勇者失格……。
騎士達が、エレズを取り押さえようとする。
しかし、エレズは暴れ、叫び、
「違う!!僕は悪く無い!!悪いのはそいつだ!全てを、滅茶苦茶にしたのは、そいつなんだ!!」
無様なモノだ……。
王の前で、乱心する!
叫び、暴れ。吠え、吠え!
やっとの事で、騎士達が、エレズを取り押さえる。
なおも、足掻き、暴れるエレズ。
ただひたすらに、俺を睨み、
「そいつだ!そいつが、全ての元凶だ!!」
エレズよ……。
その悪あがきが、寿命を縮めていると、何故、気付かない……?
ルキウスが、静かに、右手を挙げる……。
騎士は、剣を振りかざし……!
バキ!!
一瞬、何が起こったか、分らなかった。
ベルトラムが、涙を流し、エレズを殴っていた。
殴り、殴って、
「お前こそ、いい加減に、目を覚ませよ!!お前は、何時もそうだった!大人の前では、良い顔をして!ハラ婆さんの目を盗んでは、訓練をさぼり!そんな奴が、勇者になんて、成れる訳が無いだろう!!」
ベルトラムは、ひたすら、エレズを、殴り続ける!
謁見の間に、乾いた音が、鳴り響く。
エレズは、既に、気絶していた……。
俺は、振り上げた、ベルトラムの腕を掴み、
「お前は、優しい奴だな……。こんな事では、エレズの罪は、償えない!しかし……!」
俺は、ルキウスの方を向く。
ルキウスもまた、上げた手を下げ、
「その男を、牢屋に連れて行け……。追って、沙汰を下す」
俺は、引きずられ、連れて行かれる、エレズを見送り。泣き続ける、ベルトラムを、強く抱きしめる!
「ベルトラム……。君は、強くて、優しい男だ……!お前の優しさが、エレズに届くかは分からない……。けどなぁ……」
「あいつは……。あいつは!本当の、糞野郎だったが、約束したんだ!何時か、真理に相応しい、立派な戦士に成ろうって!そして、人々を守ろうって!けど、けど!全部、嘘だった!嘘だったのかよ!?」
俺の腕の中、ベルトラムは、泣き叫ぶ。
俺は、ただ強く、強く!抱きしめる!
ルキウス達は、目を背けていた……。
騎士達もまた、俯き、何も答えない。
ああ……。
ここに居る、大人達が、全てを、壊してしまったのだ……。
本当に、救いたいモノを、救う事が出来ないなんて……。
俺もまた、勇者失格だなぁ……。




