狂った勇者
念の為に、俺達とエレズの宿泊場所は、別棟と成った。
それだけの、処置をしたと言うのに……。
「おい!ここを通せ!僕は、勇者なんだぞ!」
エレズは、俺達の宿泊室まで、押しかけて来た。
奴の暴走が、どんどん、酷くなってゆく。
騎士達に、取り押さえられながらも、俺達に気づき、
「おい!お前達!今なら、許してやる!僕と一緒に、勇者パーティーを、再興しよう!」
ベルトラム達の、嫌そうな顔。
エレズを一瞥し、俺の部屋へと、入ってゆく。
激昂するエレズ。
王命を無視し、何をやっているんだ?あいつは……。
全員が、俺の部屋へと入り、盛大なため息をつく。
「あいつ、頭、おかしいんじゃねえか?」
「まさか、王命すらも、理解出来ないとは」
「ヤファ……。エレズ嫌い……」
俺は、苦笑し、三人の為に、ココアを淹れてやる。
そして、諭す様に、
「なるべく、関わらない様にしよう。相手にしてしまえば、逆に、あいつを、つけあがらせる事に成る。関わらないのが一番だ。それと、俺達四人は、なるべく、別行動はしないよう、気を付けよう。もう、あいつが、何をしてくるか分からん」
ベルトラム達は、ため息をつきながら、静かに頷く。
他の勇者パーティーにも、この事は、話してある。
皆、呆れていたよ……。
と言うより、俺の事を、本当は、勇者なのではと、思っていた様だ。
あんな狂った勇者が、本当に居るなんて、半信半疑だったらしい。
現に、ソットのパーティーに、ちょっかい出している所を目撃し、俺が、追い払ったのだから。
感謝と同時に、愚痴まで言われてしまった。
「ジャショウさんが、勇者に成れば、丸く収まるのに!」
と……。
あいつの奇行が、目立つにつれて、俺の株が、無駄に上がってゆく。
勘弁してくれぇ……。
国王陛下も、お手上げ状態だ。
大人が、頼りに成らない状況。必然的に、エレズを追い払う俺の側に、皆、集まって来る。
変な形で、結束してゆく。
やれやれ……。
明日から、訓練が始まる……。
エレズの事も含み、どうなる事やら……。




