この魂に誓い……!
「のう……。ジャショウ殿。儂らは、お主達に、何を返す事が出来る?」
ベヘムがジョッキを傾け、語り掛けて来る。
この人は、何を言ってるんだ?
返してもらうモノなど、別な無い……。
俺は、首を傾げ、ベヘムを見る。
不思議そうな顔をする俺を見て、ベヘムは、静かに笑う……。
「お主は、我らに道を示し、おんぼろに体を治してくれた。それだけでは飽き足らず、最高の武器を用意してくれると言う……」
真っ直ぐ俺を見る。
優しく、雄々しい、力強い目……。
俺は、この人の目が好きだ。
俺は、クスリと笑う。
「あんたの、その目が好きだから……」
「ジャショウ殿……!」
真剣な目……。
別に、からかっている訳じゃ無いんだが。
俺は、姿勢を正し、ベヘムを見る。
「あんた達の雄々しさ、高潔さ。俺達の家族になるのに相応しい……。だから、俺は、手を差し伸べた……。家族を癒し、助けるのは、当たり前の事だろう?それでも何かを返したいと言うんなら……。必ず、生きて帰って来てくれ!例え腕がもげていようと、俺達が、どんな事をしたって治してやる!だから、家族と共に!」
俺も、力強く見返す。
どれ位経っただろう。ベヘムは、ふっと笑い、豪快に、エールを飲み干す。
「まったく……。お主は無理難題を言う……。家族と共に帰ってこい。か……。このベヘム、この魂に誓い、その約束はたして見せよう」
俺はにっこり笑い、ベヘムのジョッキを持って立ち上がった……。
さて、ベヘム達が入り、子羊の嘶き亭の生活リズムが、少しずつ変化して行った。
ラナとユウは、ベヘム達と共に、朝から森に行く。
ベヘム達は、ラナとユウを格下に見ず、対等に接してくれる。
報酬も、きっかり六等分!
ユウは遠慮するが、ベヘムは頑なに、そのスタイルを曲げない。
勿論、他の三人も一緒だ。
だから、ラナもユウも期待に応える様に、必死に努力して、日々、成長している。
そもそも、俺達の戦闘スタイル真似するより、ベヘム達から学んだ方が、現実的だ。
初め、俺達の戦闘スタイルをまねた戦いをして、ベヘム達の度肝を抜いたらしい……。
オーガ退治の定石は、初め足を狙い、体勢を崩した処で、角を叩く。と言うモノだ。
頸動脈を狙うとか、心臓を貫くとか、簡単に言っているが、オーガの体は、鋼の様に固い……。
現実的では無いのだ。
俺達の所為で、雑魚の様に思われるが、中堅冒険者が五人がかりで、さっき言った方法で、やっと倒せる……。
なんだかんだ言って、ラナもユウも異常だと言う事だ……。
午後、合流した俺達は、ベヘム達に、闘い方を見せろと言われ、何時もの様に、オーガを倒した処、苦笑されてしまった……。
逆に、見せてもらったが、ベヘムが、バトルアックスを振るうと、オーガ達の首は飛び、ヨシュアや、センとロンは、的確に心の臓を貫いて見せた。
変わらないじゃないか……。
しかも、慣れない武器で……。
ベヘム達は今、代替品の武器を使っている。
一日や二日で、そもそも、武器など出来やしない……。
早くて十二日そこら……。
特注品の……。それも、とびっきりのモノを作ってもらうんだ。一月以上かかる。
あの宴会の後、ドーラが繋ぎとして、替えの武器を持ってきてくれた。
それも、結構良いやつ……。
使い潰してくれて良いって……。
だから、ベヘム達は、その武器で戦う。
雄々しく、猛々しく……。
戦場の羅刹……。
その名に、相応しく……。
森から帰れば、商店街に顔を出している。
皆からの信頼も厚く、ラナなんて、あんな性格だけど、隠れファンクラブが有る……。
ラナには、内緒だけど……。
たまに、ビックボアを狩って、ガルガトさんのとこにも行くから、ガルガトさんとベヘムは、仲が良い。
今では、ガルガトさんとザグメさんも、週一で、子羊の嘶き亭に顔を出す。
その度に、ガルガトさんとベヘムは、肩を並べて大酒を飲んでいる。
ガルガトさん達が来ると、ガッツは小さくなっている……。
それが可笑しくって、俺は何時も、ガッツをからかってやるんだ。
何時もの仕返しとばかりにね。
もうすぐ俺達も学校だ……。
期待に、胸を膨らませている。
サクヤも、学校に入る前から、読み書きの勉強をしている。ロコと一緒に……。
ロコは、サクヤと学校に行きたいと愚図っている……。
目まぐるしく変わる日常……。
明日は、どんなことが有るだろう?




