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天翔雲流  作者: NOISE
混沌の中で咲く、一輪の花
1605/1793

勇者失格……。

 騎士達が、エレズを取り押さえようとする。

 しかし、エレズは暴れ、叫び、

「違う!!僕は悪く無い!!悪いのはそいつだ!全てを、滅茶苦茶にしたのは、そいつなんだ!!」

 無様なモノだ……。

 王の前で、乱心する!

 叫び、暴れ。吠え、吠え!

 やっとの事で、騎士達が、エレズを取り押さえる。

 なおも、足掻き、暴れるエレズ。

 ただひたすらに、俺を睨み、

「そいつだ!そいつが、全ての元凶だ!!」

 エレズよ……。

 その悪あがきが、寿命を縮めていると、何故、気付かない……?

 ルキウスが、静かに、右手を挙げる……。

 騎士は、剣を振りかざし……!

バキ!!

 一瞬、何が起こったか、分らなかった。

 ベルトラムが、涙を流し、エレズを殴っていた。

 殴り、殴って、

「お前こそ、いい加減に、目を覚ませよ!!お前は、何時もそうだった!大人の前では、良い顔をして!ハラ婆さんの目を盗んでは、訓練をさぼり!そんな奴が、勇者になんて、成れる訳が無いだろう!!」

 ベルトラムは、ひたすら、エレズを、殴り続ける!

 謁見の間に、乾いた音が、鳴り響く。

 エレズは、既に、気絶していた……。

 俺は、振り上げた、ベルトラムの腕を掴み、

「お前は、優しい奴だな……。こんな事では、エレズの罪は、償えない!しかし……!」

 俺は、ルキウスの方を向く。

 ルキウスもまた、上げた手を下げ、

「その男を、牢屋に連れて行け……。追って、沙汰を下す」

 俺は、引きずられ、連れて行かれる、エレズを見送り。泣き続ける、ベルトラムを、強く抱きしめる!

「ベルトラム……。君は、強くて、優しい男だ……!お前の優しさが、エレズに届くかは分からない……。けどなぁ……」

「あいつは……。あいつは!本当の、糞野郎だったが、約束したんだ!何時か、真理に相応しい、立派な戦士に成ろうって!そして、人々を守ろうって!けど、けど!全部、嘘だった!嘘だったのかよ!?」

 俺の腕の中、ベルトラムは、泣き叫ぶ。

 俺は、ただ強く、強く!抱きしめる!

 ルキウス達は、目を背けていた……。

 騎士達もまた、俯き、何も答えない。

 ああ……。

 ここに居る、大人達が、全てを、壊してしまったのだ……。

 本当に、救いたいモノを、救う事が出来ないなんて……。

 俺もまた、勇者失格だなぁ……。


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