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天翔雲流  作者: NOISE
魔王降臨
160/1865

さあ、魔王退治のお時間です!!

「勇者様!魔王を退治に行きましょう!」

 それは、突然やって来た……。

 朝の配達が終わり、皆が一息ついた頃、ギルドの扉が、豪快に開かれた。

「は?」

 白銀の鎧に、透き通る様な金髪……。

 左耳の上で輝く、花をモチーフにした髪飾り……。

 この子……。

 俺は、震えた手で、指さす。

「き、君は!?」

 そうだ……!

 騎士区で会った少女……。

 少女は、俺を見つけると、一直線にやって来る。

 後ろに、もう一人……。

 薄茶色のローブに、真っ赤な髪……。

 コロシアムで戦った、エル!?

 エルは、若干オドオドとし、ギルドに入って来た。

 俺達が唖然としていると、

「ジャショウ様!」

 俺が座っている席のテーブルに、勢い良く手を置く。

 そして、にっこりと笑う……。

「や、やあ……。前も聞いたが、君はいったい誰なんだい?」

 俺の顔が引きつる……。

 しかし、金髪の少女は、首を傾げ、

「魔王退治です!」

 やっぱり、話が通じねえ~。

 何?魔王退治って……?

 俺は、君の名前を聞いてるんだよ?

 引き攣った笑いで、少女を見る。

 しかし、少女は、お構いなしに、

「どうされたのですか?さあ!行きましょう!」

 俺の腕を掴み、引っ張てくる……。

「「ちょっと待ちなさ~い!!」」

 俺と少女の間に割り込む影……。

 シャルとサクヤだ。

 少女は首を傾げ、思い出した様に、手を叩く。

「シャル様にサクヤ様ですね!コロシアムでの勇姿、見ておりました!」

 少女の満面の笑みに、シャルとサクヤは、呆然とする。

 まあ、そうなるな……。

 この子のマイペースさ、異常だよ……。

 兎に角、名前を教えてくれ~!!

 しかし、そんな俺達に助け船が、

「ジャ、ジャンヌちゃん!」

 エルが、少女の腕を引き、必死になだめる。

「どうしましたか?エルちゃん。ジャショウ様がいれば、百人力です!」

 へ~。ジャンヌって言うのか……。

 で、魔王退治って何?

 最早、頭が追い付かない……。

 兎に角、今はエルが頼りだ!

 俺は、エルの方を見る。

 エルは、困った顔で頷き、

「この子は、ジャンヌ・ラフィス。ブロウ・ラフィス様……。近衛兵長様のご息女です」

 えっ!?

 あの人、こんな大きな子が居たの?

 俺と、シャルとサクヤは、声を上げる。

「近衛兵長、若く見えたのに……」

 俺の呟きに、ジャンヌは、大きく頷く。

「はい!お父様は、若く見られる事が嫌で、一度、髭を伸ばしたことが有ったのです!」

 何?そのどうでも良い情報……。

 聞きたい事は、答えてくれないのに……。

 しかし、ジャンヌは語る。

「あまりに似合わないので、私、お父様が寝ている時に、切って差し上げたのです!」

 何?その、やり切った感の顔……。

 お父さん、可哀そう……。

「随分アグレッシブだねぇ……。それじゃあ、近衛兵長……」

「はい!鏡を見て、笑っておりました!」

 それ絶対、乾いた笑いだから!

 お父さん、喜んで無いよ!

 駄目だ!この子……。色々ヤバイ!

 て言うか……。俺、この子、苦手!

 俺は、椅子にしがみ付く。

 シャルとサクヤですら、たじたじだ……。

 この二人が勝てないって……。

「さあ、ジャショウ様!」

 キラキラした目を向けないで!

 だ、だれか!?

 俺は、辺りを見回す。

 駄目だ!皆固まってる!

 それでも、

「ちょ、ちょっと、魔王退治ってどういう事よ?」

 ラナが、声を上げる。

 さすが姉さん!

 皆が出来ない事を、やってくれる!

 それにしても……。

 ジャンヌ……。何故、不思議そうな顔をする?

 疑問に思っているのは、俺達の方だ!

 駄目だ!ジャンヌじゃ駄目だ!

 一同、エルの方を向く。

 エルが、困り顔で、

「あ、あの……。今、私達の街ユーロンが、危機に見舞われているのです……」

「何があった?」

 エルのただならぬ雰囲気に、俺達の目が変わる。

 ユーロンの危機だと!?

