謁見
王都、アルゴスへと、到着した……。
中々、デカい、城塞都市だ。
馬車は、真っ直ぐと、王城へと向かう。
ベルトラム達は、目を輝かせ、
「すげえ!見た事の無い物が一杯だ!」
「本当ですね……。人が沢山いる」
「ジャショウ、後で、ヤファ達と一緒に、探検しよう……!」
はしゃぐ三人を見ながら、俺は、優しく笑う。
さて、国王との謁見か……。
俺の中の国王と、どれ位、違う人物なんだろうなぁ……?
王城へと入り、速やかに、謁見の場が、設けられる。
村とは違う世界……。
しかも、王の城だ。
ベルトラム達は、ガチガチに固まる。
俺は、そんな三人の背中を叩き、
「緊張するなとは、難しい話だが。余り、緊張しすぎると、王様の前で、失敗してしまうぞ?大丈夫だ。堂々としていれば良い」
ぎこちないが、三人が、漸く、笑顔を見せる。
本来であれば、エレズが、先頭に立たなくてはならないが……。
奴は、いないからなぁ……。
ソルトの話では、俺に、代理を務めよとの事だ。
俺は、三人を勇気づけ、悠然と、前を歩く。
謁見の間に入り、片膝をつき、首を垂れる。
三人も、それに倣う。
問題ないな。
俺にとっては、もう、何度もやったシチュエーションだ。
慣れ過ぎて、眠気を覚える。
「アルカディア国、第十三代、国王陛下、ルキウス様の、御成り!」
透き通った声が、謁見の間に響く。
心地よい、重圧感。
謁見の間の玉座に、男が座る。
「面を上げよ」
俺達は、その言葉に従い、顔を上げる。
歳は、四十と言った所か……?
厳格でいて、包容力のあるご尊顔。
ルキウスは、俺達の顔を、一人一人見て、満足げに頷く。
「良くぞ参られた。勇者一行よ。いや、勇者は、まだであったな。話は、聞いておる。今は、その黒髪の少年が、代理を務めているのであったな?」
俺に問いかける。
俺は、今一度、頭を下げ、
「発言させて頂きます!私は、あくまで、剣聖様達の、荷物持ちとして、ご同行させて頂いただけの者です。騙すつもりは、ありませんでしたが……。紛らわしいので、一歩下がり、控えさせて頂きたいと思います」
「良い!そう、自分を、卑下するな!君の活躍は、ソルトから、全て聞かされている!暴走する勇者を抑え、剣聖達を、我等に変わり、鍛えてくれたと言うでは無いか!その上、影の存在にも気づき、ロゴーの村では、一瞬で、オーガ二体を、倒したと言う。その武勇、称賛に値する!」
「勿体無きお言葉……。されど、この者達の成長は、この者達の努力があっての事です。私はただ、後ろを歩いたにすぎません。ロゴーでも、この三人が、私の背中を、守ってくれたからこそ、オーガを倒す事が出来ました。どうか、ご理解頂けるよう、申し上げます」
「ふふふ……。物怖じせず、ハッキリ、物を言う少年だ。その言葉の中には、仲間への信頼がある!許されよ。他の三人を、蔑ろにした訳では無い。君達四人は、助け合い、ここまで、来てくれたのだな。称賛に値する!」
「はっ!勿体無きお言葉!」
そこで俺は、大きく息を吐く……!
真っ直ぐ、ルキウスを見つめ、
「失礼いたします。国王陛下……。質問したい事があるのですが、よろしいでしょうか?」
「ふむ、何かな?」
「私の右後ろの騎士は、何かの戯れでしょうか?」
「戯れ……?何か、変わった事があるかな?」
「国王陛下も、お気づきでしょう?と、言うより、先ほど、目配せをしました。剣を抜けば、いくら、国王陛下の御前だとは言え、私も、拳を握りますよ……?」
「ほう……。やはり、これにも、気付くのか!もう良い!構えを解け!」
後ろの騎士から、殺気が消える。
俺は、にっこり笑い、
「国王陛下への非礼、心より、お詫び申し上げます」
「ははは!ハラ婆さんが、直ぐに返せと言う訳だ!本当は、君が、勇者なのでは無いのかい?」
「私は、そんな、大それた者ではありません」
ルキウスは、笑っていた。
心の底から、嬉しそうに、笑っていたのだ。
目を細め、
「今年は、豊作だな……」
ルキウスの、その言葉を最後に、謁見は、終了した……。
はてさて……。
しばらく俺も、城に、滞在しなくては、成らない様だな……。




