アダマンタイト
宴は続く……。
ギルドの酒場。
「私は、ヨシュア。槍を使います!」
「私は、セン……。レイピアと魔法を……」
「私や、ロン。弓の使い手です!」
ベヘムに付き添っていた三人が、それぞれ挨拶をする。
俺は無邪気に笑い、握手を交わす。
「こうしていると、ジャショウ様も、年相応に見えますね……」
「ジャショウ様は、止めてくれよ……。四人は……。親戚のおじさん!とっびきり仲の良いの!だから、ジャショウと呼んでくれ!」
「ふふふ……。おじさんですか……。これは、随分元気な、甥っ子が出来ました」
「まったくです!」
「我々も、負けてはおりませんな!」
「「「わはははは……」」」
話が弾む……。
皆気さくで、良い人達だ!
その時、
「ジャショウ……。あの……」
恥じらう様に、俯きがちにラナが呼ぶ。
俺は不思議に思い、首を傾げる。
「あの……。私の所為で……」
声が震えている……。
俺は、
「何だよ?らしくないぞ……。もしかして、ビビってたのか?姉さん?」
悪戯っぽく笑ってやる。
「うっさい!馬鹿ジャショウ!」
最初は大きく、遠慮がちに……。
俺は、ため息をつく。
「ラナ姉は、俺達の姉ちゃんだ!ラナ姉が嫁ぐって言っても、あんな奴みたいなのに、姉ちゃんを渡したりなんかしない!俺達、家族だろ?」
ラナの、顔を覗き込む。
耳まで、真っ赤だ。
「うっさい……。馬鹿……。でも……」
ラナが、真っ直ぐとこっちを見る。
深呼吸。
「でも、ありがとう!」
ギルド中に響きわたる声。
何事かと、皆が目を見張る。
ラナは、肩で息をし、
「でも、あんな奴ら、私がとっちめてやれたんだから!」
何時ものラナだ。
俺は、二っと笑う。
それにつられて、ラナも……。
横で、ユウが、頭を下げている。
「すまなかったな……。元とは言え、家のギルドのしでかした事……」
「ふん!今の私達なら、片手で捻り潰せたわ!」
ベヘムが、目を丸くする。
「く、ははは……。何と剛毅な!儂らの姪っ子達は、何とたくましいか!?」
皆が、笑う。
ヨシュア、セン、ロンが、ラナとユウに、グラスを渡す。
「ここ、子羊の嘶き亭に、乾杯じゃ!」
ベヘムの音頭で、皆のグラスが揺れる。
大合唱!
「しかし、口惜しい!儂のアックスがあったなら……」
「我々もです……」
「ベヘムさん達は、武器無いの?」
「先の戦いでな……」
「だったら!」
俺は、師匠の方を見る。
「師匠!今日、俺達が持ってきた鉄鉱石!」
「むう……。あれか?」
「しまっておいてくれたんだろ?」
「あれのう……」
師匠は、難しい顔で、鉱石を取り上げる。
そして、巨人の大槌のおっさんに、投げ渡す。
「!?」
巨人の大槌のおっさんの顔色が変わる。
俺達が、何事かと、首を傾げていると、
「ど、何処で手に入れたんじゃ!!」
おっさんが、俺を激しく揺らす。
因みにこのおっさん、ドーラと言う。
俺は、揺られながら、
「キャ、キャロリアの森で……。他は秘密」
「確か、ジャショウ。途中居なくなりましたよね?」
「うん。その時取って来た」
ドーラのおっさんは、落ち着きを取り戻し、ジョッキを掴み、一気に飲み干した。
「これは、アダマンタイトじゃ!!」
「「「アダマンタイト~!」」」
一同が、立ち上がる。
しかし、
「何それ?」
俺が、知る訳が無い……。
首を傾げる俺に、ドーラは、熱弁を繰り広げる。
俺は、目を点にしながらも、
「すごい固い、石なのね?」
一同が、盛大に突っ伏す。
えっ!?
何?その反応……。
「お主……」
師匠のため息……。
何?すごく心外!
「この石が有れば、凄い武器が作れるんだろう?」
「うむ!」
ドーラの鼻息が荒い……。
「ドーラのおっちゃんは、この国一番の鍛冶師だろ?」
「少し言いすぎな様だが、自信はある!」
「だったらこれで、ベヘムとヨシュアと、センとロンと、それに、ラナとユウの武器を作ってくれ!」
「!?」
「残った鉱石と、後、いくら出せば良い?」
「お釣りがくるわ!」
「じゃあ、その分、最高の武器を作ってくれよ!」
「!?」
「ドーラのおっさんには出来ない?」
俺は、にやりと笑う。
ドーラのおっさんは、固まり……。
「エールをもう一杯!」
そして、
「ドワーフの英雄ベヘム……。そしてその仲間。さらには、未来の英雄のか?」
「そう!」
「ク、ハハハ……。この強欲勇者が!なんちゅう、依頼を出す!」
「だから、勇者じゃ無いって……」
「このドーラ!一世一代の大仕事、見事にこなして見せよう!!」
今日で、何度目だよ?乾杯……。
そんな中で、ベヘム達が固まっている。
「ジャ、ジャショウ殿、お主……」
「ジャショウ。僕たちの分まで……」
ベヘムとユウが、震えた声で、俺に近づく。
ラナですら、口をあんぐりと開けている。
「まあ、先輩冒険者に、華を持たせろよ?」
俺は、悪戯っぽく笑う。
「どうだ?うち等の英雄は!」
肉屋のおっさん……。
今更ながら、この人ガッツって言う……。
真っ赤な顔をして、俺の肩に手を回す。
「おっさん。酒臭い!」
「うっさい!うち等商店街に、無理難題を押し付けて!これじゃあ毎日、笑って過ごさなくちゃならねえじゃねえか!」
「当たり前だ!俺を誰だと思っているんだ?」
「だから、強欲勇者だろ?」
「だから、俺は……」
「ダハハハハ……。未来の英雄達に乾杯だ!」
聞いてねえし……。
俺は、ため息を漏らす……。
勇者じゃねえ!
俺は、冒険者だ!
不貞腐れる俺の首に、太い腕が巻かれる。
「ガハハハ……。儂らも、笑って暮らさなくちゃならないらしい!」
今度は、ベヘムか……。
弾かれた様に、他の面々が、顔を見合わせる。
「さあ、強欲勇者に乾杯じゃ!」
もう、どうでも良い……。
皆の笑顔が見れるのなら……。
勇者だって何だって、やってやるさ!