 あそこには、黒玉がいるはず……。

 神獣に守護されているはずなのに。

 俺の真剣な面持ちに、エルが頷く。

「今、我が領土は、ある者から侵攻を受けているんです!」

「それはおかしい!侵略が有ったのなら、国や傭兵たちに、声がかかる筈じゃ!」

 ベヘムが、唸る。

 ベヘムの言う通りだ……。

 何故、国が動かない?

 しかし、エルが嘘をついているとは……。

「その者は、我が領土と因縁の在る者……。私達の救世主でした……」

 エルは、ぽつりぽつりと話をつぐむ。

 ユーロン領は、決して肥沃な土地とは言えない所らしい……。

 しかし、ある時、何処からともなく男が現れ、膨大な魔力で、痩せ細った大地を潤し、民達に、新しい農業を教えてくれたそうだ。

 男は、民達を愛し、親身になって、領土発展に貢献してくれた……。

 しかし……。

 領土の側に、瘴気の巣が発見され……。

「黒玉の時と同じなんです!その人は、私達を守るために!」

 俺は、腕を組む。

 瘴気に魅入られたか……。

 しかし、

「何故、その男が関係していると?」

「ある貴族が、興味本位で、瘴気の巣を暴いたんです……。それで、不安定になった瘴気の巣が暴走して……。瘴気を押さえる為に、救世主様は一人、瘴気の巣へと行き……。瘴気は収まったんですが、その代わり……」

「その代わり?」

「瘴気の巣から、暴走したゴーレムが、あふれ出る様に……」

「男は、土属性の魔法の使い手か……?」

「はい……。その人は、街に居た頃、日に日に痩せ細っていきました。それでも、私達の為に!」

「優しい人だったんだな……」

 エルの涙……。

 俺は、静かに頷く……。

「ちょ、ちょっとまってよ!それで何で、馬鹿ジャショウが、出て来るのさ!」

 ラナが、声を上げる。

 ベヘムも頷き、

「うむ……。魔王とは何じゃ?そして、何故、ジャショウを、その様な危険な処へ向かわせねばならん?」

「心苦しく、思っています……。瘴気の巣に取り込まれているのなら、その者は、魔王と呼ばれる者……。そして、それを開放できるのは……」

「勇者しか居ません!」

 エルの言葉を遮り、ジャンヌが、声を上げる。

 一同は、ジャンヌを見て、

「勇者って……。馬鹿ジャショウのは、言葉のあやでしょ?」

「違います!ジャショウ様は、本物の勇者なのです!」

「あんたねぇ……」

「あなた達は、ジャショウ様の仲間でしょう。何故、コロシアムの戦いを知らないのですか?」

 あの場に居た、俺達以外が首を傾げる。

「コロシアムの戦い?」

「そうです!」

 ジャンヌは、鼻息荒く、一同を見る。

「七月二十五日の!」

「ぬう……。儂らは生憎、他の街に居たのう……」

「ぼ、僕達も、まだ、この街に居ませんでした……」

「仕方がありません……」

 ジャンヌは、ため息をつき、背負っていたカバンに、手を伸ばす。

 しかし何?その熊さんバック!?

 可愛いんですけど……。

 いや……。今はそんな事より……。

「えっと……。これです!」

 取り出した物は、拳大の水晶……。

「そ、それは……」

 師匠が、声色を変える。

「お主、あの時の事を口外するのは、御法度じゃぞ!」

「この方達は、ジャショウ様の、仲間なのですよね?」

 ジャンヌが、首を傾げる。

 師匠は、ため息をつき、

「お主、記憶の水晶に、留めておったのか?」

「はい!ジャショウ様の勇姿。何時でも見れるように!そして、何時の日か、世の人達が知るために!」

 ジャンヌは胸を張り、大きく頷く。

 記憶の水晶って、何?

 また、俺、置いてきぼり?

 俺とサクヤ以外は、理解しているらしい。

 俺とサクヤは、首を傾げる。

「まあ、ギルム殿。儂らは家族じゃ!知る権利があろう……」

「ふう……。シルフィー、扉と窓を閉めてくれ……。皆の者は、これから見るモノを、口外してはならぬぞ?」

 師匠の言葉に、皆頷き、ジャンヌは嬉しそうに、水晶に手をかざす……。

 うお!?

 映像が、飛び出て来た!?

 俺、知ってる!

 これ、映画って言うんだよね?

 しかし……。

 これって、俺達!?


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