一人ぼっちのエレズ君
色んな意味で、エレズは、ぶっ壊れている。
俺達に、ちょっかい出すばかりで、仲間なんて、一人も、集めていなかった。
一人ボッチのエレズ君……。
取り敢えずと言う事で、大人達が三人、仲間と言う形の、見張りに付いた。
奴の暴走は、誰にも止められない。
訓練場に、集合すれば、
「やあやあ!勿体無いなぁ。僕の言う事を聞けば、最高の栄誉を、得られると言うのに!」
早速、煽りが始まった。
少し前の、エミネだったら、キレていただろう。
しかし最近は、随分と、成長した。
落ち着いた表情で、相手にもしない。
オドオドとしていたソットも、余裕の構えだ。
誰も反応しない事に、エレズは、苛立ち、憎々しげな顔で、舌打ちしながら、元の場所へと戻って行った。
余りの醜態に、同郷の、ベルトラム達は、真っ赤な顔で、俯いている。
俺は、優しく、三人の肩を叩き、
「俺達は俺達!奴は奴!皆、分っているよ。訓練を、精一杯、頑張ろう!」
三人は、顔を上げ、力強く頷く。
教官として、ソルトが現れる。
俺達は、一糸乱れぬ動きで、姿勢を正し、
「「「よろしくお願いします!!」」」
ソルトは、満足げに頷く。
そして、訓練場から見える、山を指さし、
「君達の、基礎能力を測りたい!今日は、登山をしてもらう!あの山は、ゴブリンではあるが、妖魔も出る。心して、臨む様に!!」
「「「はっ!!」」」
俺達、ニッサ村のパーティーは、速やかに、三十Kの装備を背負い、トライアングルの、陣形を作る。
ソットとエミネも、それに倣い、
「皆!索敵を、忘れるんじゃ無いわよ!」
「僕達も、ジャショウさんに教わった様に、周りに注意を払い、確実に、頂上を目指そう!」
良いかな、良いかな……。
しっかり、教えを、実践で、活かせているな。
全員、支度が整い、俺の方を見て、力強く頷く。
そんな横で、
「何!?勇者である僕に、荷物を持たせると言うのか!!君達の誰かが、僕の荷物も、持てばいいだろう?」
エレズ……。
仮パーティーの人達が、青筋を浮かべているよ。
はぁ……。
その内、事故死に見せかけ、エレズの奴、殺されちまうんじゃ無いだろうなぁ……?




