本当の勇者
訓練場が、騒がしい……。
また、何かあったのか……?
関わりたくないが、好奇心に負けて、観戦する、兵士達をかき分け、覗き込む。
一人の少年が、気の強そうな少女に、打ち負かされている。
これは、何の、催しだ?
憤怒の顔の少女。
吐き捨てる様に、
「お前みたいなのが、同じ勇者など、私は認めない!!」
ふむ……。
勇者同士の、喧嘩か?
少年に、数名の少女達が、駆け寄って行く。
少女を睨み、
「ソットは、戦う事が、嫌いなのよ!!」
「あなたみたいに、好戦的な人と、一緒にしないで!」
やはり、分かっていたが、今の勇者達は、皆子供か……。
力を誇示する少女に。戦いにおびえる少年。
本当に、この国大丈夫か?
気の強そうな少女の目線が、俺の方へと移る。
見下すように、
「今度は、勇者擬きか!本当の、勇者の力を教えてあげるわ!勝負しなさい!!」
面倒臭い。
俺は、肩をすくめる。
木剣を投げ渡され、
「臆したの?早く、前に出なさい!」
一同が、俺に、注目する。
俺は、ため息をつき、気だるげに、少女の前に立つ。
「俺は、ただの、荷物持ちなんだが?」
「うるさい!早く、かかって来なさい!」
「はぁ……。面倒臭い。好きに、打ち込んで来れば良いだろう?」
少女の顔が、青ざめてゆく。
俺の、力量を、測ろうと言うのか?
俺の力に、吞まれてしまうぞ?
しかし、少女は、声を上げ、
「はああっ!!」
俺に、斬りかかって来る!
ほう……。
この歳で、これだけの剣舞を、披露するか!
しかし、俺は、涼しい顔で、全てを避ける。
肩に、剣を乗せたまま、
「弱者を負かすが、勇者の務めでは無いぞ?」
「うるさい!本気で戦え!!」
「ふん……。話に成らないな……!」
我が剣が、神速の速さで、少女の剣を、打ち払う!
呆然とする少女。
俺は、興味を失い、今度は、少年勇者の方を向く。
「何時まで、女の陰に、隠れているのだ?君も、俺と戦え!」
「だから、言っているでしょう!ソットは、戦う事が、好きじゃ無いのよ!」
「不完全燃焼だ……!ならば、代わりに、君達が戦うか?」
ソットと言う勇者を庇う少女達が、震えながらも、俺に、立ち向かおうとする。
しかし、
「ま、待って!僕が戦う!僕が戦うから!この子達を、虐めないでくれ!!」
ふむ……。
見どころのある少年だ。
ソットと言う少年は、震えながらも、剣を持ち、果敢に、俺に立ち向かう!
俺は、涼しい顔で、その剣を躱し、易々と打ち払う。
それでも、少女達を守るため、ソットは、何度も、挑んでくる。
俺は、目を細め、優しく笑い、
「そっちのお嬢ちゃんよう……。お前は、たった一度の敗北で、諦めてしまったが。ソットは、仲間を守る為に、恐怖を乗り越え、何度も挑んでくるぞ?本当の勇者は、どちらの方かな?」
俺は、それだけ言うと、剣を収め、二人に背を向ける。
「精進しるよ?」
やれやれ……。
世話がやける。
後ろからは、
「あの!ありがとうございました!!」
ちゃんと、礼も言えるか。
よいかな、よいかな。
国王の言う通り、今年は、豊作だな……。




