ものの善悪は……!
「はぁ……」
俺は、深く、ため息をつく……。
ルキウス達の顔を見回し、
「インスモーンは、勇者を……。エレズを旗印に、魔巣を、突いたのですね?そして、妖魔の氾濫。多くの、有能な士が、死んだのでしょう……。ただ、一度の敗戦で、エレズの奴に、その様な、二つ名が、付くとは思えません。その後も、妖魔を鎮める為、エレズは、多くの戦いに、駆り出された。奴の力じゃ、ゴブリンが、精一杯。また、多くの血が、流れたのでしょう……?」
ルキウス達は、目を細める。
ロースは、嘆息を漏らし、
「ふぅ……。これだけの情報で、今の状況を、理解したと言うのですか……。益々、ニッサ村に、帰すのが惜しい。ええ、全て、あなたが言い当てた通りです。エレズは、詐称罪と、間接的とは言え、多くの命を奪った事で、監獄に繋がれております。あちらの言い分としては、責任の一端は、我が国にもあると言いつつ。国王が申した通り、僅か八歳の王女、シャミラ様が、ルキウス国王陛下の前で膝をつき、助けを求めに、参りました……。ここで我らが、インスモーンを見限れば、多少なりとも、諸国に、悪印象を、抱かせる事と成りましょう」
「だが、しかし、ここで救えば、アルカディアにとって、有益が生まれる。アルカディアの、勇者と言うカードの価値が、大きく跳ね上がり。また、その価値の元が、アルカディアの、教育方法にあると、諸国に、理解させる事が出来ると。価値を上げながら、インスモーンの様に、アルカディアの勇者を、引き抜こうとする者を、牽制出来るか……」
「う、うむ。その通りだ……。それで……」
「証明しなくては、成らないと言うのでしょう?勇者達を、道具の様に使っていない。訓練が、正当なものであると。その為には、エレズと同期の、私達が、インスモーンの、救援に、向かわなくては成らない!」
「ふぅ……。頼めるか?ジャショウ……」
「ええ……。ソットやエミネ達も、成長しておりますが……。荷が重いでしょうね。それに、勇者で無い私が、勇者の訓練を受け、インスモーンを救う事が出来れば、その反響は、大きいでしょう。アルカディアは、真理に囚われず、よく、人を育てる国と、諸国は、思う筈です。ふむ……。この依頼、お受けいたしましょう」
「やはり、惜しいな……」
ロースが、真っ直ぐ、俺を見つめる。
ルキウスとソルトもまた、複雑な顔で、大きく頷く。
ルキウスは、真っ直ぐ、俺を見つめ、
「ジャショウよ。誠に、国に仕えるつもりは無いか?」
「はぁ……。何度聞かれても、答えは変わりません!私の力は、ニッサ村の為に使うと、我が魂に、誓いましたから……」
俺は、それだけ言うと、優雅に、頭を下げる……。
やはり、戦う必要があるか……。
この世界に来て一年……。
多くの人間が、死んでいる……。
皮肉なものだ……。
人々を苦しめる瘴気が、この世界に、秩序をもたらそうとしている。
やれやれ……。
物の善悪は、人の手には、余るモノだな……。




