奴と一緒じゃ……。
山登りが始まる……。
皆慎重に、辺りを警戒し。それでいて、一切の無駄を省き、迅速に、山を登り始めている。
エレズが、だらだら、王都まで歩いていた間に、随分と、鍛えてやったからなぁ。
ヤファやアデナも、三十Kの荷物を持っても、問題なく、歩いている。
それに、焦るは、エレズ。
他の仲間(仮)に、無理やり、自分の荷物を持たせて、走る様に、山を登っている。
エレズのお守りも、大変だなぁ……。
自分の部下を貸したソルトは、青筋を浮かべている。
ゴブリンとは言え、妖魔が居ると言うのに……。
鳥達が、一斉に羽ばたく。
俺達は、互いに目配せし、慎重に、歩き出す。
エレズの奴が、妖魔を、起こしてしまった様だ。
山の上から、エレズの喚き声が聞こえる。
俺は、同じスピードで進んでいた、ソットとエミネのパーティーに、目線を送る。
ソットとエミネは、小さく頷き、仲間達と共に、気配を殺す。
最小限の音で、素早く移動。
途中、エレズのパーティーが、ゴブリン達と、乱戦しているのを、横目で見ながら、山頂を目指す。
相変わらず、馬鹿だ……。
戦いの最中に、大声で喚くエレズに、妖魔達が、呼び寄せられていた。
結局、そのお陰で、俺達は、大した戦闘も行わず、あっさり山頂に着き。山頂で待っていた騎士から、サインを貰い、速やかに、下山する。
拍子抜けだが、決して、気を抜かない。
俺が、真剣な顔で、辺りの気配を、注意し続ける事で、他の者達もまた、気を引き締めたまま、任務を遂行する。
それで良い。
どんな事でも、真剣に取り組む事で、大きな成果が得られるのだ。
エレズのパーティーを除いて、全ての者が、下山を終えた。
再び、ソルトの前に整列し、報告を済ます。
満足げに頷くソルト……。
山の中腹を見て、ため息をつく。
「奴と一緒じゃ、訓練に成らぬか……」
ここまで聞こえる、エレズの叫び声。
エレズに群がる、妖魔達を討伐する為、騎士達が、山へと向かった……。




