、十四歳の少年が、ここまで、壊れてしまうとは……!

 ルキウスは、深く息を吐く。

 エレズを、冷たく睨み、

「もう、良い……。君は、最後まで、人の心が、分からないのだな……?」

 ゆっくりと、手を振り上げる。

 その時……!

 雷光轟き、まばゆい光が、エレズを包み込む!!

 何が、起こったか、分らなかった。

 人々は、ゆっくり目を開け、事態を確認する。

 エレズは、聡い男だ。

 狂った様に笑い、

「あははは!神も、お怒りの様だ!早く、縄を解け!!」

 しかし、立ち会っていた、司祭が震える!

「前代未聞だ……!」

「そうだろう、そうだろう!僕は、神にも愛されているのだから!!」

「逆ですよ……。今、あなたの中から、真理が消えた!」

「は……?」

「最早、あなたは、神からも、見放されたのですよ!」

「な、何を言っているんだ!?僕は、勇者で、今のは……。えっ……?」

 俺達にも分かる!

 エレズを守っていた、神聖な力が、消えているのだ……!

 エレズもまた、内なる力が、消えた事に、気付いたのであろう。

 目を見開き、打ち震える。

「あ、あれ?僕は、勇者で……。神に、認められて……?どう言う事なんだぁ!?」

 エレズは、狂った様に、暴れ出す!

 天を睨み、

「神よ、神よ!セラフィルよ!!貴様も、この偽物に、騙されたと言うのか!?僕が勇者だ!!早く、僕を、勇者に戻せぇ!!」

 エレズの叫びが、無常に木霊する。

 やれやれ……。

 セラフィルもまた、我慢の限界を、超えてしまった様だ。

 ただの少年、エレズ……。

 人が、手を下さなくとも、罰を受けたと言う事か……。


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