師の気持ち
パチパチパチ……。
俺達の訓練を、ソルトは、見ていた様だ。
にっこり笑い、手を叩く。
「今年の勇者達は、有能な様だな!どれ、ジャショウ君、私にも、一手、ご教示願えないだろうか?」
「ソルト様にですか?若輩者を、からかわないで下さい。私はただの、荷物持ちですよ?」
「残念だけど、何時までも、力を、隠しておく事は、許されないよ。私と、真剣に、戦いなさい!」
「はあ……」
俺とソルトの、気焔と気焔がぶつかる!
しかし、俺は、ふっと笑い……!
「なっ!?ジャショウ君が消えた!?」
ソルトの動揺に、ソット達が、首を傾げる。
俺は、カラカラと笑い、
「ソットとエミネも、私に、殺気を向けてごらんなさい」
二人は、首を傾げたまま、言われた通り、剣を取り、俺に向ける。
目を見開く二人!
震える声で、
「ジャショウさんが、消える!?」
「どう言う事よ!あんた、どう言った魔法を、使っているのよ!?」
「魔法など、使ってはおらん!これも一つの武術だ!君達は、空気が見えるか?」
「そ、そんなもの、見える訳が無いじゃ無いのよ!」
「そう言う事だ。俺は今、大気と一体化し、一つと成った……!我を捉え様とすると、大気に溶け込み、捉える事が、出来なくなると言う事だ」
俺は、ふっと、現世に戻り、
「まだ、戦いますか?ソルト様」
「ふ、ふはははは!こんな技を見せられ、戦う気力も、失せてしまったわ!!君が本当は勇者で、あのエレズと言う少年が、荷物持ちだったんじゃ、無いのかね?いや!そうであって欲しい!!ジャショウ君の、力の底が見えぬ!そもそも、人間如きが、覗き込もうとする事自体が、愚かな行為の様に思える!」
「そう、大袈裟に、捉えないで下さい。武の道を歩めば、辿り着く、一つの境地です。まだまだ、武の道は、遥か遠くに、続いていますよ」
俺は、それだけ言うと、剣を収め、訓練場を、後にする。
目立ちたく無いのだがなぁ……。
ついつい、素質のある子を見ると、鍛えてやりたくなるものだ。
ギルム師匠達の気持ちが、最近、なんとなく、分かってきてしまったな……。




