アンデット達の目的
俺達は、五十名の騎士と共に、アンデット討伐に向かう。
不思議な事に、アンデット達は、俺達の進路上に、進軍し始めた。
俺は、険しい顔で、辺りの気配を探る。
何かが、アンデットを、呼び寄せている。
何だ?
落ち着け、ジャショウ……!
必ず、何かが有る!
俺の神玉が、全てを捉える!
「メイニル!左後方だ!!」
皆、俺の言葉を聞き、一斉に振り返る!
慌てて、木陰に隠れる、人影!
騎士達が、その者を捕らえ、怒りの形相に変わる!!
「また、貴様か!!仲間殺しのエレズ!!」
「放せ!!僕は、アルゴスの危機を知り、偽物の勇者では、どうにもならないと思ったから、お前達の非礼を、あえて許し、助けに来てやったんだぞ!!」
ああ、そうか……。
そう言う事か!
俺は、エレズの妄言を無視し、導き出された答えに絶望し、狂った様に笑う。
驚く一同。
俺は、一頻り、笑った後、無表情と成り、
「最悪だ……」
そう、呟く……。
メイニルは、恐る恐る、
「何か、分かったのですか……?」
メイニルの質問に、俺は、深いため息で答える。
自嘲気味に笑い、
「最悪だ。俺は、あのアンデット達を、再び、殺したくはないぞ。アンデット達の目的は、そこに居る、愚かな男だよ……!」
一同が、目を見開き、エレズを凝視する!
エレズは、しばし、呆然とするが。俺の言葉の意味を悟り、真っ青な顔をする。
「ぼ、僕が目的だって!?な、何故、僕が、アンデットに、狙われなくちゃならないんだ!?」
「そんな事は、お前自身が、よく理解して居るだろう……?」
「ち、違う!!あれは、僕の所為じゃない!!彼等が、弱かったから、死んだんだ!!僕の所為じゃない!!」
皆、無表情で、エレズを睨む。
エレズは震え、腰を抜かし、這いずる様に、後退りをする。
声を震わせ、
「だ、大丈夫だ!ベルトラム達も、強くなっただろう?ぼ、僕が指揮を執り、君達が戦えば、必ず、勝てるはずだよ!!」
こいつは、この期に及んで、まだ、そんな事を言っているのか……?
エレズは、必死に、ベルトラムに縋る。
必死に、服を引っ張り、
「ね、ねえ!僕達、仲間……。いや!親友だよなぁ!二人で、力を合わせ、オーガだって、倒したじゃないか!まさか、見捨てるなんて、言わないよねえ!?ねえ!!」
ベルトラムが、エレズを、振り払う!
エレズの周りから、人が離れてゆく……。
エレズは、必死に手を伸ばすが、誰にも届かない。
最後に……。
「お、おい、お前!!い、いや、勇者様!あなたは、勇者なんだから、見捨てないでくれますよね!?」
どこまでも……。
どこまでも、愚かな人間なんだ……?
俺もまた、エレズを振り払い、
「進軍するぞ……」
皆に、号令を出す。
無言の、行軍……。
俺は、怒りに震えながら、静かに、息を吐いた……。




